⬆︎Top 

170
花の競演 六万騎山 320m(新潟県)

2021年4月10日(土)

map 六万騎山

photo イワウチワ・六万騎山
イワウチワ

昨年、イワウチワに会いたくて日本海に近い山へ出かけた(※1)。雪の残る山頂を踏んでたくさんの花に会えたけれど、目指すイワウチワには会えなかった。今年こそは・・・と思っていたが、もっと後だろうとも思っていた。何気なく新潟の山を調べていたら、もう咲いているというニュースが飛び込んできた。どの花も、今年は早いのか。

いくつかの予定がある日は晴れマーク、予定のない日は曇り雨マーク、天気予報は意地悪だ。土日は避けたかったのだが、仕方がない。青空を見た日に出かけよう。

photo 菜の花が咲く 飯山にて
菜の花が咲く 飯山にて


長野から山間の道を通って新潟県に向かう。目指すは南魚沼の六万騎山。標高は低いが花で有名な山。地元の人たちに愛されている里山と聞いている。長野からでは運転が長い、標高が低いくらいが無理なく楽しめるだろう。

photo 八海山が目の前に・六万騎山
八海山が目の前に

飯山から津南、十日町を越えて、さらに一山向こうまで行く。飯山の国道117号線沿いには明るい黄色の帯が続いている。もう菜の花だ。

しかし県境を越えて新潟県に入るとまだ雪がたくさん残っている。有名な豪雪地帯ではあるが、これほど違いが顕著とは思わなかった。山肌に厚く残っているだけでなく、畑や田んぼにもまだ白く積もっている状態だ。

photo コシノコバイモ・六万騎山
コシノコバイモ

十日町から南魚沼へ新しい道路が通じている。山の中をトンネルで抜ける自動車道路は走りやすい。六日町につけば六万騎山はすぐ。しかし、やっぱりと言うべきか、土曜日の駐車場は満杯。もともと狭いのだからしかたがないが、二つの登山口どちらの駐車場もいっぱいだ。見れば広い歩道にも車が並んでいる。私たちも周りを見回してかろうじて1台、歩道近くのスペースを見つけることができた。

photo 彩り豊かなオオミスミソウ・六万騎山
彩り豊かなオオミスミソウ

photo 斜面一面に咲くカタクリ・六万騎山
斜面一面に咲くカタクリ

少し歩いて地蔵尊登山口へ向かう。ここにはトイレがあるのでありがたい。登山口に向かう山の斜面にもたくさんのカタクリが咲いている。そして、コシノコバイモも鐘型の花を揺らしているではないか。登り始める前からワクワク。歩き始めるとすぐオオミスミソウがたくさん見えてきた。カタクリとスミレの花の間に咲いているからすごい。

photo カタクリの群落・六万騎山
カタクリの群落

photo カタクリの咲く道・六万騎山
カタクリの咲く道

私たちは大喜びで登っていく。一つの斜面を登り切ると目の前にピンクの広がり。一面のカタクリだ。反対側の斜面は稜線から下の道路までピンク一色に広がっている。私の足は弾むが、夫の足取りは重い。もともと風邪気味で体調が万全ではなかった上に長距離ドライブで疲れたのだろう。家から駐車場まで2時間20分くらいかかっている。それでも登山道の脇に途切れることのない、カタクリやミチノクエンゴサクの花に癒されているようだ。後方が開けて魚野川が見おろせるところで休憩する。足元には春の花、目の前には雪景色、しばらく休んで少し元気が戻ったようだ。

photo 9小さなミチノクエンゴサク・六万騎山
小さなミチノクエンゴサク

ここからは痩せ尾根を辿ればすぐ山頂だ。大きな桜の木が濃いピンクの花をひらいている。山頂名を記した石碑には雪囲いが施され、豪雪を思わせる。さすがに山頂に憩う人は多いが、広いので一定の距離を置いて休むことができる。コロナ感染症拡大以来、山に登っても他者との距離を気にしなければならない。

photo 魚野川と関越自動車道・六万騎山
魚野川と関越自動車道

私たちはここでおにぎりを食べることにした。春の花、雪景色、ポカポカ暖かい日差しの下、いつまでものんびりしていたい気分だ。 しかし、しかしだ、まだイワウチワに会っていない。本当に咲いているのだろうか。私は足元を見ながら離れた小ピークの方まで歩いてみたが、やはり見つからない。そこで休んでいた大きなカメラを持った女性に聞くと、下山ルートの方に咲いていますよとの応え。今年は早いから、まだ咲いているといいですねと。

