青空だ。どこへ行こうか。候補地はいくつかあるが・・・。結局一番近い杏の花を見に行くことにした。一面に杏の花が広がる風景は他では見られないから。そして、干し杏を買ってこようという食いしん坊がその理由。来週あたりが満開だそうだが、土日は混むだろうから避けて少し早めの花見と決めた。
公営駐車場に車を停める。『第67回あんずまつり』が開催中だ。係の人が「満開ですよ、いい時に来られましたね」と言う。現在地を確認し、パンフレットをもらって歩き出す。
私たちが森の杏と呼んでいる千曲市森の杏畑は『あんずの里』というのが一般的な名称らしい。これまでに何回か訪れているが、薄桃色に広がる杏の花は見事だ。
始めて訪ねたのはスキーの帰り、まだ蕾だった。その後、周辺の山を歩いて稜線から見下ろしたり、しなの鉄道の屋代高校前駅から歩いて行ったり(※)、車で周辺の道を走って遠くから眺めたりと、様々に楽しんでいる。
(※ 山歩・花の旅 43 春のお花畑)
今日は見事な青空、眩しいくらいだ。満開の杏は白が強くなり、まだ蕾が多い木はやや赤みがかっている。その微妙な色の違いが渾然となって緩やかな斜面に広がっている。駅から歩いてきたときは薬師山展望台に寄ってから中心部に入ったが、今日は真ん中に車を停めたからゆっくり畑の中を歩いて窪山展望台を目指す。遠くから見上げると古墳のようになっているが、ここは近くの森将軍塚古墳を模して作られたそうだ。
風が強い。あんずまつりの幟旗が音をたててはためいている。歩きはじめた時にはほとんど人がいなかったので、コロナ感染症が増えているからだろうかと思ったが、あっちを見、こっちを見しながら展望台に登る頃にはずいぶん人が多くなっていた。展望台のところに設けられた駐車場にはたくさんの車が停まっている。
「みんなこっちに停めるんだね」「降って行けばいいからか・・・」「でも帰りにはやっぱり登らなくては」、さて行きと帰りのどっちが上りだと嬉しいのかな、などとたわいもない話をしながらのんびりあんず畑を見下ろす。
しばらく上から眺めて、今度は上平展望台に行ってみよう。あそこは前に行ったことがあるけれど、やっぱり上から見下ろす感じだったね。上平展望台は建物の屋上が展望台になっている。遠くからも見ることができるケヤキの大木がすぐ近くに見える。
このケヤキの大木は樹齢600年という。見事な枝振りだ。根方には小さなお稲荷様があり、看板には『お稲荷様のケヤキ』とある。 上平展望台では物産販売の他に杏ソフトクリームも販売している。前に来た時は食べたのだが、今日は風が冷たいのでやめた。展望台の広場のベンチに座ってソフトクリームを食べている人たちがたくさんいる。みんな元気だなぁ。
さて、人混みを避けてもう少し上に登ってみる。樹齢300年という在来種の杏の大木がある。花の色が白っぽく見えるのは太陽の光を浴びているからだろうか。全体的にまだ蕾が多いようだ。大木の周囲にはピンク色の濃い杏が満開になって縁取っている。ちょっとの間ぼんやり見上げていた。ここまで登ってくると、杏の花の上に遠くアルプスの山が白く映える。白馬(しろうま)岳がまだ真っ白だ。彼方でも風が強いのか、望遠でのぞくと稜線には雪煙が上がっているようだ。向こうは完全に雪山だ。今日の青空、登っている人もいるだろうなぁ。
在来種の下から畑の間の道をたどり、駐車場方向へ戻る。観龍寺への登り口を右に分けて、左の畑の間に入っていく。観龍寺は桜の名所だが、今年はまだ咲かない。
少し歩いていくと大ケヤキに突き当たる。大ケヤキの下でお稲荷様に手を合わせ、見事な杏の花の間をのんびり歩いていく。所々に黄色く見えるのは農家の人が植えたらしい水仙。道端にはオオイヌノフグリの青、ヒメオドリコソウのピンク、ホトケノザの赤紫、そして、綺麗な若緑色のトウダイグサも芽吹いている。ここは春爛漫だ。
今回の目的の一つは干し杏を買うこと。『花より団子』ってこのことか・・・。たくさん売っているオレンジ色の干し杏は地元のものではないそうだ。森の杏で作るととてもたくさんの手間がかかり、黒っぽくなるそうだ。そして高価。オレンジ色の少し小さい干し杏はトルコ産だって。前に買ったのはトルコ産だったんだ、きっと。国産は高価だから一袋だけで我慢、トルコ産も合わせてゲット。 さぁこの後は山歩きだ。どこかでお昼を食べて行こう。