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春のお花畑

2018年3月〜4月中旬 


春、雪がまだ残る下から芽吹き始める花々に会うため、何回か山懐に足を運んだ。セツブンソウ、フクジュソウ、ミズバショウ、カタクリ、バイモ・・・等々、北信地方にはありがたいことに何カ所も群生地がある。そして、目を上げれば桜、町にはソメイヨシノや八重桜が多いが、ヤマザクラが山の緑の中に輝くのもこの季節だ。アンズ、モモ、リンゴの花の広がりも嬉しい。

セツブンソウ群生 2018.3

今年は花々の開花が早く、だいたい例年より1週間から10日ほど早く咲き始めたようだ。「人間も早く熟すかしら〜」と言った友人がいるが、早く熟して早く土に還るというのもまた大地の理か・・・。

冬の間、寒さに縮こまって病院通いをしていた分を取り戻そうかという勢いで、私たちは花見に出かけた。山に登った時のことは別稿に書いた(※)ので、ここでは山の麓をめぐった花の旅を書いておこう。

(※ 斎場山513m、天城山694m、鞍骨山798m)

セツブンソウ 一般的な一重(右手前)
八重咲き(左)とクリーム色(右奥)

春1番の花はセツブンソウ、長野の自生地は北限になるそうだ。数カ所自生地があると言うが、今年は3月15日に戸倉の群生地を訪ねた。囲われている一角は地元の人たちが保護しているところで、周囲にはカタクリやアズマイチゲも蕾を持ち上げている。セツブンソウは満開だった。

しなの鉄道

これまでにも3回見に来ているが、車のときも電車のときもあった。今年は電車。しなの鉄道で長野から戸倉駅まで乗る。最近復活されたという<Coca Cola色>の電車に乗って出かけた。これはもちろん鉄道好きの夫の希望。毎日時間が変わるCoca Cola電車の運行時間を調べ、利用できる時間帯に走る日を選んで出かけた。Coca Cola電車は本当にコカ・コーラの赤だった。

私たちは満開のセツブンソウを眺め、近くの広い公園を青く染めるオオイヌノフグリにもため息をつき、満足して帰った。


雪割草 2018.3

春休みには二人の孫がやってきた。それぞれの予定でやってきたので、二人そろったのは数日だったが、それぞれ10日ほどの休日を楽しんで帰った。その間、一緒に雪割草の花を見たり、ワサビの花を見たりしてきた。雪割草は近くに住む友人がていねいに栽培しているものだが、その種類の豊富なことは驚くばかり。自分で交配して色々な品種を作り出すとのこと。一面に咲く色彩はみごとというしか無い。


ワサビの花 2018.3

3月も下旬、ワサビの花は安曇野の清流に広がる農園で満開だった。孫とワサビソフトクリームも満喫してきた。販売していたワサビの花を買って帰り、おひたしにしていただき、春の味覚を楽しんだ。

アオサギの巣 2018.3

ワサビ畑の近くの林にはアオサギのコロニーがあって、大きなアオサギが賑やかに声を交わしながら飛び回っていて、孫が面白そうに見ていた。

裾花川

裾花川のカワウ 2018.3

鳥と言えば、孫たちはカワウが水に潜るのも面白がって、家から歩いて20分ほどの裾花川にも何回か出かけた。孫の一人は、カワウが遠くに飛んで潜ってもすぐ見つける。カワウは潜っている時間が長いので、ずいぶん離れた水面からひょっこり顔を出すのだが、孫は「あそこだ」と、さっと指を指す。裾花川の急流にはカワウやカモ、セキレイなど何種類もの鳥が見られるので、川沿いをのんびり歩くのも楽しい。4月以降になれば無料の足湯温泉につかることもできるのだが・・・。

観音山にて


もう一人の孫とは裏山にも登ったが、そのとき「熊さん出て来ないかなぁ」と、恐ろしいことを言う。「熊さんが出てきたら大変」と言うと、「だって虫しかいないよ。大きな動物さんに会いたいなぁ」と笑う。「熊さんじゃなければいいよ」と応えて、私も笑いながら一歩足を踏み出した時、すぐ脇の叢からノウサギが飛び出していった。ピョンピョンと飛ぶように跳ねていくウサギにビックリ。「きっと動物さんに会いたいって言ったから、出てきてくれたんだね」と、二人で顔を見合わせた。我が家から歩いて行けるいくつかの山には何十回も登っているが、野うさぎに出会ったのは初めてだった。

カタクリ 2018.3


緑の玉がかわいい苔

孫たちが帰った3月の最終日、まだ少し早いかと思ったが、夫と二人で家から歩いて25分ほどの山麓にカタクリ群生地を訪ねてみた。淡い黄色のアブラチャンの花が霞のようにたなびく下に、ピンクの広がり。一面カタクリの花。近くの石垣には緑の玉をつけた苔もかわいらしい。大きな望遠レンズをつけたカメラを持った人たちが何人も訪ねていた。前の年に訪ねたのは4月半ばだったが、満開だった。末日とは言え、まだ3月、やはり今年は早い。

