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野山を歩いていると倒木や木の切り株などにキノコではなくカビでもなく小さな不思議な生き物を目にすることがあります。粘菌(変形菌)と呼ばれる生物です。
本には・・「動物と植物の中間的な生物。動物のように体を変形させて移動したり大きくなったりするが、キノコのように胞子を飛ばして増える。落ち葉や枯れ枝に住み、それらを腐らせる微生物を食料とする。山だけではなく公園や庭などにもいる! 単細胞ながら迷路も通り抜けてしまう知的な行動をする。自然界の生態系を司る需要な役割をしていることがわかってきた」・・・と書かれています。
里山で出会ったホコリさんたちです。科、属と分類して載せてありますが、図鑑を参考にしたもので学術的なものではありません。写真が増え収拾がつかなくなってしまい、分類をしてみたという程度のものです。
桃色の美しいウツボホコリがいました。白いシロウツボホコリも、湿って暖かな裏山はホコリさんたちの活動が活発です。始めてお目にかかるホコリさんも発見!
いろいろ調べましたがわかりません。モジホコリの仲間かもしれません。アシグロモジホコリかな?
クモノスホコリが密生して発生していました。密生していて黒く見える木肌がストロボを当てることで、輝いて写ります。
久しぶりにシロススホコリを見ることができました。キフシススホコリも鮮やかな黄色に輝いていました。雨が沢山降り、地附山は珍しく湿っていました。雨の後はツノホコリの仲間が多く発生するようです。
子実体になったばかりでしょうか、まだ表面は割れずに輝いていました。
クモノスホコリが大量発生していました。そして胞子を飛ばしてしまった後のものもいました。
マメホコリに似ているのですが、色が白く表面がなめらか、チチマメホコリかもしれません。
確定できない変形体がいっぱい。今裏山は変形体月間です。
新しい子実体もいました。アオモジホコリです。
キカミモジホコリが一面に。
こんな世界を見てしまうとネンキン生活はやめられない!
▼ モジホコリの移動・地附山 2024.7.17
モジホコリ科の仲間の変形体はよく動くそうです。切り株を移動しているモジホコリ科のホコリの変形体を発見しました。名前は分かりませんが、チョウチンホコリかもしれません。切り株にはえたキノコを食べている様です。餌を探して扇状に広がるところ、これが迷路も抜けてしまうという変形菌の移動です。
▼ ツノホコリの誕生・地附山 2024.7.15
雨がふんだんに降った後の朽木にはツノホコリが多く発生します。溶けてしまいそうな透明な変形体から担子体になっていく様子が、多くのツノホコリの発生によって見ることができます。ツノホコリは粘菌類(変形菌類・原生粘菌類・細胞性粘菌類)の中の原生粘菌類に分けられています。変形菌類は子実体の中に胞子を作るのに対して、ツノホコリは担子体の外側に胞子を作ります。
▼ キカミモジホコリ・地附山 2024.7.13
黄色に輝く「キカミモジホコリ」を初めて見ることができました。地附山はホコリさんが沢山いましたが、胞子を飛ばしてしまったものが多く、子実体がはっきりしているものは少なかったです。
柄が黄色い髪の毛のように見えるのでこの名がついたようです。これは黄色というよりは橙色です。高さは1mmほどと小さく、写してみるまでは何だか分かりませんでした。
今の季節、森の朽木の中で比較的多く見られます。中のルビーのような色の塊は何でしょう。子嚢がいくつか包まれています。一つだけではありませんでした。
枝分かれをするカンボクツノホコリというツノホコリかもしれません。枝分かれをしながら成長していく途中でしょうか。水々しい造形で、涼をよびます。
コムラサキホコリを撮影したところ、沢山の虫が写っていました。ホコリを食糧とする虫でしょう。子実体になってしまったホコリさんは逃げていくことはできないんだ!
