そろそろ地附山のショウジョウバカマが開いた頃かなと思っていたら、夫が「ショウジョウバカマが咲いたんじゃない」と言う。以心伝心かどうかは分からないが、行ってみようということになった。
4月に入って地附山防災メモリアル公園が開園した。久しぶりに公園からのコースをゆっくり巡ってみようと、車で公園の駐車場まで登る。ここまで登ると半分以上登ってしまうが、地附山にはいくつものコースがあるからゆっくり楽しめば良い。
地附山公園は桜の真っ盛りだった。ソメイヨシノが見事に空を染めている。公園事務所の前に、数年前から小さな山野草園が仕立てられているので、まずはそこを見てから歩き始めよう。ちょうど係の人が水を撒いている。邪魔にならないように花を見る。トキワイカリソウやイカリソウが蕾を膨らませ始めている。狭いところにたくさんの花が植えられていて、手入れされているようだ。
さて、野草園を見た後は公園の真ん中の階段を登っていく。上の広場に出たら、新しい木の遊具がたくさんできていた。以前の遊具が古くなって取り壊されたのは昨年のこと。しばらく寂しかったが、開園に間に合うように新しい遊具が取り付けられたようだ。木の白さが気持ち良い。
公園を後に、私たちは山道に入った。カエデの芽吹きが紅葉のように色さまざまに美しい。足元にはスミレやタンポポ。パワーポイントまで登ると、山々が青く見える。志賀高原や菅平高原も、雪はずいぶん溶けたようだ。浅間山から噴煙が立ち上っている様子も見える。いっとき静かだった浅間山がまた少し活発になってきたそうだ。
ダンコウバイの花は終わりに近づいて、黄色がくすんできた。代わりにヤマブキが明るい黄色を開き始めている。森の中にはオクチョウジザクラの白い花が目立ってきた。ミヤマウグイスカグラの赤はまだポツポツとしか見えていない。
あ〜、新しい命の季節だ。森の中を歩いているだけで背筋が伸びていくような気がする。
足元の小さな花を探したり、目の上の枝の芽吹きを探したり、忙しい。ウリカエデだろうか、クリーム色の花穂を伸ばし始めている。ナツグミの新芽の脇には小さな、小さな丸い花芽らしいものがちょこんと座っている。この花が開くときには見に来たいと思っている。
森の木の花は春早くに開いてしまうものが多い。しかも高い枝の先などにあって、枝や葉の色と同じような地味なものも多い。春の山に遊びに行き、足元のスミレやタンポポに大喜びして帰り、気がつくと木の花は散ってしまっていることが多い。
いつも気を引き締めて・・・と言うのは大袈裟だけれど、今年こそは見たいと思いながら山に入るのだが。似たような花も多く、お手上げ。それでも里山には名札がついている木もあって、不勉強な私に教えてくれる。
ハンノキの仲間は花穂が垂れていても同じような花が多いので見分けがつかないのだが、『ミヤマハンノキ』と、名札が付いている木が満開になっていて嬉しかった。
地附山の山頂からは大きな飯縄山を眺める。今日は北に雲があるのか、右奥の黒姫山、妙高山は見え隠れしている。ずいぶん雪がなくなって山肌は青い。
山頂からモウセンゴケが群生する斜面までの稜線はショウジョウバカマがたくさん咲くところだ。見事なシュンランと、ショウジョウバカマもあった。まだ少ないけれど、綺麗なピンク色に開いている。落ち葉の中を覗き込むとあちらこちらに蕾がふくらんでいるから、これからたくさん開いてくるだろう。
さて、今日はもう一つ目的があった。地附山の稜線の北の端から先日登った薬山(※)を見てみたいというのがその目的。桝形城跡(別名城山)706mの山頂に行けば見られるのではないだろうかというのが夫の目論見。
前方後円墳を通って、ショウジョウバカマの蕾を見ながら進む。途中見晴らしの良いところで長野のJR工場が見下ろせると、夫は大喜び。そこに置かれている電車の写真を撮ってから先へ行く。
桝形城跡への道は整備されて周遊コースになっている。急な階段を登っていくと、ルリタテハが何頭も舞っている。ヒオドシチョウも一緒になって絡み合うようだ。日当たりの良い落ち葉の上は気持ち良いのだろうか、近づいてもすぐには動かない。彼らも春が来たのが嬉しいのだろう。寒い冬を越して春を迎えた蝶の羽はボロボロになっているものも多い。頑張ったねと声をかけたくなる。
さて、山頂に到着。広々とした主郭の周囲はかなり鬱蒼とした木々、早速北の端に行ってみるが、見晴らしはなし。残念。三登山が木々の間に見えているが、薬山の当たりは濃い樹影の向こうになっている。
しょうがないね。諦めて帰ろう。所々に明るい彩りを添えているオクチョウジザクラの清楚な姿を楽しみながら、ゆっくりと公園へ降った。