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晩秋の黒斑山 2404m(長野県・群馬県)

2018年10月29日(月)


秋もたけなわ、そろそろ雪の知らせも聞かれるようになった。高い山に行くのは難しくなってくる。春まで行けなくなりそうな2千メートル以上の山に行けるうちに行っておきたいと話していたら、「前掛山まで行ってこようか」と夫。しばらく警戒レベルが強くて登れなかった浅間山だが、今は規制が緩んでいる。15年ほど前に山頂を踏んだのもカラマツの黄葉が美しい秋だった。

「行きたい気持ちはあるけれど、日帰りなら黒斑山までだね」と私。秋の日は釣瓶落とし・・・、自分たちの体力を自覚して言う。

というわけで、黒斑山を目指すことになった。秋の澄んだ空気の中、雄大な浅間山を眺めてこようと、早起きをした。

広域地図

6時10分、おにぎりを持って出発。上信越自動車道を湯の丸インターで下り、浅間サンラインを走る。チェリーパークラインに入ると急なカーブが多く、標高2千メートル近くの車坂峠まで傾斜もきつい登りが続く。

登るにつれ、山は黄金色に輝いてきた。カラマツが今を盛りと山肌を染めている。いや、すこ〜し遅めか。ハラハラ、ハラハラと、風もないのに舞い降りてくる葉が日を反射して光る。車はありがたい、黄金のトンネルをどんどん登って、車坂峠に着いた。

photo1黄金色の中を登る:黒斑山
黄金色の中を登る

photo2表コースに入る:黒斑山
表コースに入る

さて、車坂峠で足ごしらえをする。ここからは表コース、中コースがあり、どちらもトーミの頭まで続いている。15年ほど前に浅間山を登った時は多分表コースを行ったと思う。今回も少し長いけれど、表コースを行くことにした。歩き始めるとすぐ後方が開ける。浅間山を囲む古い火山群という三方ヶ峰、東篭ノ登山、水ノ塔山が並ぶ風景は圧巻だ。今年春に登った山々だ。東篭ノ登山、水ノ塔山の間の赤ゾレが痛々しい。さらに左には高峯山がゆったりと横たわっている。

photo4高峯山、三方ヶ峰、篭ノ登山、水ノ塔山:黒斑山
高峯山、三方ヶ峰、篭ノ登山、水ノ塔山

足元は一面に高い霜柱。手が凍える。山にはもう完全に冬が来ている。それでも、まだコケモモの実が枝先に残っている。山の恵を少し味見させてもらった。酸っぱい味は体を元気にする。登山道の脇一面に広がるシラタマノキの葉の間に時々白い実が光る。霜に覆われた世界に残る秋の名残を見つけながら道を進む。ゆっくり歩くことが楽しい。

photo5霜がいっぱいだ:黒斑山
霜がいっぱいだ

霜の中に残る実

photo1コケモモ実:黒斑山
コケモモ実

photo1ゴゼンタチバナ実:黒斑山
ゴゼンタチバナ実

photo1シラタマノキ実:黒斑山
シラタマノキ実

photo1ツガザクラ実:黒斑山
ツガザクラ実

霜も苔も芸術作品のよう

photo霜柱:黒斑山
霜柱

photo霜の芸術:黒斑山
霜の芸術

photoコナアカミゴケ:黒斑山
コナアカミゴケ

photoスギゴケ:黒斑山
スギゴケ

もっとなだらかだったような気がするけれどと首を傾げながら、一気に下り、登り返す。シラビソだろうか、緑の森を歩き、南が開けるところに出た。雲が多く、思っていたより視界は霞んでいる。山並みが続くずっと向こうにきれいな三角の頂が見える、富士山だ。もう白くなっているのが分かる。

photo7富士山が見えた:黒斑山
富士山が見えた

再び森の中に入り、急な坂道を上る。沢山の人が歩くから道が崩れている。ていねいに敷かれた丸太の階段も崩れて傾いている。足元に気をつけながら霜柱の光る道を行くと赤いシェルターが立っている。いざという時の避難小屋だ。急な雷の時も逃げ込めるらしい。そこからはすぐ槍ケ鞘の頂。ゴツゴツした岩が垂直に切り立っている、恐ろしい絶景。雲がものすごい勢いで流れ、目の前にドーンとそびえている浅間山は上半分が見えない。

photo8槍ヶ鞘のシェルター:黒斑山
槍ヶ鞘のシェルター

photo9浅間山は雲の中、槍ヶ鞘にて:黒斑山
浅間山は雲の中、槍ヶ鞘にて

ここからは尾根伝いにトーミの頭へ、そしてその先の黒斑山まで行く。崩れた崖の上に続く稜線はさらに蛇骨岳、仙人岳、そしてJバンドへと続いている。

トーミの頭への急な登りはガレ場のようになっているが、日が当たって霜が解け、滑りやすい。気をつけて行こう。

岩が切り立った見晴らしのよい登山道なので、夫に先に行ってもらい、下りの途中からカメラを構えてみた。ところが、雄大な風景の中で人間は豆粒のようなもの。赤い服を着ているからかろうじて見えるものの・・・。点になった夫が振り向くのをカメラに収め、私も後を追った。

