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愛される里山 鴨ヶ嶽 688m(長野県)

2022年5月6日(金)


久しぶりに遠く車を走らせて袴岳に向かったが、雪の多さに驚いて途中で降りてきた(※)。時間はまだ午前、このまま帰るのはもったいない。どこかへ行こうと話す。

5月の中旬に登ろうと話していた鴨ヶ嶽(かもがたけ)に行ってみようか。山頂に咲くというキンランはまだだろうけれど、蕾は見られるかもしれない。斑尾から降りて豊田飯山ICから一区間高速に乗って信州中野ICで降りる。

鴨ヶ嶽地図

photo:登山口の扉・鴨ヶ嶽
登山口の扉

鴨ヶ嶽は中野市の東にあって、山ノ内町との境界にあたる。中野市街地を通り過ぎて東山公園に車を停める。時間は11時半。山頂までは1時間弱と聞いているから、山頂でお昼を食べようと出発。杉林の端から動物よけの柵を開けて山道に入っていく。

いきなり階段が続く。ヤマブキの枝が目の高さに揺れて明るい。杉は道路端だけだったようで、登山道は落葉樹が多い。新緑がキラキラ眩しい。登山道は階段の連続だ。丸太が組んである階段は丁寧に整備されていてどこまでも続いている。所々に新しい丸太が置いてある。見ればそこは崩れていて危ない場所だ。近いうちに手入れをする予定で丸太を運び上げたのだろう。大変な作業だと思う。

photo:階段が続く登山道・鴨ヶ嶽
階段が続く

とにかくひたすら階段の道を登る。しばらく登っていくと立派な四阿が見えてきた。七面山展望台。余談だが、下りにこの四阿で休んでいる時に裏の崖で動くものがいると夫が気づいた。四阿の窓から見るとこちらを見上げているカモシカと目があった。カメラを構えた時には悠々と歩き出したので、背中だけが虚しく写っている。

photo:立派な四阿・鴨ヶ嶽
立派な四阿

ここから少し降って、またジグザグに階段を登っていく。道の脇にはクサイチゴの白い花が点々と咲いている。クルマバソウも小さな白い点で、森の奥まで続いている。ぽつりと咲いているフデリンドウは、大切そうに周りに木の枝を立ててある。踏まれないように注意を促しているのだろう。なんだか微笑ましい。

photo:登山道脇に咲くクサイチゴ・鴨ヶ嶽
クサイチゴ

photo:登山道脇に咲くフデリンドウ・鴨ヶ嶽
フデリンドウ

花々を見ながら歩いていると小さな蝶や蛾が目に留まる。動いているので、写真に撮るのは難しいが、たまにじっとしている呑気なものがいる。ヨーロッパの建物のような模様の蛾がじっと止まっていたので、撮影成功。家に帰って夫が調べた。ユウマダラエダシャクという長い名前の蛾だそう。幼虫がマサキなどを食べてしまうから害虫なのだろうが、駆除の方法は枝を揺らして幼虫を落とすとある。この古典的な方法を見て、なんだか嬉しくなった。

photo:シャガと(ウマダラエダシャク)・鴨ヶ嶽
シャガ(円内 ユウマダラエダシャク)

photo:シャガと(ウマダラエダシャク)・鴨ヶ嶽
新緑が綺麗

森を見ながら登っていくと所々木の隙間から街が見下ろせる。時々電車の音も聞こえてくる。鉄ちゃんの夫は電車の音が聞こえると立ち止まり、なんとか見えないかと遠い街を見下ろすが、見える範囲が狭いのでなかなか見つけられない。

しばらく登ると稜線に出る。これまで中野方面が見えていたが、山ノ内方面の視界が広がる。奥に志賀山、横手山など志賀の山々が見える。

photo:ホタルカズラ・鴨ヶ嶽
ホタルカズラ

photo:志賀方面の山々・鴨ヶ嶽登山道から
志賀方面の山々

足元を見るとホタルカズラの花が点々と咲いている。蕾から咲き始めの頃はピンク色だが、開くと綺麗な青色になる。「神奈川に住んでいた頃はよく見かけたけれど、長野に来てからはあまり見なかったね」と夫と話した。

さて鴨ヶ嶽の山頂は近い。志賀の山々を見て元気が出てきた。晴れているのに、遠景が霞んでいるのは残念だが、横手山、志賀山、あれは裏志賀山、笠ヶ岳、焼額山と、いつもと違った角度から見る山を指差しながら小さな山座同定を楽しむ。

photo:三角点は隣のピークに・鴨ヶ嶽
三角点は隣のピークに

大きな岩がある急な道、さぁ山頂だとワクワクしながら登ると、そこには三角点があるが山頂の祠は見えない。狭い頂だ。先を見るとどうやら隣のピークが山頂らしい。

「こっちの方が高いみたい」「三角点があるしね」。

三角点にタッチして、お隣のピークに登り返す。山頂に到着。三角点のピークより少し広い。『東山大神』とある小さな祠が祀ってある。山頂標には『鴨ヶ嶽城跡』とあるが、文字が薄くなっていてようやく読めるようだ。

photo:ハナニガナ,シュンラン,クルマバソウ,イカリソウ・鴨ヶ嶽
小さな花たち

photo:コナラの花穂・鴨ヶ嶽
コナラの花穂

祠にお参りして、おにぎりを食べる。目の前に中野市が一望できる特等席だ。霞んでいるが、妙高山、火打山、黒姫山、高妻山、飯縄山と、北信、越後の山々が連なっている。そして足元から時々電車の音が。長野電鉄だ。音がするたびに目を凝らして、見つけた。

photo:鴨ヶ嶽山頂688m
鴨ヶ嶽山頂 688m

photo:山頂でおにぎりを食べる・鴨ヶ嶽
山頂でおにぎりを食べる

さて、キンランはどこだろうと見回していると女性が登ってきた。女性は鴨ヶ嶽によく登るそうで、キンランの場所を教えてくれた。まだ葉をたたんだままの芽吹きのキンラン、花はしばらく先になりそうだ。

photo:山頂に祀られる東山大神・鴨ヶ嶽
山頂に祀られる東山大神

photo:長野電鉄の電車を見下ろす・鴨ヶ嶽
長野電鉄の電車を見下ろす

山頂に登山道整備のボランティア募集の掲示が出ていたが、女性は自分も参加するつもりだと話していた。何冊も重ねてあるノートにはたくさんの訪れた人のメモがある。1万回以上登っている人もいるという鴨ヶ嶽、地元の人に愛されている山だと感じた。




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