飯縄山登山道の脇にムラサキホコリが発生していました。
子嚢の上部がもぎ取られたように欠けている。しかし黒い軸柱はしっかり残っている。一般的にムラサキホコリの黒い軸柱は胞子を飛ばした後も長い期間そこにしっかり残っています。
昨日見た「ドロホコリになるのかも」を追跡調査に行ったのですが、全く跡形もなくなっていました。探し方がまずかったのかもしれませんが、代わりにはじめて「フサホコリ」を見ることができました。
全体を見ると確かにブドウの房のように並んでいます。一つ一つはブルーベリーのよう。大きさは径0.5mmぐらい。初めは朽木の汚れにしか見えませんでした。子嚢のてっぺんに丸い端盤があります。
黒く光る虫がいます。変形菌を食べて一生を朽木で過ごす虫がいるそうです。地附山は朽木の宝庫ですから、たくさんいるに違いありません。
ここにも虫がいました。こちらはキノコムシのなかまかもしれません。忙しく動いていました。綺麗にそろった子嚢の頭を食べているのでしょう。マルヒメキノコムシという虫はアゴに胞子を取り込む専用の溝があるそうで、胞子を遠くへ運ぶという役目を担っているそうです。ホコリさんは胞子を飛ばすために子嚢を作るわけですから、食べられて形が崩れようと見かけは関係ないんですね。
▼ トビゲウツボホコリの中を虫がわずかに動きます。大小2種類の虫がいます。固定でホコリさんを撮ったら虫も写っていたのでスライドショーにしてみました。
直径3cmぐらいで少しピンクっぽい白色の未熟子実体。周囲に変形膜らしいものを作り始めているので、ドロホコリかもしれません。
餅米で作る和菓子を連想させる形です。マンジュウドロホコリかもしれません。
梅雨に入ったのでホコリさんたちも色々出てくるかなと思って巡っているのですが、なかなかお目にかかれません。そんな中、ムラサキホコリを見つけました。
19日に変形途中のキフシススホコリを見ましたが、3日後ご覧のように変化しました。隙間から胞子の塊が見えます。
今シーズンはなかなか見つけられない粘菌。やっと見つけた変形、移動するキフシススホコリ。粘菌生活は楽じゃない?
いよいよムラサキさんが登場しました。まずは黒蜜をかけた様な色のホコリさんです。
塊の幅は1cmぐらい。一つ一つの形状は一般的なムラサキホコリの仲間の形です。その未熟子実体かとも考えましたが、本を見るとその色は黒色ではなく白色、黄色となっている・・・過去にもこの様なムラサキホコリを見たことがあります。近くには他の色のムラサキホコリの仲間もいました。
▼ ウツボホコリの仲間、トビゲウツボホコリ。本には細毛体が杯状体からはがれやすいと書かれていました。風が強い日で上の細毛体部分がたくさん飛ばされ、器だけが残っています。
雨も降り気温も上ってきたためか、ホコリさんたちの活動も増え少し見つけやすくなりました。
画面の幅は1.5cmぐらい。大きさを考えなければ、イクラ! どんなふうに変化していくかを見たいんだけれど、ここまで登ってくる体力と時間が・・・
乾燥した気候が続いていましたが、月末にたっぷりと雨が降りました。いよいよホコリさんたちが活動し始めたようです。雨の後たくさん出てくる白くて透き通ったツノホコリさんたちは見当たりませんでした。最低気温が12℃とまだ低いからでしょうか。長野は朝まだ寒い!
マンジュウドロホコリとドロホコリの違いですが、マンジュウドロコリは新鮮なうちは白色らしいのですが、時間経過により褐色になっていくようです。ドロホコリは始めから茶色。そして白い変形膜を周りに付けるようですが、これはそれが全く無い、ということでこれはマンジュウドロコリではないかと思います。2つ綺麗に並んで朽木についていました。
大きさは直径3㎝ぐらい。表面にはツヤがあり、中にはアンコではなく胞子がたっぷりと入っているそうです。
変形菌と言われるのがよくわかります。このホコリさんは変化のスピードが速く、1〜2日の間で、白☞オレンジ☞チョコレート色☞焦茶☞黒☞灰色☞褐色 と変化するようです。変化中のホコリさんがたくさんいたので変化の様子がわかりました。以前髻山で何日か通って見たヤリカミノケホコリですが、今日は撮影を始めたら雨が降ってきてしまい、満足な写真が撮れませんでした。現場までは1時間半ほど山登りが必要なので毎日は通えません。このチョコレート色の子実体の状態はみずみずしく魅力的ですが、すぐ変化してしまうようです。
ほとんど残骸ですが鮮やかな色と整った形は粘菌(変形菌)の特徴ですね。朽木に発生するので、木を腐らせているのではと思ってしまいますが、腐らせている生物を食料としているのが粘菌なんですね。この2つの粘菌は胞子を飛ばす他に細毛体を伸ばし繁殖していくのが特徴らしいのですが、雪の中でも活動をしているようです!
