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大谷地湿原 1030mと、むれ水芭蕉園 910m(長野県)

2021年4月22日(木)

map 飯綱高原

photo 大谷地湿原の奥に飯縄山
大谷地湿原の奥に飯縄山

photo 飯綱高原大谷地湿原の入り口
大谷地湿原の入り口 

長野から登っていくと飯綱高原の玄関口に当たる大座法師池のすぐ奥に広々とした湿原が広がる。中央の木道に立つと、独立峰らしいどっしりとした山容を青空の中に浮かび上がらせている飯縄山が目の前だ。

この清々しい景色が大好きで、『大谷地湿原』にはたびたび足を運んでいる。その先の戸隠高原に出かけるときには、車の中から眺めるだけの時も多いが。


photo ネコノメソウ,ショウジョウバカマ,リュウキンカ,ニリンソウ・飯綱高原大谷地湿原
大谷地湿原で

珍しく晴天が続くので体がウズウズしてくる。自然の中を歩きたい。そろそろ山の懐には水芭蕉が芽を出しているだろう。大地を割って、純白の苞を広げているだろう。


photo コブシ 飯綱高原大谷地湿原
コブシ 大谷地湿原

浅川ループ橋から飯綱高原スキー場跡に突き当たると左折し、大座法師池を目指す。カモが浮かんでいる大座法師池は、青空を抱えてどこまでものんびりした空気に包まれているようだ。大谷地湿原の入り口には車が一台停まっている。その脇に停めて歩き始める。奥には枯れた萱が丈高く茂っているが、木道周辺は刈り込まれている。それでも萱の進出は激しいということがわかる。木道脇のリュウキンカはまだ若い。緑の葉を広げ始めたところか。戸隠古道への入り口あたりには水の流れがあり、水芭蕉が顔を出している。その脇にはネコノメソウの群落もあり、私は大喜び。真っ青な空にコブシの花が清々しい。ふと見ると、湿原の脇に積み重なっていたたくさんの倒木が整理されている。昨年来たときには通行止めになっていた周回路が復旧されたようだ(※1)。「大変な仕事だね」「感謝、感謝だ」と話しながら周回路を奥へ歩く。

photo 大谷地湿原の周回路が復旧 飯綱高原
大谷地湿原の周回路が復旧

photo 看板も新しい 飯綱高原大谷地湿原
看板も新しい

森の奥までアズマイチゲの群落が続くが、時間が早くて日差しが少ないせいか、みんな俯いている。もう少し暖かくなってこないと開かないみたいだ。

ミズバショウやリュウキンカの花を見ながら一周し、「むれ水芭蕉園」へ向かうことにした。

photo 水芭蕉・大谷地、むれ水芭蕉園
水芭蕉(左)大谷地、(右)むれ水芭蕉園


大座法師池の三叉路を左に進み、閉業してしまった『飯綱高原スキー場』の下を通って霊仙寺山の懐に回り込んでいく。こちらには『いいづなリゾートスキー場』があり、水芭蕉園はその隣だ。この季節になると何度も足を運ぶ。広い湿原に一面水芭蕉という姿も美しいし、水芭蕉にはそのようなイメージがついて回るようだが、私は、林の中をいく筋もの水路が潤し、木々の足元に広がる水芭蕉の姿により魅力を感じる。

photo 飯縄山と霊仙寺山・いいづなリゾートスキー場から
いいづなリゾートスキー場から

photo むれ水芭蕉園入り口付近にて
むれ水芭蕉園入り口付近にて

『むれ水芭蕉園』の入り口を入るとすぐ水路が流れ、そこに水芭蕉の白い姿が散らばっているのが見えるのだが、今年はあまり見えない。少し先へ進んでもリュウキンカの緑の葉が一面に広がるばかり。白い苞はポツポツと寂しそうだ。(※2)

今年は少ないねと話しながら奥へ進んでいくと、水芭蕉が増えてきた。でもやはり水の流れが少ない。いつもは木道沿いの水辺にネコノメソウなども広がっているのだが。それでも奥に進むと水芭蕉が増えてきた。頭上には鳥の声が賑やかだ。ケラが木を突くドラミングも響いている。

photo 赤い水・むれ水芭蕉園
赤い水 むれ水芭蕉園

上流に行くと湿原が赤く染まっているのが見えてくる。この赤は鉄分が多いことによるもので、鉄バクテリアが活動しているのだろう。赤い土と白い水芭蕉の対比が独特で美しい。水芭蕉の近くにはナニワズの黄色い花もチラホラ、そして目をあげればアブラチャンが黄色い花をつけている。

photo ナニワズ むれ水芭蕉園
ナニワズ むれ水芭蕉園

photo アブラチャン むれ水芭蕉園
アブラチャン むれ水芭蕉園

今年は花の咲く時期が早いと聞く。確かに毎年訪ねる花が、1週間から10日も早く咲いている。ここ『むれ水芭蕉園』でも一面の水芭蕉は例年より早いと思われる。だが、全ての花が同時に早いかと言うと首を傾げる。いつもの年は水芭蕉が咲いて、リュウキンカも眩しいくらいに黄色くなってきても、ニリンソウは蕾を膨らませているくらいのことが多い。そしてツクバネソウの蕾はぷっくりと膨らんでくる。

photo むれ水芭蕉園
むれ水芭蕉園

photo むれ二輪草群生地入り口
二輪草群生地へ向かう

ところが、今年はもうニリンソウがずいぶん開いている。けれど、ツクバネソウはやっと地面から葉を広げ始めた様子。花はそれぞれ自分の開く時期を知っているのだろうか。そしてその時期は花によってさまざまなのだろうか。


道路を跨いで下流には『二輪草群生地』があるので行ってみる。以前はニリンソウ園と呼んでいたが、新しい看板が立ち『二輪草群生地』と記してある。咲き出したニリンソウの中を歩いていくと広々した湿原に着く。ニリンソウよりもリュウキンカが見事に花開き、青空に手を広げるようなコブシの大木が呼んでいるようだ。

一時腐って通れなかった木道には新しい木が敷かれ、一面に広がるフッキソウの中を奥へ続いている。『飯綱天狗の遊歩道』として整備されたようだ。

開き始めたニリンソウが一面の白い絨毯のようになるまで、何度も来たくなるここは、天狗のポケットの中なのかもしれない。

photo フッキソウ 二輪草群生地
フッキソウ 二輪草群生地

photo ニリンソウ むれ二輪草群生地
ニリンソウ 群生地で


※2山歩き・花の旅44 春の湿原その1



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