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落ち葉を踏みながら地附山 733m、桝形城跡 706m(長野県)

2023年 11月15日(水)


雨が続き寒くなってきた。小さな用が重なって遠くの山へ行くのは大変だし、裏山の紅葉も色褪せてきたようだ。毎朝家の窓から眺めて「今年は鮮やかな紅葉の時期が短かかったね」と話す。

それでもやっぱり、山はいい。ちょっと時間を見つけると出かけたくなる。8時半開園を待つように登っていくと、公園管理の西澤さんが迎えてくれる。「早いですね。今日は寒いから、きっと二人占めですよ」と笑う。西澤さんが手入れしているミニ山野草園に咲いてきたムラサキセンブリを見てから歩き出す。

photo:ムラサキセンブリ(山野草園):地附山
ムラサキセンブリ(山野草園)

photo:アオハダの実が残る:地附山
アオハダの実が残る

山道には落ち葉が一面に積もっている。木の種類は途方もなく多く、なかなか見分けがつかないのだけれど、少しずつ葉の形、実の色、花のつき方などを見てきた。何回も歩いている地附山の樹木ですら、見分けがつかないことが多いのだけれど、それでも木の顔が見えるようになってきたと思う。山道を歩いていて分かる木に会うと嬉しい。冬芽が膨らんでいるのを見つけると、「来年も綺麗な花を咲かせてね」などと声をかけたくなる。夫に笑われるのだけれど。

photo:ウリハダカエデの黄葉:地附山
ウリハダカエデの黄葉

photo:サンカクヅルの赤い葉:地附山
サンカクヅルの赤い葉

ダンコウバイの花芽がぽっくりと膨らんでいる。今年の実も隣についている。黄色く染まった葉も可愛い形だ。ヤマコウバシは明るい茶色の葉が春まで残っていて、冬の森を明るくしてくれる。ソヨゴは真っ赤な実が綺麗で、明るい緑の葉が冬の間も雪をかぶって輝いている。ネズミサシはぶつかると痛いけれど、枝に隠れた緑と白の実を見つけるのが楽しい。

白く変化するコシアブラの葉はもうすっかり落ちてしまったかな。ホオノキの葉はヒュウンヒュウンと落ちていたが今では山道一面に敷かれている。

photo:ソヨゴの実:地附山
ソヨゴの実 2020.11.22撮影

photo:森の中で伐採作業:地附山
森の中で伐採作業

歩いていると、チェーンソーの音が響いてきた。イケさんが木を切っている。枯れて倒れそうになっている木を伐採して、道の端に片付けるのだ。今日はチェーンソーの講習を兼ねて整備に来たそうだ。そう言いながらも、難しそうなところは自分でやっている様子。山のノウハウをしっかり身につけているイケさんならではの仕事だ。

少しだけ立ち話をして、イケさんはまた仕事に戻る。私たちは邪魔にならないように藪の中の粘菌を探しながら桝形城跡に向かう。

photo:アズキナシの実:地附山
アズキナシの実

photo:六号古墳から桝形城跡へ:地附山
六号古墳から桝形城跡へ

桝形城跡の山頂にはアズキナシなどが大きく枝を張っているから見晴らしはなかったのだが、葉を落として今は実が赤く光っている。枝の間から横手山が見えている。これから春までの木々が休む期間だけの展望だ。

裏山はアカマツの山かと思っていたが、この季節になってみると落葉樹が多いことがわかる。樹種が多いからキノコや花も多く豊かなのだろう。

photo:あの木も枯れてるなぁ:地附山
あの木も枯れてるなぁ

photo:ヌカホコリ:地附山
ようやく子実体になったかな

桝形城跡を降り、地附山に向かう。再びイケさんと会う。イケさんは少しだけチェーンソーを休んで、一緒に粘菌を観察する。仲間の人も休憩時間だ。何枚か写真を撮って、情報を交換して、イケさんはまた仕事に戻る。私たちは地附山山頂に向かう。

photo:桝形城跡のアカマツ:地附山
桝形城跡のアカマツ

photo:ウスタビガの繭:地附山
ウスタビガの繭

浅間山から雲が立ち上っている。地下の活動は活発なのだろうか。

一時松枯れ病が蔓延してたくさんのアカマツが伐採されたが、少し落ち着いたのだろうか。高級食材の松茸はアカマツのもとに生えるのだが、今年は少なかったそうだ。キノコが減ったのは森の環境だけでなく、夏の猛暑や雨不足などの気候条件にも影響を受けているのだろう。

photo:黄色いキノコがニョキニョキ:地附山
黄色いキノコがニョキニョキ

photo:浅間山(左)から雲:地附山
浅間山(左)から雲

高級食材の不作は直接我が家の食卓に影響はないが、自然の恵みはみんな繋がっているから、呑気に構えているだけではいけないかもしれない。

photo:青空に映える飯縄山:地附山
青空に映える飯縄山

photo:雪を被った志賀方面の山を見る:地附山
雪を被った志賀方面の山を見る

「自然を壊すな」と言って木の枝や落ち葉を持ち出すのを睨んだり、キノコや山菜の収穫を悪事のように言ったりする人もいるようだが、里山は人との関係の中で豊かに保たれてきたことを学ばなければいけない。イケさんのように倒れそうな木を伐採し、片付け、森に適度な陽が入るようにできる人がいなくなったことも山が荒れる一因だ。アカマツの森も手入れをしないと松茸は生えないそうだし、希少種の花も落ち葉に埋もれて消えていくことがある。

寒さが厳しくなる中、来年も山の恵みが豊かでありますようにと呟きながら、落ち葉の中をゆっくり歩いてきた。




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