春の花を見たいと言う友人と、再び(※)むれ水芭蕉園を訪ねた。天気予報は下り坂だが、それぞれの予定がある中での今日という計画、雨具を持って出かけてみよう。
遠くから運転してきた友人は、休む間も無く今度は我が家の車に乗り換える。たっぷり作ったおにぎりを持って出発。(※山歩き・花の旅173大谷地湿原と、むれ水芭蕉園)
今日は降り出す前に水芭蕉園を歩こうと、坂中峠を越えて、直行する。山桜が綺麗だ。
水芭蕉園の駐車場に車を停め、歩き始める。入り口を入るとすぐ水の流れを越える。ニリンソウの葉が一面の緑を広げ、白い花が開いている。
「この辺りはいつも水芭蕉が多いんだけど、今年は少ないよ」などと夫が説明しながら、みんなで木道を進んでいく。
先日来た時は茶色の湿地が剥き出しだったが、リュウキンカやニリンソウの葉が大きくなってきたせいか、木々の足元を緑に染めて鮮やかだ。奥へ進むと水芭蕉の花も葉も大きくなってきて、清々しい。
いつ来ても小鳥の声が賑やかだが、近くに高く響く声が聞こえる。先頭を歩く男性二人が足を止める。木道の淵でさえずる茶色の小さい鳥、ミソサザイだ。ミソサザイは水辺が好きな鳥で、とても美しい声で囀る。みんなでしばらく見ていたら飛び去っていった。
水芭蕉、ニリンソウ、リュウキンカが入り乱れるように一面に広がっている中をゆっくり歩く。奥へ行くに従って、リュウキンカやニリンソウは姿を消し、林の裾には水芭蕉が一面に広がっている。倒れたハンノキが木道近くに枝を伸ばしている。花が咲いているところを見ると、倒れていても枯れてはいないようだ。隣にはイチイのような葉の枝も張り出している。ふと見ると葉の裏に白い塊がたくさんついているので、もっとよくみようと思って触ったら、煙が出た。これはもちろん煙ではなく花粉だろう。「何これ」と言う私に、タノちゃんが「カヤだよ」と教えてくれる。これは日本海側多雪地特有の常緑樹、ハイイヌガヤ。水芭蕉園は落葉樹の森だが、厚い雪に守られて冬を越す何種類かの常緑低木が育つそうだ。
一回りして出口に近くなると、水芭蕉は少なくなってくる。倒木が重なっている奥にも咲いているのだろうかと話していたら、タノちゃんが太い倒木の上を歩いて奥へ行った。湿原に足を踏み入れるのはご法度だから。山の仕事をしているタノちゃんだからできるけど、滑ったら小川に落ちちゃうじゃない。キミちゃんは何も言わない。言っても無駄でしょうってことかな。
一回りしたら、お腹が空いた。ニリンソウ群生地には木のテーブルがあるから、あそこでおにぎりを食べようと、いそいそと歩く。ニリンソウの花は先日より開いてきたが、まだ最盛期はこれからというところ。テーブルの近くの湿原にはリュウキンカが黄色い絨毯になっている。遠くまで見たいけれど、湿原の中に入るのはもちろんダメ。山男のタノちゃんが早速道の脇の木に登る。お猿さんみたいに湿原が見渡せるのかな。やんちゃ虫の暴れるタノちゃんにみんな呆れ顔。
さて、おにぎりを食べましょう。空気は綺麗だし、鳥の囀りは心地よいし、花は遠くまで見渡せるし、最高のダイニングなのだけれど、木の椅子が湾曲していて、太腿に当たって痛いとか。男性陣は痛いと言いながら食べているけれど、女性陣の座る板はあまり変形していないから大丈夫。でも、風が強くなってきたので、おにぎりもおやつもパクパク食べて、早々に引き上げることにした。
駐車場まで戻り、いいづなリゾートスキー場から山を見上げていたら、どんどん雲が流れて青空が広がってきた。強くなってきた風が雲を追い払っているのか。お日様が出てくると暖かくなる。急いで帰ろうと思っていたのに、青空が出てくれば慌てて帰るのは惜しい気がする。
朝早くから出かけてきた友人たちは疲れ気味、飯縄山を一巡りするドライブをして帰ろうか。
山麓の道を左回りに走るとすぐ霊仙寺跡の入り口。さらに進むとアファンの森が左に見えてくる。雪が溶けたので、森仕事が始まっている様子が見える。黒姫高原へ進む道を分けてしばらく森の中を走ると、古池種池登山道の入り口になる。車は一台も停まっていない。疲れたタノちゃんは居眠りをしているが、キミちゃんは景色を楽しんでいるようだ。一緒に歩いてきたところばかりだよと話す。
戸隠キャンプ場を過ぎ、奥社、みどりが池の辺りは道路脇の沢に水芭蕉が見える。中社で五穀大福を購入し、一緒に入った蕎麦屋を過ぎ、飯綱高原に入ると我が家が近くなる。ちょっとだけ歩いてから帰ろうかと大谷地湿原で停車。
大谷地湿原を以前一緒に歩いた時は、週回路が通行止めになっていたから、今日は一周してみよう。たくさんの木が横倒しになっている。「すごい嵐だったんだね〜」と言葉を交わしながら、ゆっくり出口に向かった。