カタクリ群生 2018.3


長野は雪国と言うには積雪量が少ないかもしれないが(アルプスなど山岳地は別として)、寒さ厳しい地方の雪解け頃は様々な花が一斉に開き始める。

4月に入ってすぐ、《杏の里》まで出かけた。もう十数年前に1回訪ねたことがあったが、まだ花には早い時期で、蕾が薄桃色に枝を染めていたことを思い出す。傾斜地のはずれ、斜面に近いところには在来種だという背の高い自然木があって、その姿に心が惹かれた。

今回は、長野駅からしなの鉄道に乗って出かけた。もよりというには遠い駅から春の里を1時間ほど歩いて行った。畑の畦にはホトケノザやヒメオドリコソウが大群落になっていてピンクの濃淡の絨毯だ。

杏の里 2018.4

一本道をてくてく歩いていたら、道沿いの公園にいたおじさんが「すごいよ。今、最高だよ。満開。いいよ〜」と、身振り手振りを加えて話してくれる。「ありがとう」と応えて、なんだか、楽しいおじさんがいるねと話しながら歩いていたが、このおじさん、杏の里の人だったらしい。その後、杏の里に着いて、花盛りの坂道を登っていたら、軽トラックで後ろからやってきて「そっちの道の奥もきれいだよ。入っていいからね〜」と、ニコニコ。

アンズ 2018.4

とても楽しい旅だった。干し杏も買い、杏ソフトクリームも食べ、満足、満足。そういえば以前行った時には夫は杏が苦手だったから、お土産は買わなかった。今は好きになっている。嗜好も変わるんだね。

杏のソフトクリーム


干しアンズ

朝、電車を降りてから畑の中の一本道を歩き、アンズの花を見ながら二つの展望台まで登ったり降りたり、少し疲れたので、帰りはシャトルバスで駅まで出ることにしようと決めた。バスの発車時刻までしばらく時間があったので、軽く腹ごしらえをしようと杏の里の食堂に入った。地元の婦人達が運営しているらしい食堂には「おしぼり一つ」という元気な声が響いている。おしぼり?って手を拭くあれかなぁ。私はここで『おしぼりうどん』という物を初めて食べた。大根おろしの汁をつけ汁にして、味噌で味付けしながら食べるおうどん。素朴なお味。

おしぼりうどん

楽しみな干しアンズを懐に、シャトルバスでらくちんに駅まで帰ったので、元気を取り戻してしなの鉄道の客になった。


城山公園の桜 2018.4

花見と言えばやはり桜?私たちの散歩コース長野市城山公園は桜の名所。長野に引っ越して以来、毎年堅い蕾から葉桜まで楽しませてもらっている。休日に歩けば花見の人たちが多く、露店から肉の焼ける匂いも漂っていて、いかにも日本の花見という感じか・・・。私たちはいつも人出を避けて、平日の午前中とか夕方に散歩する。

今年はやはり桜も早かった。4月の1週目にもう満開。地域の桜祭りは4月第2日曜に計画されているのだが、それまで咲いていてくれるだろうか・・・という勢いだ。

ソメイヨシノ 2018.4


杏の里の人々が話していたが、急に気温が上がり、一気に花開いたのはいいけれど、あっという間に散り始めていて、情緒を味わうひまも無いと。

寒さ厳しい今年の冬は、桜の蕾もずっと堅いままだったが、本当にあっという間に満開になってしまった。開き始め、3部咲き、5部咲き、7部咲き・・・などという余韻も情感もすっ飛ばしてしまったようだ。


バイモ群落 2018.4

それでも4月中旬に見頃を迎えるというバイモを初旬に見に行った時はまだ蕾が多かったので、中旬になってもう一度訪ねてみたところ、満開で風に揺れ光っていた。バイモは例年通りと言えるのだろうか。今年初めて訪ねたので、私たちには判断がつかないが、バイモ群生地の近くの城跡の桜は葉桜になりつつあった。けれど、残った花と伸び出した若葉の華やかな色合いは青い空に映えて美しく、全身が伸びやかになるような気がするのだった。

バイモ 2018.4

バイモの群落を見た帰り、川中島の道を走ると、モモの濃いピンクが一面に広がる様子がとても美しい。ソメイヨシノの白に近い淡い桃色、アンズの薄桃色、それぞれに蕾から開ききった花までグラデーションが美しいが、もっと濃い桃色に広がるのがモモ。走る車の助手席から、私一人が「きれい、きれい」と歓声を上げていた。赤信号で停まった時だけ、横目で見ながら夫いわく「川中島のモモは美味しいんだよね」。

葉桜 2018.4

こういうのも『花より団子』?




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