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戸隠森林植物園に学ぶ2(長野県)

2021年10月10日(日)


photo:自然観察会・戸隠森林植物園
自然観察会

今日は戸隠森林植物園の自然観察会。植物園ボランティアの会が日曜ごとに開催している。春、夏と、私一人で参加した (※)。今日で三度目だが、今回は夫と一緒に出かけた。標高が1000mを越える戸隠高原ではもう秋深まるという景色だ。

photo:岸壁の紅葉・戸隠森林植物園
岸壁の紅葉

戸隠の森にはさまざまな木があるから、木の実をたくさん教えてもらおうとの目論み。ただ、あまりたくさんの人と一緒に歩くのは苦手なので、参加者が多かったら自由歩きにしようと思いながら集合場所に行った。秋の戸隠、紅葉が始まり、空は青く澄んでいる。こんな条件だからだろう、向かう道々どこの駐車場にも車が溢れている。目指す森林植物園の駐車場もいっぱいだ。珍しい。県外のさまざまな土地のNo.が見える。かろうじて空いていた隙間に車を停め、足元を整える。

photo:紅葉のツタウルシ・戸隠森林植物園
紅葉のツタウルシ

八十二森のまなびやの前が集合場所、観察会の参加者は10人を越える程度らしいので、参加することにする。

森は色づき始めて踊っているようだ。目の前の戸隠連峰も赤に黄色に変化している。ほとんど垂直のように見える岸壁なのに木々が根付いているのがくっきりと見え、その生命力に驚く。

photo:ヤマウルシ・戸隠森林植物園
ヤマウルシ

時間になり、ガイドをしてくださる方とともに歩き出す。みどりが池にはカイツブリが潜る度に水しぶきが上がっている。揺れた水面が陽を受けてキラキラ輝く。

池の周りの木にはツタウルシが巻き付いて既に紅葉している。これからさらに赤く染まり、他の木々が葉を落とした頃にも木が燃えるように赤く立っている様子は、晩秋の山歩きの楽しみの一つだ。紅葉はツタウルシだけではなくヤマウルシも見事だ。秋の始まりを告げてくれる華やかな赤だ。


photo:熱心な参加者・戸隠森林植物園
熱心な参加者

みどりが池から高台園地までの緩やかな登り、カラマツ林の裾に笹が茂っている。初めはクマイザサ、しばらく行くとネマガリダケが出てくる。私は雪国の山に広がる笹「クマザサ」を『熊笹』なのかなぁと思っていたが、正確にはクマイザサ。クマザサと呼ばれる意味は隈取りがされたように枯れる、『隈笹』なんだそう。

夏の間、淡い緑がかった白い花で目を楽しませてくれたオオウバユリやオオナルコユリが実になっている。オオウバユリの実は薄く羽がついているので、風に乗って遠くまで飛んでいくのかもしれない。

photo:オオウバユリの実・戸隠森林植物園
オオウバユリの実

photo:木々の足元に・オオナルコユリ,シノデ,ノブキ,ツルリンドウ・戸隠森林植物園
木々の足元に

森の木々も冬の準備を始めている。赤い実をつけているものが目立つが、地味な黒い実もかなりある。どちらが多いのだろう。それはともかく様々な木の実を見つけ、名前を教えてもらったり、その木の特質などを教えてもらったりしながら、ゆっくり歩く。記憶力にはとんと自信がない。一度聞いても覚えられないことの方が多いのだが、次の何かのきっかけで「あ、そういえば」と思い出すこともある。持っていったノートにメモをしながら歩くのはそんな気持ちの表れ。

photo:木の実(赤)・コマユミ,ナナカマド,カンボク,マユミ・戸隠森林植物園
木の実(赤)

photo:木々の足元に・ゴマギ,クマノミズキ,ミヤマイボタ,キハダ・戸隠森林植物園
木の実(黒)

森を歩いていてふと気づくと、目の前の霧が晴れるように木や花の顔が見えることがある。同じ山ではなくても繰り返し山道を歩いて、何度も花たちに会っているうちに、物覚えが悪い私にも花や木の姿がわかるようになる。自然の仲間に入れてもらえたような気がして、なんだか嬉しい。

photo:観察会メモ・戸隠森林植物園
観察会メモ

photo:ツルシキミの蕾と花・戸隠森林植物園
ツルシキミ(蕾もあった)

photo:春と間違えたサンリンソウ・戸隠森林植物園
春と間違えたサンリンソウ

ブナの林から湿原に向かっていると、ツルシキミの真っ赤な実があった。ガイドをしてくださっている方が指差しているので何かと思ったら、実の隣にはなんと蕾をつけた枝がある。春に花を咲かせるツルシキミ、これは気候の不純がもたらした狂い咲きだろう。急に気温が下がったり、また一気に上がったり、自然界も混乱しているのかもしれない。サンリンソウも密かに咲いていた。

photo:ブルーに輝くサワフタギ・戸隠森林植物園
ブルーに輝くサワフタギ


湿原の木道に入ると、バイケイソウやメタカラコウ、シキンカラマツなどが実をつけて茶枯れた立ち姿を見せている。まだ白い花をつけたヒュウガセンキュウも多くは実になっている。そんな中にブルーの輝く実を見つけた。サワフタギだ。「瑠璃実の牛殺しと呼ぶ地域もあるんですよ」と聞き、思わず「えっ、この木で牛を殺すんですか」と聞いた。そうではなくて、この木の枝を牛の鼻輪にしたのだそうで、それで牛の動きを封じたためにこの名になったのだそうだ。美しいブルーの実は所々に見られたが、なぜかあまりたくさん実をつけないのだそうだ。

photo:紫の霞のようなタラノキ・戸隠森林植物園
紫の霞のようなタラノキ

photo:昼食・戸隠森林植物園
おにぎりが美味しい

ゆっくり歩いてみどりが池に向かう。まだ小さいタラの木に紫の霞がかかったような実が広がっている。大木になるとこの霞が大きく広がり、遠くからでもよく見える。


出発点に戻り、観察会は終了。中央広場にはいくつかの木製テーブルやベンチが置かれ、散策を楽しむ人たちが寛いでいる。私たちもベンチの一つに腰を下ろし、おにぎりを食べることにした。目の前にはみどりが池、その向こうに戸隠連峰が聳えている。見事なロケーションだ。ふんわりとカツラの香りが漂う中でのおにぎりは美味しさが増すようだ。




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