一週間前に夫が電車で山へ行ってこようかと言うのを、ちょっと体調が不安だからと裏山散歩にしたことがあった。それから天候も悪くなり、遠出はやめて裏山散歩を繰り返していた。ようやく私の体調も戻ってきたし、今日はポカポカと暖かいので「乗り鉄登山に行こうか」と言うと、夫は待ってましたとばかりに準備を始める。
時刻表を調べて、8時前に家を出る。駅まで歩くことも多いが、今日はバスにしようと言う。絶好調では無い私の体調を考えての選択だろう。長野駅から8時41分発のしなの鉄道上田行きに乗車。屋代駅で下車、すぐ線路を渡って山道に入っていく。ここから一重山に登ったのは一ヶ月ほど前だったか。今日も東山神社に「行ってきます」の挨拶をして歩き始める。一重山に登った時は左に登山道を進んだが、今日目指す有明山にはまっすぐ登っていく。急な斜面をジグザグに登るが、西斜面だからか雪はほとんど残っていない。落ち葉が斜面一面に積もっていて、山は茶色一色だ。
神社の下で会った人たちが「上の方は滑りますよ」と話していたが、この登山道から見る限り近くに雪の気配はない。ザックザックと落ち葉を踏んで上がっていくと、左手に白馬三山が真っ白く見えてきた。大きい。
しばらくジグザグをくり返していくと、ようやく有明山将軍塚古墳に登りつく。その手前あたりから見える北斜面は一面白くなっている。
古墳の上からは千曲市の街が広がって見える。その向こうに北の戸隠方面、飯縄山が見えてきた。そして、目の下に山に向かって伸びる線路も見えているので、夫は喜ぶ。ただ、古墳の周囲には丈高い木々が茂るので、撮り鉄には適さないようだ。時々北陸新幹線がトンネルに入る大きな音が響いてくる。
さて行こうか。ここから有明山に登る道はちょっとなだらかになる。気持ちいい雑木林だが、今日は小鳥の声がしない。落ち葉を踏んでしばらく歩くと、目の前に有明山の山頂部が見えてきた。今まで歩いているところは茶色、左側には白い斜面が見えていたが、いよいよ最後の急登は白い。白いだけではなく歩いた人の踏み跡がカチカチに凍っている。ここで軽アイゼンを履く。それでも、カチンカチンの登りは怖いくらいだ。ゆっくり踏み締めながら登る。ありがたいことに急な登りは長くはない。気をつけて頑張ると、ポカポカ日当たりの良い山頂へ続く道に出た。何人か登る人、降りる人に出会ったけれど、今山頂には誰もいない。しばし山頂でのひと時を楽しむ。
まだ10時過ぎ、おにぎりを食べるにはちょっと早いので、古墳まで降りることにした。カチカチの道を降りてからゆっくりしよう。下りの方が滑りやすく注意が必要なので、一段と気をつけながら有明山将軍塚古墳に降りる。ここにも誰もいないが、日差しが暖かいので、一休み。少し早めのおにぎりタイムとする。
目の前の飯縄山、三角に尖った戸隠高妻山、ちょっと木に隠れた白馬三山、遠くの山々と目の下の千曲の町。千曲川はゆったり流れ、新幹線の線路はまっすぐだ。夫は嬉しそうにあっちへ行ったりこっちへきたりしながら撮影場所を探している。
しばらく座っていると冷えてきたので、歩こうか。帰りは西ルートにしようか、北ルートにしようか決めかねていたが、線路を見下ろせる北ルートを降りることにした。こちらはやはり雪が多い。以前登ったコースだ。途中何本か通った北陸新幹線を見下ろしながら森将軍塚古墳まで降りていく。何度か来たことがあるところだが、以前古墳や埴輪が好きな友人と来た時にはボランティアのガイドさんがいて、詳しい話をしてくれた。下の博物館には古墳内部が展示してあって、なかなか迫力があった。
今日は古墳を見下ろしてから屋代駅に向かう。一重山の登山口あたりまでは雪がかなり残っている。登山口近くでようやくアイゼンを外す。あとは屋代駅まで一気に降りよう。
ところが、東山神社への道を入らずにまっすぐ降りてしまったらしく、深い木々の中の道になった。どこかへ出るだろうとぐんぐん下って行ったら、お寺の境内にでた。あとで調べると満照寺、このお寺の奥には上の霊園に続くらしい小さなケーブルがあってびっくりした。
屋代駅のホームには観光列車「ろくもん」が停車していて、ピカピカに磨かれたおしゃれな車体を目の前でゆっくり見ることができた。そしてやってきたしなの鉄道は白と水色のラインが優しい信州色というカラー。少なくなってしまった車体らしく、夫は喜んでカメラを向ける。山も鉄道旅も満喫した1日となった。