散歩気分で裏山を歩いてこようと出かけたのは日曜日。毎日朝散歩と称して早朝に近隣を一回りしてくる夫は「今日は行かない」と言うので、一人で出かける。気分も軽く行ってみようと、リュックを持たず、水分とカメラだけ肩から下げて歩き始める。あ、クッキーも二つ入れたけど。
まず、駒弓神社から登り始める。8時半頃なのにもう降りてくる人に会う。日曜日だからお休みの楽しみに登る人が多いのかも知れない。登りながら近くの倒木の下などをのぞき見ていくが、粘菌には会えない。草や木の葉は枯れて茶色になっているが、苔が緑で綺麗だ。ヤマツツジがポツリポツリと狂い咲きしているけれど、寒暖の差が大きいこの頃、木々も迷うのかも知れない。枝の先には茶色く枯れた大きな春の葉があり、先端に小さな緑の秋の葉が冬芽を囲んでいる。
師走に入った景色を楽しみながら地附山に到着、雪が乗った飯縄山を見る。
さて、まだ時間が早い。大峰山まで足を伸ばしてみようと思い立った。スキー場跡から急な道を降り、登り返す。見上げるとヤマナシの実がたくさんぶら下がっているが、落果は見つからない。
松枯れ対策で伐採され積み重ねられた木々からさまざまなキノコが出ている。カワラタケの仲間かびっしり重なっているものが多い。雨が多かったせいか、ぐにゃぐにゃしたキクラゲの仲間のようなキノコも多い。名前はわからないが、さまざまな色があって面白い。木々の冬芽を見ながら登って大峰山に到着。三角点でスマホの自撮りに挑戦したが、なかなかうまくいかない。みんなどうやって撮るのだろう。狭いところや、単独の時には便利だと思うが、私にはまだ使いこなせない。
さて下山はどうしようかと思いながら歌ヶ丘への道を降り始めると、いた。粘菌。急斜面の足場が悪いところに横たわる木、その剥がれかかった皮の中にびっしり。ヘビヌカホコリはそろそろ終盤らしい。そして茶色のヌカホコリのような粒々がいっぱいだ。夫へのお土産に写真を撮る。後で夫に見せたら、フタナワケホコリと分かった。
シュンランの実がないかキョロキョロしながら降ったが、積もった落ち葉が濡れていて滑りやすく、実も見つからなかった。麓の陽だまりにはホトケノザやスズメノエンドウ、オオイヌノフグリなどが咲いていて季節を間違えたような気分だ。
大峰山の山頂近くで見つけた粘菌を自分の目で見たいと言う夫と一緒に、再び大峰山に登ったのは3日後。今回は南斜面の歌ヶ丘コースから直接大峰山を目指す。青空が広い割には頭上に雲が残り、森はいかにも冬という雰囲気。茶色い斜面にシダ類とヒイラギの木が緑に光っている。木の実も随分落ちて、膨らんだ冬芽が次の春への期待を誘う。
歩いていると色々なものに目が、気持ちが惹かれるが、目的の粘菌を見ようという気持ちが働いたか、山頂下まで案外早かった。途中何ヶ所かでマメホコリを見たが、他の粘菌には会えない。だが、数日前に私が見た粘菌はそこにちゃんといた。随分形が崩れているヘビヌカホコリは、胞子を飛ばしてそろそろ終盤に入っているのだろう。フタナワケホコリは広い範囲に散らばっている。
足場が悪いので、気をつけながら撮影。夫も本物を見ることができて喜ぶ。線毛体の変化や、胞子を飛ばし始めた様子などを観察してから山頂へ上がる。
山頂の四阿で日向ぼっこをしながら、次のコースを考える。まだ10時だから、遠回りをして、いっぱい歩いて地附山へ行こうか。11月半ばに見つけた北斜面の粘菌(※)はどんなふうに変化しただろうか。
落ち葉が湿って滑りやすい車道を降りて、先日の粘菌を見つける。日も当たらない北側だからか大きな変化はないみたいだ。粘菌もアラゲコベニチャワンタケもそのままそこにいるようだ。急斜面の途中に横たわっている倒木なので、あまり近づいてゆっくり撮影することはできない。枯れ木にしがみついて登り、なんとか一部を撮影。
粘菌に会えると嬉しいが、もちろん自然の様々な姿に出会えるのが山歩きの大きな楽しみだ。日の当たりにくい場所ではショウジョウバカマの葉の先にできてくる不定芽を時々見かけるのだが、地面に根を下ろした姿はなかなか見られない。何度も山を訪れ、しっかり目を開けて歩いていれば見つけることができるかも知れないと思っている。
地附山を周り、物見岩コースから降ったが、会えた粘菌はマメホコリだけだった。気が付けばいつの間にか雲が広がっている。そろそろ12時の鐘がなる。家に帰って昼食にしよう。