Time you opened:
野山を歩いていると倒木や木の切り株などにキノコではなくカビでもなく小さな不思議な生き物を目にすることがあります。粘菌(変形菌)と呼ばれる生物です。本には・・
「動物と植物の中間的な生物。動物のように体を変形させて移動したり大きくなったりするが、キノコのように胞子を飛ばして増える。落ち葉や枯れ枝に住み、それらを腐らせる微生物を食料とする。山だけではなく公園や庭などにもいる! 単細胞ながら迷路も通り抜けてしまう知的な行動をする。自然界の生態系を司る需要な役割をしていることがわかってきた」・・・と書かれています。
里山で出会ったホコリさんたちです。科、属と分類して載せてありますが、図鑑を参考にしたもので学術的なものではありません。写真が増え収拾がつかなくなってしまい、分類をしてみたという程度のものです。
今シーズン初めてお目にかかりました。夏の暑さのためか分かりませんが、今シーズン裏山一体ではほとんど見かけません。貴重なハチノスケさんです。
ハチノスケホコリは 比較的標高の高い山に出現すると図鑑には書かれていました。暑さには弱いのかもしれません。ハチノスケに限らず昨年と比べてホコリさんの出現が少ないと思います。粘菌は分解生物(バクテリア、キノコ、カビなど)を食べる生物。その生物が少なくなるとどうなるか、分解生物が増えてしまい森の生態系が崩れるのでは、それともキノコなど分解生物が少ないので発生しにくいのか・・・なんていろいろ考えてしまいます。
子実体の姿はヌカホコリに似ていますが、何個かくっつき合っています。
未熟子実体から黒くなり、金色になり、胞子を飛ばすまで1ヶ月半以上はかかるようです。ホコリさんたちの変形していき最後に胞子を飛ばすまでの時間はホコリさんによってかなり違うようです。
一年中見られるようですが、寒くなってくると活発になるマメホコリ。胞子を飛ばすまでに色々な姿を見せてくれます。
寒くなってくると輝き出すヌカホコリ。木陰(朽ちた木)に潜んでました。時間をかけてここまで熟成してきたのでしょう。間もなく子嚢が裂けて胞子を飛ばします。今まで近くまで行っていたのに気が付きませんでした。
小さいので光を当ててよく見ないと分かりません.周囲の白い部分はカビ.カビとの食うか食われるかの戦い.濃い茶色になってきたところがあります.まるでソースをかけたよう? ドイツで食べた小さなウィンナー、ニュルンベルクソーセージを思い出しました.焦げたいい匂いがしてきそう! 呑気なことは言っていられません.ホコリさんたちはこれからが勝負.ちゃんと胞子を飛ばして次世代へと繋がなくてはいけません.
このホコリさん乾燥状態が長く続き勢いがなかったように思われます。
オレンジ色の未熟子実体から黒色に変化するのはあっという間だったのですがその後の変化に時間がかかりはっきりしません。上から4点の写真。
地附山はこの頃雨がほとんど降りません。森の落ち葉は乾燥し、風が吹けば舞ってしまいます。乾燥のためか、うまく子実体を作れずカビにやられてしまうホコリさんが多いような気がします。(科学的な根拠に基づいたものではありません)
塊の周囲の白色、紫色のものは変形体かな。子実体を作る完成間近の状態でしょうか。上の写真は塊に既に割れ目が出来ているので、ジュラドロホコリ(割れやすいドロホコリの仲間)かもしれません。調べてもこのような状態はどこにも書いてありません。ドロホコリにも色々種類があって「アメリカマンジュウドロホコリ」とか「ムラサキドロホコリ」というものがあるということは書いてありましたが・・・
▽ 初めてではありませんが、変化の様子で変わって見えます。
粘菌は3つの分類群、変形菌、原生粘菌、細胞性粘菌の総称で、こうして観察しているものは正確には変形菌とういうことです。菌とついているが菌類とは全く違い、アメーバの仲間だそうです。変形菌は世界に1000種類以上、日本には600種類以上いるということ。一部の限られたもの(ホコリさん)にしかお目にかかっていないことがわかります。
3日前(10.10)はこちら ▶️
多くのホコリさんは夕方から翌朝までに子実体を形成するという。
仲間の他の蟻がやってきて、同じようにホコリの未熟子実体を採って運んでいこうとしますが・・・
諦めた蟻。ホコリ強し!柄はしっかりと朽木に張り付いているのがわかりました。しかし採られなかったけど、中身を吸われたのかもしれません。蟻がホコリを食べるとは思いませんでした。蟻以外で他の虫がホコリにいる場面をツノホコリやウツボホコリで見たことがあります。
他の渋めのホコリさんもいました。
他のホコリも時間をかけて探したのですが、オレンジ色の未熟子実体ぐらいで他は残念ながら見つけられませんでした。登山道脇が広く伐採され、歩きやすくなったのですが・・・
▼ オレンジ色の未熟子実体が沢山! 地附山、枡形城跡で 2023.10.13
一昨日発見したブドウフウセンホコリの未熟子実体かと思われたホコリは、時間をかけて探したのですが、残念ながら見つけられませんでした。
白(未熟)から茶・黄と子実体は変化するようです。
子実体についている黄色、茶色の粒状のものは胞子でしょうか。
変形菌というのは粘菌類の中の一つのグループ(肉眼でも比較的見やすく変化がわかりやすい仲間)。正確には粘菌は変形菌(真性粘菌)・原生粘菌・細胞性粘菌という3つの分野群の総称をいう。(高野 丈「世にも美しい変形菌」)
▼ 裏山・地附山 雨の日、傘を刺しながらの撮影になりました。 2023.9.28
▼ ホコリを食べるキノコムシ・地附山 2023.8.25
▼ 変形菌の移動中 2023.7.16 茶臼山
▼ 変形体が子実体を作り始めたのか・地附山 2023.6.16→21
びっくり、どっきり。小さくても美しい? そんなものを撮影しています。カビやコケの類や有機物が発酵したものや、キノコ、虫の卵など粘菌ではないものもあるかもしれません。場数を踏んでいくことで「これ・粘菌?」写真の精度が高まっていくと思います。
粘菌アメーバはバクテリア、カビ、酵母、キノコなどを食べる。菌と名がついているが、菌類ではない。食糧としているそれらは「分解者」と呼ばれ植物や動物の死骸を土に還す役割をしている生物。粘菌は間接的に分解を抑制する働きをしていることになります。
地中の生き物たちの活動はバランスを保って行われていましたが、樹木のナラ枯れやマツ枯れの原因はそのバランスが崩れてしまったためと考えられています。キノコの菌糸が木の根本で重要な働きをしているらしいのです。
人間が普段見られない地中では、分解・再生、食べたり・食べられたり、助けたり・助けられたり、微生物などによる生き物たちの壮大なドラマが行われているようです。その活動は地球規模で考えると相当なエネルギーになるそうです。目にするキノコや変形菌の子実体(子嚢・柄)は地中活動の一端でほんの一部。「これ・粘菌?」はそれらを垣間見ることかもしれません。
📖参考書❢ 変形菌ずかん・川上新一 著(平凡社) ❢ 変形菌・川上新一 著(山と渓谷社) ❢ きのこ大図鑑・小宮山勝司 著(永岡書店) ❢ キノコの教え・小川 眞 著(岩波新書) ❢ 世にも美しい変形菌・高野 丈 著(文一総合出版)