倒木の周りは10mほどの積雪ですが、溶けてしまったのか積もらなかったのかここだけ雪はありませんでした。
マメホコリの胞子は球形で網目型。直径は6~7.5㎛ということです。白く見えますが、これがやがてアメーバとなって動き回るのだそうです。粘菌アメーバと呼ばれます。キノコのホコリタケに似ていますが、全く違うものなんですね。
▼ 昨日撮影したホコリさんを三脚を使って撮影してみました。
先月18日からの変化。胞子を飛ばし始めた子実体が少し多くなったような気がしますが、思ったより進んでいません。
変化がほとんどなかったように見えた広くひろがっていたヌカホコリですが、ようやく子嚢が破れて胞子を飛ばし始めたものがあります。
今まで柄がオレンジ色のものは何度かおめにかかっているのですが、カビにやられていたりしていて、よくわかりませんでした。しっかり子嚢があるものを発見しました。図鑑で調べるとバイアカタホコリといって、カタホコリの仲間らしい。子嚢の底が深くへこんでいるのが特徴。主に夏に発生すると書いてあるんですが・・・。横たわった朽木の地面側にいました。写真は180度回転してあります。
真ん中に穴の空いたマメホコリが並んでいました。胞子を飛ばすのかな?
今シーズン初めてお目にかかりました。夏の暑さのためか分かりませんが、今シーズン裏山一体ではほとんど見かけません。貴重なハチノスケさんです。
ハチノスケホコリは 比較的標高の高い山に出現すると図鑑には書かれていました。暑さには弱いのかもしれません。ハチノスケに限らず昨年と比べてホコリさんの出現が少ないと思います。粘菌は分解生物(バクテリア、キノコ、カビなど)を食べる生物。その生物が少なくなるとどうなるか、分解生物が増えてしまい森の生態系が崩れるのでは、それともキノコなど分解生物が少ないので発生しにくいのか・・・なんていろいろ考えてしまいます。
子実体の姿はヌカホコリに似ていますが、何個かくっつき合っています。
未熟子実体から黒くなり、金色になり、胞子を飛ばすまで1ヶ月半以上はかかるようです。ホコリさんたちの変形していき最後に胞子を飛ばすまでの時間はホコリさんによってかなり違うようです。
一年中見られるようですが、寒くなってくると活発になるマメホコリ。胞子を飛ばすまでに色々な姿を見せてくれます。
寒くなってくると輝き出すヌカホコリ。木陰(朽ちた木)に潜んでました。時間をかけてここまで熟成してきたのでしょう。間もなく子嚢が裂けて胞子を飛ばします。今まで近くまで行っていたのに気が付きませんでした。
小さいので光を当ててよく見ないと分かりません.周囲の白い部分はカビ.カビとの食うか食われるかの戦い.濃い茶色になってきたところがあります.まるでソースをかけたよう? ドイツで食べた小さなウィンナー、ニュルンベルクソーセージを思い出しました.焦げたいい匂いがしてきそう! 呑気なことは言っていられません.ホコリさんたちはこれからが勝負.ちゃんと胞子を飛ばして次世代へと繋がなくてはいけません.
