野山を歩いていると倒木や木の切り株などにキノコではなくカビでもなく小さな不思議な生き物を目にすることがあります。粘菌(変形菌)と呼ばれる生物です。本には・・動物と植物の中間的な生物。動物のように体を変形させて移動したり大きくなったりするが、キノコのように胞子を飛ばして増える。落ち葉や枯れ枝に住み、それらを腐らせる微生物を食料とする。山だけではなく公園や庭などにもいる! 単細胞ながら迷路も通り抜けてしまう知的な行動をする。自然界の生態系を司る需要な役割をしていることがわかってきた・・・と書かれています。野山にはいろいろな小さな生物がいます。写真の中には粘菌(変形菌)ではないものも含まれます。信州、里山で出会ったホコリさんたちなど・・・です。
*写真掲載にあたって・末尾へ
▼ ヤリカミノケホコリ、ハチノスケホコリ・髻山 2023.3.21
▼ コムラサキホコリ、ヤニホコリ、ヌカホコリ・大峰山、地附山 2023.1.22
細毛体が残っている子嚢の状態を表面網というそうです.コムラサキホコリはこの表面網がムラサキホコリに比べ不完全なのだそうです。顕微鏡の世界ですが。
▼ ルリホコリ、ヌカホコリ・斎場山 2023.1.19
▼ ヤリカミノケホコリのその後・髻山 2023.1.13
▼ 秩父、鐘撞堂山という面白い名前の山麓にて。
▼ 雪の中で生命活動を続けている粘菌(変形菌)がいます。同じ様に寒い森の朽ちた樹木に生えているキノコ類の数の多さにはびっくりします。茶臼山
▼ 雪が積もる前に撮影をしなくては、ということで挑んでみましたが、冷たい地面に膝を立てじっと撮影をしていると、冷たさが全身につたわってきます。地附山、髻山、三登山
▼ 変形菌の変化の様子です。最初白く光っていた未熟実体が変化していきます。クロエリホコリ ヤリカミノケホコリのようです。2022年12月2日から2023年1月13日まで。髻山にて。白い未熟実体はうどんげの花(クサカゲロウの卵のことを言う)に似ているそうです。
クロエリホコリ ヤリカミノケホコリの変化
変形菌というのは粘菌類の中の一つのグループ(肉眼でも比較的見やすく変化がわかりやすい仲間)。正確には粘菌は変形菌(真性粘菌)・原生粘菌・細胞性粘菌という3つの分野群の総称をいう。(高野 丈「世にも美しい変形菌」)
粘菌アメーバはバクテリア、カビ、酵母、キノコなどを食べる。食糧としているそれらは「分解者」と呼ばれ植物や動物の死骸を土に還す役割をしている生物。逆に「変形菌の子実体」はトビムシ類や小さな昆虫に食べれれたり、カビに侵されたりする。「食物連鎖」の一部である。粘菌(変形菌)は物質循環の役割を担っている。・・・「変形菌ずかん・川上新一 著」から抜粋
オレンジ色のマメホコリはまだ胞子が熟していない若いホコリ(未熟子実体)。胞子が熟してくると色が灰色や褐色に変わっていくそうです。(川上新一 著「変形菌ずかん」)
びっくり、どっきり。小さくても美しい? そんなものを撮影しています。カビやコケの類や有機物が発酵したものや、キノコ、虫の卵など粘菌ではないものもあるかもしれません。場数を踏んでいくことで「これ・粘菌?」写真の精度が高まっていくと思います。
粘菌アメーバはバクテリア、カビ、酵母、キノコなどを食べる。食糧としているそれらは「分解者」と呼ばれ植物や動物の死骸を土に還す役割をしている生物。粘菌は間接的に分解を抑制する働きをしていることになります。
地中の生き物たちの活動はバランスを保って行われていましたが、樹木のナラ枯れやマツ枯れの原因はそのバランスが崩れてしまったためと考えられています。キノコの菌糸が木の根本で重要な働きをしているらしいのです。
人間が普段見られない地中では、分解・再生、食べたり・食べられたり、助けたり・助けられたり、微生物などによる生き物たちの壮大なドラマが行われているようです。その活動は地球規模で考えると相当なエネルギーになるそうです。目にするキノコや変形菌の子実体(傘・柄)は地中活動の一端でほんの一部。「これ・粘菌?」はそれらを垣間見ることかもしれません。
◻️参考書❢ 変形菌ずかん・川上新一 著(平凡社)、❢ 変形菌・川上新一 著(山と渓谷社)、❢ きのこ大図鑑・小宮山勝司 著(永岡書店)、❢ キノコの教え・小川 眞 著(岩波新書)、❢ 世にも美しい変形菌・高野 丈 著(文一総合出版)