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旭山山麓カタクリ自生地(長野県)

2024年 4月4日(木)


朝からシトシト雨が降る。「今年の3月の降水量は多かったそうだよ」新聞を見ながら夫が言う。確かに多かった、雨や雪の日が。4月に入ってもはっきりしない日が続いている。

昼近くなってようやく晴れ間が見えてきた。さぁ、歩こうか。今から行けるところは・・・そろそろカタクリの花が見頃になったのではないかと、旭山の北山麓、裾花川に落ちる斜面に広がるカタクリ自生地に向かうことにした。

photo:今も昔も磯は楽しい:旭山山麓
仲良し

photo:何年もかけて花開くカタクリ:旭山山麓
何年もかけて花開くカタクリ

家からてくてく歩き出す。ふと、先日見た地図が頭に浮かんだ。「この辺りの山の麓に善光寺七清水の一つがあるそうよ」と言うと、「行ってみよう」と夫。ちょっと回り道になるけれど、歩くのが目的だからいいだろう。ただ、頭の中に描く地図は、うろ覚え。多分こっち、多分そっちと言いながら細い道を何回か曲がって行くと、あった。

夏目清水というこの清水は蓋がしてあった。今では利用されていないのだろうか。鎌倉時代に開基されたという西光寺の入り口にあり、この寺を開基した叡錬法師が掘ったら湧き出した清水だそうだ。

photo:夏目清水:旭山山麓
夏目清水は蓋がしてある

photo:赤地蔵尊:旭山山麓
赤地蔵尊

さて、再び狭い道をあっちだこっちだと言いながら進み、昔の戸隠に続く道に戻る。この道にある赤地蔵様はとても立派だ。初めて見た時は真っ赤に塗られているお地蔵様にびっくりしたが、長野には何体もの赤いお地蔵様が祀られているという。なぜ赤なのか、いろいろな説があってはっきりしたことはわからないが、病気が治ると信じられているという説もあるそうだ。黙礼をして先へ進む。

戸隠古道は右の山へ入っていく、先日歩いた頼朝山の中腹をめぐる道(※1)だが、今日はまっすぐ進む。

国道406号線にぶつかったところから裾花川に向かって降りていく。降水量が多かったことを物語るように水量は多く、ゴウゴウと音を立てて流れている。少し濁った水だ。里島発電所の前で橋を渡り、山に入っていく。上流には国道406号線の茂菅大橋が高いところに見えている。裾花川はここで大きく曲がっているから橋は2回川を渡るような形になっているのだ。大橋の下には、昔走っていたという善白(ぜんぱく)鉄道の橋の橋台だけが残っている。まるで玩具のように小さく見える。

photo:茂菅大橋と善白鉄道の橋台:旭山山麓
茂菅大橋(上)と善白鉄道の橋台

鉄ちゃん(※2)の夫によれば、善光寺から白馬まで繋ぐ予定だったそうだが、戦争で鉄を供給する為に途中までで消えた路線らしい。1936年から1944年までの短い期間だけ走ったそうだ。私は鉄子(※2)ではないと自認するが、昔の人が実現させた小さな鉄道路線には夢を感じる。


話を戻そう。山道を進むとすぐ森の中に赤紫の点々が見えてきた。「咲いているよ」。近づくと蕾もたくさん見えるが、開いている花も多い。斜面の向こうに続く群落は薄桃色になって綺麗だ。頭上には淡い黄色の霞、アブラチャンの花も開いている。朝の小雨と、薄曇りのせいか、人は少ない。カメラを構えてしゃがんでいる男性が2人、どんな花に狙いをつけているのか、じっと動かない。

photo:アブラチャン:旭山山麓
アブラチャン

photo:広くなったカタクリの群生:旭山山麓
カタクリの群生広くなった

私たちはゆっくり歩きながら進む。地元の小学生たちが保存活動をしているというこの群生地、だんだん範囲が広くなっているようだ。薄陽が刺してきたからか、大きく開いている花が多い。雨に当たると花びらに白い点々ができる。カタクリにとっては嬉しくないことなのだろうが、水玉模様のようでかわいい。

photo:雨に当たると水玉模様ができるカタクリ:旭山山麓
雨に当たると水玉模様ができる

photo:真剣に撮影中:旭山山麓
真剣に撮影中

カタクリの花は花びらが6枚に見えるが、よく見ると3枚ずつ重なっている。外側の3枚は萼が変化したものだそうだが、ほとんど同じ形で半分そりかえる独特な形になっている。やってきた昆虫にうまく花粉を運んでもらうための工夫らしい。花びらと萼の内側には桜を図案化したような線が見事だが、これも虫を呼ぶ工夫だそうだ。

photo:花びらが8枚の花:旭山山麓
花びらが8枚の花

photo:花びらが8枚の花と、まだ小さな葉:旭山山麓
花びらが8枚の花と、まだ小さな葉

何気なく見て歩いていたら、4枚ずつ重なって花びらが8枚の花があった。以前、もっとたくさんの花びらを持つ八重咲きを見つけたこともある。花も個体差があるのだろう。もちろん、色や大きさも一つずつ違っているので、見ていると面白い。カタクリの真っ白い花は貴重だと聞くが、ここでは見たことがない。かなり色白で、雌しべの先も白い個体は数個咲いていた。

photo:下から覗くと桜のような形の線が:旭山山麓
下から覗くと桜のような形の線が

photo:白っぽい花は雌しべも白い:旭山山麓
白っぽい花は雌しべも白い

一面カタクリの淡いピンク色が広がっているが、小さなスミレも咲き出している。春早くに咲きだすアオイスミレ、カタクリよりちょっと紫が濃い。

photo:アオイスミレ:旭山山麓

photo:アオイスミレ:旭山山麓

photo:アオイスミレ:旭山山麓

photo:アオイスミレ:旭山山麓

アオイスミレ

photo:大きな桜の枝が折れていた:旭山山麓
大きな桜の枝が折れていた

群生地をゆっくり一回りしてから裾花川の川べりに行ってみた。水量が多く、流れが激しい。歩いていくと、大きな桜の枝が折れている。蕾をたくさんつけて痛々しい。川辺に降りて行って、先端の蕾をつけた枝を数本折ってきた。水に入れてあげれば咲くだろうか。

桜の枝をお土産に、再びゆっくり歩いて家に帰った。

(※2 鉄道に興味が深い男女のこと)




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