懐かしい飯綱高原スキー場跡を歩いたので、次はいいづなリゾートスキー場にも足を伸ばすことにした。こちらは今も営業している。今と言っても冬だけれど。
ゲレンデに隣接した東斜面には湿原が広がり、むれ水芭蕉園として知られている。私たちはこのゲレンデの西を源流とする八蛇川(やじゃがわ)に興味がある。もっと下流の水辺を散策したことはあるが、源流部にも興味が尽きない。源流域は滝ノ沢と言い、名前の通り大きな滝があって、そこには簡単には近づけないそうだ。岩登りなどのスペシャリストなら行けるようだが、私たちにはその力はない。清流の空気を感じられれば嬉しい。
車をリゾートスキー場の駐車場に停めて、歩き始めると、ミヤコグサの黄色が目を引いた。明るい黄色に蝶がたくさん群がっている。ゲレンデを登るとクララが丈高く揺れている。ゆっくり歩いていくと、こちらのゲレンデにも蕨がポツポツ見えているがお隣の飯綱高原スキー場跡ほど多くはないようだ。私たちの目的は蕨ではない。
ここから霊仙寺山へ、ゲレンデを上り詰めていく登山コースがあったと思う。以前登った時に左から合流してきたコースだった(※)。今、下から見上げるとはるか高みに行くまでひたすらゲレンデを登っていくように見える。いいづなリゾートスキー場の最上部は標高1500mほどという。券売所やキッズ広場があるところは約900mというから標高差600mのゲレンデだ。お隣の飯綱高原スキー場は最後がシングルリフトだったが、リゾートスキー場は第3リフトがシングルだった。クワッドや、ペアーが多い中、シングルリフトが面白くて何度も往復したのを覚えている。
今、麓の飯綱東高原を何度も歩いているが、ゲレンデの上から見下ろしていた広がりだと、改めて思う。
さて、蝶が舞う気持ち良い草原をしばらく歩いてから一回降りて、飯縄山登山コースの方へ進む。リゾートスキー場から滝ノ沢と鳴岩という沢の間の尾根を登るルートは原田新道という。新道という名前からは新しい道のイメージだが、いつ頃から歩かれているのだろうか。人の姿は全くなく、駐車場にも車は見えなかったが、道はよく踏まれている感じだ。ゲレンデから森の中に入ると、ちょっと湿った気持ち良い比較的平坦な道が続く。まるで分厚いクッションの上を歩いているような・・・夫はトランポリンみたいだと言ったが、大袈裟でなくバネを感じる。がっちりした岩や土の積もり固まった道ではなく、たくさんの根や枝が網目のように落ち葉を絡め取ってふかふかになっているような・・・。
道は何度か小さな沢を越す。水たまりは小さいが、澄んだ水だ。ゲレンデと森の境目には湿原のような湿った広がりがあり、トキソウやネバリノギランが咲いていたが、森の中は大きな木が茂っていて、沢には清流が流れている。
時々巨大な岩が現れる。近寄ると真ん中で パッキリ割れたような岩もあった。火山の噴火で飛んできた岩が地表に落ちて真っ二つに割れたのだろうか。
苔むした倒木もあるので、近寄ってみると純白の粘菌ツノホコリが輝いている。ツノホコリは白く目立つので目に入るが、他の粘菌はなかなか見つからない。小さなムラサキホコリがくっつきあっているのを見つけたのは、かなり歩いてからだ。
さらに進むと道はいよいよ急な登りになる。ここまではかなり平坦な道を奥へ入ったが、1917mの飯縄山へは急な登りが続くだろう。「今日は登山の用意をしてこなかったから引き返そうか」「でもこの気持ち良い道はまた歩いてみたいね」。私たちは来る時よりさらにゆっくり歩きながらゲレンデへの道を戻った。
近年、地球温暖化ということが言われているが、降雪量が減ったのもそのためか。冬季オリンピックの会場にもなったスキー場が閉鎖されたのは寂しいことだ。だが、2月後半にはもう雪が少なくなるようでは、営業は困難だろう。 いいづなリゾートスキー場は我が家からは少し遠くなるが、孫と一緒に何回か訪れた。生活するには大雪はあまり嬉しくはないのだけれど、大きな視点で見ると日本の四季が豊かなことは生活の豊かさにつながっていくのではないかとも思える。