このホコリさん乾燥状態が長く続き勢いがなかったように思われます。
オレンジ色の未熟子実体から黒色に変化するのはあっという間だったのですがその後の変化に時間がかかりはっきりしません。上から4点の写真。
地附山はこの頃雨がほとんど降りません。森の落ち葉は乾燥し、風が吹けば舞ってしまいます。乾燥のためか、うまく子実体を作れずカビにやられてしまうホコリさんが多いような気がします。(科学的な根拠に基づいたものではありません)
塊の周囲の白色、紫色のものは変形体かな。子実体を作る完成間近の状態でしょうか。上の写真は塊に既に割れ目が出来ているので、ジュラドロホコリ(割れやすいドロホコリの仲間)かもしれません。調べてもこのような状態はどこにも書いてありません。ドロホコリにも色々種類があって「アメリカマンジュウドロホコリ」とか「ムラサキドロホコリ」というものがあるということは書いてありましたが・・・
▽ 初めてではありませんが、変化の様子で変わって見えます。
粘菌は3つの分類群、変形菌、原生粘菌、細胞性粘菌の総称で、こうして観察しているものは正確には変形菌とういうことです。菌とついているが菌類とは全く違い、アメーバの仲間だそうです。変形菌は世界に1000種類以上、日本には600種類以上いるということ。一部の限られたもの(ホコリさん)にしかお目にかかっていないことがわかります。
多くのホコリさんは夕方から翌朝までに子実体を形成するという。
他の渋めのホコリさんもいました。
他のホコリも時間をかけて探したのですが、オレンジ色の未熟子実体ぐらいで他は残念ながら見つけられませんでした。登山道脇が広く伐採され、歩きやすくなったのですが・・・
2日後、ブドウフウセンホコリの未熟子実体かと思われたホコリは、時間をかけて探したのですが、残念ながら見つけられませんでした。
変形菌というのは粘菌類の中の一つのグループ(肉眼でも比較的見やすく変化がわかりやすい仲間)。正確には粘菌は変形菌(真性粘菌)・原生粘菌・細胞性粘菌という3つの分野群の総称をいう。(高野 丈「世にも美しい変形菌」)
▼ 裏山・地附山 雨の日、傘を刺しながらの撮影。 2023.9.28
▼キノコ、サガリハリタケが黄色に変化し溶け始めている。変形菌によるものと考えられます。 2023.8.25
▼ ホコリを食べるキノコムシ・地附山 2023.8.25
▼ 変形菌の移動中 2023.7.16 茶臼山 ▼ 変形菌の未熟子実体とキノコ 2023.7.13 地附山
▼ 変形体が子実体を作り始めたのか・地附山 2023.6.16→21
びっくり、どっきり。小さくても美しい?粘菌。 そんなものを撮影しています。カビやコケの類や有機物が発酵したものや、キノコ、虫の卵など粘菌ではないものもあるかもしれません。場数を踏んでいくことで「これ・粘菌?」写真の精度が高まっていくと思います。
粘菌アメーバはバクテリア、カビ、酵母、キノコなどを食べる。菌と名がついているが、菌類ではない。食糧としているそれらは「分解者」と呼ばれ植物や動物の死骸を土に還す役割をしている生物です。その「分解者」を食べてしまうので粘菌は間接的に分解を抑制する働きをしているということです。分解を抑制する働きは自然界の仕組みを大きく左右する働きです。キノコが発生する朽木に粘菌の子実体(子嚢・柄)も発生するので、キノコの仲間かと思われてしまいますが、役割は全く逆です。
人間が普段見られない地中では、食べたり・食べられたり、助けたり・助けられたり、微生物などによる生き物たちの壮大なドラマが行われているようです。それらの活動は地球規模で考えると相当なエネルギーになるということです。森の中で土に積もった枯れ葉を取り除くとキノコの菌糸が縦横に這っているのを見ることがあります。キノコは物を腐らせるだけではなく木の根本で重要な働きをしているらしいのです。目にするキノコや変形菌の子実体(子嚢・柄)は地中活動の一端でほんの一部。「これ・粘菌?」はそれらを垣間見ることかもしれません。粘菌(変形菌)に限らず、自然界の生物はそれぞれ関係しあい、絶妙なバランスをとって生きています。その一例がこちらです。
粘菌も食べられてしまいます。(粘菌が虫に食べられる ▶️)
📖参考書❢ 変形菌ずかん・川上新一 著(平凡社) ❢ 変形菌・川上新一 著(山と渓谷社) ❢ きのこ大図鑑・小宮山勝司 著(永岡書店) ❢ キノコの教え・小川 眞 著(岩波新書) ❢ 世にも美しい変形菌・高野 丈 著(文一総合出版) ❢ あした出会えるきのこ100・新井文彦 著(山と渓谷社) ❢ 美しい変形菌・高野 丈 著(PIE International)