神奈川からやってきた息子たち(※1)が帰るのと入れ違いに、同じ神奈川から友人がやってきた。近年山歩きを楽しむようになった友人、荷物の中にハイキングシューズを忍ばせてきた。
ところがあいにくの空模様。長期予報では曇り晴れとのことだったが、遠く南方に動く台風の影響もあるのか、雨雲が流れてきている。
朝、空を見上げて、さてどうしようか。雨粒が落ちてはこないから一番近い地附山に行ってみようか。傘を持って出発。時々湿っぽい霧が動いたり、梢の葉から雫が落ちたりはしたものの傘をささずに歩けそうだ。 山は秋深い趣に包まれ、歩く先々に見つける木の実、草の実に大喜び。よく通る友人の声と、一緒になって歓声を上げる私の声で、クマも逃げるだろうと夫が冷やかす。
前に来た時見つけたクルミ(※2)がそのまま残っているのを見つけたり、落ちている栗のイガをのぞいたりしながら登っていく。夫が楽しみにしている粘菌も探しながらゆっくりのんびり上がっていく。倒木の下側にまるでイクラのような赤い粒の塊を見つけて大喜びで撮影しているうちにどんどん暗くなってきた。急いで山頂へ行こう。 あと少しで山頂というところでとうとう降ってきた。山頂には大きな木がないので雨風が吹きつける。傘をさして記念撮影をした。雨はやまない、急いで退散だ。
森の中に入れば雨も風も弱くなる。慌てずゆっくり下って公園まで降りた時には雨は止んでいた。せっかく来たのだからと、農園の無人販売所でりんごと梨を購入して帰った。
翌日の朝。青空だと喜んで朝ごはんを食べている間にどこからかもくもくと雲が湧いてきた。今にも降りそうだ。今日は志賀高原に行こうか、戸隠高原に行こうかなどと話していたが、どちらの空を見ても黒い雲が山を覆っているようだ。やっぱり裏山へ行って昨日の粘菌の変化を見てこようと、靴を履いた。頭上の雲は昨日より少ない。時々青空も見える。
昨日とは違う道を行ってみよう。地附山にはいろいろなコースがあるから変化に富んだ山歩きができる。昨日は雨のため山頂から一気に引き返してきたが、今日はモウセンゴケ群生地まで足を伸ばしてセンブリの花を見てこよう。
その前に昨日の粘菌の変化を見ようと森の中で撮影していたら、急に雨がやってきた。森の中なので、木の葉が傘になってくれている。小降りなので茂った葉の下を歩いていれば傘をさすほどではないけれど、撮影中だった夫やカメラが濡れそうだ。撮影している夫の上に傘を差し掛ける。嬉しいことに雨は長く続かず、撮影が終わる頃には止んだ。
また降ってくると嫌だからと、少し急ぎ足で山頂へ向かった。だが、私たちの目は粘菌に惹かれる。山頂下でまた粘菌に出会い、少しだけ観察をしてから山頂へ。山頂にはまだマツムシソウが咲いている。サルマメの実は赤く色づき、ナツハゼは食べごろだ。幸い雨は落ちてこない。
次はセンブリの花を見に行こう。今年は森の奥まで白い花が見えている、満開だ。白く花を開くセンブリの周りには小さな葉を真っ赤に染めたアリノトウグサや、赤い胞子嚢を持ち上げたアカミゴケもいる。そしてウメバチソウも純白の花をたくさん開いている。小さな球形の蕾も可愛らしい。花の周りのモウセンゴケは紅葉している。
花見の後は、スキー場跡からロープウェイ跡などを巡って、散歩する。明るくなって雨の心配はなさそうだ。陽の光を受けて揺れるツリバナの実を楽しみ、ナナカマドの実を見つけ、クサギの実も可愛いと指さしながら歩く。そして私のおすすめのサルナシを食べてみる。小さな、小さなキウイのような実はちょうど食べ頃だった。その甘さに感動。友人も初めて食べたと嬉しそう。
帰り道で、アケビの実をいくつか収穫。大きな実はパックリと口を開けてすでに中身は無くなっているものが多い。しかも頭上高いところにあって手が届かない。なんとか手繰り寄せられるところは小さい実ばかりだが、まぁいいだろう。
いろいろな自然の恵みを少しずつカバンに詰めて、足取り軽く家に向かった。