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八王子山 510mと佐良志奈のカタクリ(長野県)

2024年 4月5日(金)


photo:八王子山,千曲川のダイサギ,カワウ
大正橋から見る八王子山と水鳥

千曲のセツブンソウを見に行った時に、千曲川の対岸にカタクリの群生地があると知った。戸倉温泉への入り口にあたる佐良志奈(さらしな)神社の境内に咲くという。セツブンソウ群生地の近くから千曲川対岸に見える三角形の山は八王子山、そしてその山の麓に佐良志奈神社がある。

お天気は曇り、次第に晴れるという予報を信じて出かける。午前中の用を済ませてしなの鉄道に乗る。11時45分発で、戸倉まで。戸倉駅から歩いて大正橋を渡る。千曲川の水量は多く、濁っている。早い流れに浮かぶ鴨たちが流されていく。大きなカワウや、真っ白なダイサギが狩りをしている姿も見える。

photo:土俵がある佐良志奈神社
土俵がある佐良志奈神社

流れる水面を見ていると飽きないが、もう昼を過ぎたから先を急ごう。橋を渡り切ると、そこが佐良志奈神社、大きな鳥居の脇に、カタクリ祭りの幟がはためいている。広い境内の一方は八王子山の斜面になっていて、そこにカタクリの群生が見られる。

斜面には遠くからもカタクリの大きな葉が見えている。幅広の葉が多い。だが、あいにくの曇り空の下で、カタクリの花はすぼんでいるのが多い。日がさせば独特な形にそりかえるのだが、今日は下を向いているのが多い。

photo:カタクリ:佐良志奈神社
カタクリ 右は花茎が緑の白花

近寄っていくと、カタクリの花の周りにはヤマエンゴサクの花がたくさん見える。ヤマエンゴサクの花は目立たないけれど、赤紫から青紫、薄いピンクや青と、花色に変化が多くて楽しい。

photo:ヤマエンゴサク:佐良志奈神社

photo:ヤマエンゴサク:佐良志奈神社

photo:ヤマエンゴサク:佐良志奈神社

photo:ヤマエンゴサク:佐良志奈神社

ヤマエンゴサク

案内看板に沿ってぐるりと花の道を登り、途中から八王子山への登山道に入っていく。道は崖を巻くように取り付けられているが、その岩は鋭角に割れ目が多く、ところどころ塊が落ちている。八王子山を構成するのは青木層という泥岩、砂岩が堆積した浅海性の地層だそうで、脆く崩れやすいらしい。だが南側は熱変質を受けて硬くなってしまったのだそうだ。細かいことは資料を読んでもわからないけれど、実際に節理があって割れている岩を見るとこういうことか・・・と思う。

photo:節理があり割れ目が多い岩:八王子山
節理があり割れ目が多い岩

photo:保存されている枯れ木:八王子山
枯れ木が保存されている

しばらく登ると、道の傍に太い枯れ木が立っている。祀られているようだ。ここは昔の街道で、万治峠という峠越えの目印だったビャクシンの木らしい。枯れても御神木として大切にされてきたという。

なんだか傾いたような急な階段を登っていくと、八王子社が祀られていた。ここからは千曲川が見下ろせる。近くで見ると曲がっているようには見えない大きな川だけれど、上から眺めると曲がりくねっている。昔の人が大河を大蛇と呼んだのもわかる気がする。

photo:八王子社にお参りして:八王子山
八王子社にお参りして

photo:千曲川を見下ろす:八王子山
千曲川を見下ろす

大蛇がうねっているような千曲川をしばらく見下ろし、再び登山道に戻る。硬い岩の崖には湿ったところもあって、苔に覆われている。ふと見ると若緑色の玉がたくさんついている苔がある。タマゴケというらしいが、緑の真珠をつけたようで、見つけると嬉しくなる苔だ。家の近くの裾花川沿いにも見られるが、近年株が小さくなってきている。ここで出会えて嬉しい。

photo:緑の宝石タマゴケ:八王子山
緑の宝石タマゴケ

しばらく歩くと、稜線に出る。稜線をまっすぐ登っていくと冠着山へ至る。登ったり降りたり稜線伝いに行く道はかなり大変そうだ。私たちは分岐を折れ、八王子山に向かう。稜線に出てからは、傾斜は緩やかだが落ち葉が積もって足が埋もれるようだ。

photo:アカフタチツボスミレ:八王子山
アカフタチツボスミレ

山の下にはカタクリやヤマエンゴサクだけではなく、オオイヌノフグリやヒメオドリコソウなど春の訪れを知らせる花々が彩り豊かに咲き競っていたが、山の上はまだ茶色一色だ。登り始めにはアカフタチツボスミレがところどころに顔を見せてくれていたが、登るにつれ、緑色がなくなった。目を凝らすと木々の枝先がほんのり桃色がかって冬目が膨らんできていることを教えてくれるのだが。

photo:山頂が近い稜線:八王子山
山頂が近い稜線

photo:木のオブジェ、山頂近くで:八王子山
木のオブジェ、山頂近くで

山頂近くに大きな木が倒れて道を塞いでいた。たくさんの枝が絡まり合う姿は巨大な森のオブジェという様子。オブジェを越えるとすぐ山頂だ。千曲川に向かって飛び出したような小さな突起の山だけれど、正面には千曲川越しに山々の連なりが見え、上流の上田方面、下流の千曲方面も見えている。木の間越しではあるけれど、視界が開くのは気持ち良い。

photo:八王子山山頂
八王子山山頂

photo:木のオブジェ、山頂近くで:八王子山
千曲川を見ながらおにぎりを食べる

さて、お腹も空いたことだしお昼にしよう。少し戻って広い稜線に座り、川を見下ろしながらおにぎりを食べる。山の上には花の色はまだないけれど、川岸には杏の花がピンクの彩りを見せている。山が笑い出すのももう少しだろう。

photo:ハナビゼキショウ:八王子山
広く気持ちの良い稜線

photo:帰り、戸倉駅にて:八王子山
帰り、戸倉駅にて

山を降りてもう一度カタクリの花を見てから駅へ向かった。旧型の電車が来たと喜ぶ夫と一緒に、その電車の客になって家路についた。




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