photo10トーミの頭への登り
トーミの頭への登り

photo11槍ヶ鞘からトーミのかしらは崖の上
槍ヶ鞘からトーミの頭は崖の上

photo12岩場を越える:黒斑山
岩場を越える

photo13岩がゴロゴロしている:黒斑山
岩がゴロゴロしている

風が強い。トーミの頭では油断すると吹き飛ばされそうだ。ゆっくりしたいところだけれど、一番先端では立っているのが怖い。浅間山の山頂は隠れているけれど、剣ヶ峰、牙山のごつい山容の向こうには遠く妙義山や、軽井沢方面の町が見おろせる。上空だけ雲が濃く、流れているようだ。

photo14風が強いトーミの頭
風が強いトーミの頭

下の湯の平は葉の海、浅間山へはここから崖を一気に下る。もちろん帰りは登ることになる。前に登っている時、崖の途中にカモシカが現れ、ポーズをとるように岩の上にじっと立っていたことを思い出す。おかしなもので同じところにまたいないかなと見てしまう。

photo15草すべりの急斜面:黒斑山
草すべりの急斜面

photo16湯の平のカラマツ:黒斑山
湯の平のカラマツ

トーミの頭から黒斑山までは早かった。崖っぷちではなく、樹林帯の中に入って登る。所々崖の上に立つ展望場所が開いていて、目の前に浅間山がそびえているが、今日は上半分を雲が洗っている。消えそうになっては新たな雲が吹き寄せ、なかなか晴れない。あっというまに黒斑山に着いた。

photo17雲を乗せた浅間山:黒斑山
雲を乗せた浅間山

男性が一人岩に座って浅間山を眺めている。まずは記念写真と思ってカメラを出していると、若い男性二人が登って来た。お願いして、二人並んで、シャッターを押してもらう。

photo18黒斑山山頂
黒斑山山頂

10時30分、お昼には早いけれど、雲が晴れるのを待ちながらおにぎりを食べることにした。先に座っていた男性は2時間座っていたと言う。若い人と来て、彼は前掛山まで行ったので待っているそうだ。私たちより年配らしい男性は、自分は足が弱くなったので、行かせたけれど、風がとても強いので心配だと話しながらトーミの頭の方へ戻って行った。

余談だけれど、この人には車坂に降り着くあたりで出会った。若い人と話しながら元気に降りていった。

photo19絶景を見ながらのおにぎり:黒斑山山頂
絶景を見ながらのおにぎり

さて、私たちはおにぎりタイム。今年のミョウガがうまく漬かったので、いつものミョウガ味噌漬けおにぎり。

ミョウガを収穫して味噌に漬け、朝刻んで下ごしらえをするのは私。握るのは夫。協力して作る?特製おにぎりは最高。

眺めていても浅間山はなかなか顔を出さない。浅間山の山頂にかかった雲はそのまま東へ流れて行くのか、仙人岳からJバンドに続く崩れ痕はよく見える。こちらは黒っぽく溶岩の縞を浮かせて白い崖なので、白ゾレと言うそうだ。

photo20山頂から仙人岳、Jバンド、北軽井沢:黒斑山
山頂から仙人岳、Jバンド、北軽井沢

100万年前から活動しているという東篭ノ登山、水ノ塔山の間の崖は火山ガスで変色して赤くなっているので赤ゾレ。今私たちが座っている黒斑山は10万年くらい前から2万5千年くらい前まで活動していた火山で、なんと2800mもの高さまで成長したらしい。その崩壊した痕跡が白ゾレの崖なのだそう。

浅間山は現在も噴煙を上げているし、小規模ながら時々噴火している。立ち入り禁止を繰り返す目の前の雄大な景色を眺めながら、人間の小ささを実感する。

しばらく眺めていたけれど浅間山は顔を出さないので、降りることにした。降り始めて少ししたら突然ふっと雲が切れた。一瞬のお目見え。見ている間に再び雲に覆われる。

photo21一瞬見えた浅間山山頂:黒斑山
一瞬見えた浅間山山頂

photo22カラマツ落ち葉の海だ:黒斑山
カラマツ落ち葉の海だ

photo23豊かに実るコメツガ:黒斑山
豊かに実るコメツガ

前掛山への登山道を見おろしながらトーミの頭へ登り返す。帰りは中コースを行ってみよう。分岐を入るとすぐに深い森の空気に包まれる。太い倒木、えぐられた登山道、一面の苔、深い針葉樹の中の道は表コースとは全く異なる景観だ。

緩やかにひたすら下って行くと、少しずつ森が明るくなってくる。カラマツの落ち葉が雪のようにハラハラ降ってくると、車坂峠はもうそこ。

峠のビジターセンターで、珍しいキャベツ味のソフトクリームと、美味しいコーヒーをゆっくりいただいて、しばらく山の余韻に浸った。

photo24キャベツソフトでくつろぐ
キャベツソフトでくつろぐ




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