photo 見晴らしの良いところで休憩・六万騎山
見晴らしの良いところで休憩

photo カタクリと雪の尾根・六万騎山
カタクリと雪の尾根

photo 六万騎山山頂320m
六万騎山山頂320m

photo 桜咲く山頂で・六万騎山
桜咲く山頂で

喜びと不安を抱えて降り始める。目の前の手が届きそうなところにコゲラがやって来て木をつつく。巣穴らしい大きな丸い穴。こんなに近いところで大丈夫なんだ。確かに人は多いけれど、みんな足元のカタクリに夢中だものね。


photo 春の花々,キクザキイチゲ,イカリソウ,カタクリ,ショウジョウバカマ・六万騎山
春の花々

photo コゲラがつついていた木の穴・六万騎山
コゲラがつついていた木の穴

降り始めるとイカリソウが開いている。登りのコースではまだ小さな蕾が多かったのに、わずかな違いだけれど花は咲く時期を知っているようだ。さらに降ると、あった、イワウチワ。登山道の両脇、笹が茂り始めた斜面にたくさん花開いている。

photo イワウチワを撮る・六万騎山
イワウチワを撮る

私たちはイワウチワのそばにしゃがんでは花を見たり写真を撮ったり忙しい。でも通りすぎる人、すれ違う人は皆ひたすらカタクリに目を止めている。こんな時代なのに、関東からもやって来ている人がいる。カタクリを見たくて来ましたと話している。確かに登り初めから降りるまで、途切れることなくカタクリの群落は続いている。もちろんそれは嬉しいことだけれど、コシノコバイモや、ミチノクエンゴサクの地味な色合いの花だってその独特な姿には目を見張る。関東どころか長野でもなかなか出会えない花だ。イワウチワは、その優雅な花びらを見れば思わず目を惹かれてしまう姿だ・・・と私は思う。

photo イワウチワがいっぱい・六万騎山
イワウチワがいっぱい


photo イワウチワに会いに(大岳山5/3)
イワウチワに会いに(大岳山5/3)

奥多摩の大岳山1267mに登ったのは5月のゴールデンウィークだったと思う。大岳山にイワウチワが咲くと聞いて、朝一番の電車で当時住んでいた神奈川の海辺から出かけた。思い立って一人で山へ出かけることはよくあった。が、あの時の道中は長かった。電車バスそしてケーブルを乗り継ぎ、御岳山から歩き始めた。途中の鍋割山1084mを越えていくと、イワウチワは斜面に隠れるように咲いていた。

関東の山でも咲く花だということを知った。奥御岳渓谷の沢沿いの道を歩き、天狗岩に登った。ブナの木が小さな双葉を開き始めている姿に思わず息を呑んだ。山を満喫して家に帰った時は真っ暗になっていた。あれから25年近く経とうとしている、今でも大岳山にイワウチワは咲いているのだろうか。


photo ナガハシスミレ,スミレサイシン・六万騎山
さまざまなスミレ

photo 木に咲く花たち,オオバクロモジ,アブラチャン,ヒメアオキ,ツノハシバミ?・六万騎山
木に咲く花たち

photo 光を浴びて、オオミスミソウ・六万騎山
光を浴びて、オオミスミソウ

話を戻そう。足元の花だけでなく、木々の花も春を告げている。山頂近くに行くとオオバクロモジの花が開いている。香り高い木だ。アブラチャンの黄色い花も咲いている。我が家の近くのカタクリ群生地(※2)もアブラチャンの森の中にあるが、同じ環境を好むのだろうか。

イワウチワを楽しみながら降るうちに下の道路が見えてきた。山は終わりだ。たくさんの花に会えた山歩き、なんだか終わるのが惜しい。庚申塔口に降りて車も近かったが、もう一度地蔵尊口まで行ったのは、斜面に日が当たっていたから。登り始めた時は雲が隠していたオオミスミソウに日があたり、色とりどりに開いている。もう一度花の姿を目に焼き付けて、車に乗った。


photo 上越線(五日町駅近くで)
上越線(五日町駅近くで)

走り始めると上越線の五日町駅で踏切を越えるのだが、遮断機が降りている。雪の残る田の中を走っていく電車を眺めてから出発。鉄ちゃんの夫はちょっぴり嬉しそう。

photo 野沢温泉道の駅で購入、信州サーモン笹寿司
道の駅で購入、信州サーモン笹寿司


再び長い山間の道を走り長野へ帰る。途中、新しくできた道の駅に立ち寄り今日の夕食に信州サーモン笹寿司を購入して、まだ明るいうちに家に着いた。


※2 山歩き・花の旅166 カタクリの里から頼朝山へ




  • Gold-ArtBox Home