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彼岸花の向こうの日和田山 305m(埼玉県)

2023年 9月25日(月)


photo:巾着田から日和田山を見る
巾着田から日和田山を見る

お彼岸を過ぎた途端に気温が下がった。9月に入ってもいつまでも暑かった。山に囲まれた長野でも30度を越す真夏の暑さが続いた。だが、今度は一気に寒いくらいの日がやってくる。爽やかなちょうど良い春秋という季節がなくなってきたような気さえする。

涼しい風が吹いて庭の彼岸花が急に花芽を伸ばし始めた。彼岸花は、最低気温が20度くらいに下がると花芽を伸ばし始めるらしい。

球根には毒があり、田畑を荒らすネズミやモグラが嫌うため昔から畑の縁や田の畦に植えられた。そのせいか彼岸花が咲く景色はどこか昔懐かしい田園風景の趣がある。

全国でも有名な彼岸花の群生地、いつか巾着田に行ってみようと話していた。8年ほど前に、所沢に用があり、出かけたついでに私が一人で訪ねた時(※)、あまりに一面の赤にびっくりした。写真を見ながら「巾着田を見下ろす山があるから、いつか行ってみよう」と言ったのは夫。なかなか機会がつかめず年月が経ったが、ようやく乗り鉄旅を実現することができた。

map 日和田山

長野から新幹線で大宮へ。大宮からは川越線で川越まで行き、乗り換えて途中の高麗川から八高線になるらしく、八王子行きで東飯能まで行く。さらに西武池袋線で一駅、目的の高麗(こま)駅で降りる。

map E7系,E230系,西武4000系
乗り鉄山旅

photo:高麗駅前の将軍標
高麗駅前の将軍標

photo:台の高札場
台の高札場

高麗駅前には2本の高い柱のようなものが立っている。目を引くこの柱は朝鮮半島に伝わる習俗で、『将軍標(チャンスン)』というものらしい。柱に書いてある『天下』『地下』という文字は目に見える世界も目に見えない世界も全てを守るという意味で、村の入り口で魔を遮って侵入を防ぐとか。『高麗』という名からもわかるようにこの地域には朝鮮半島からの移住者も多く、その文化が守られてきたようだ。

たくさん乗っていた人はほとんどここで下車、巾着田へ向かうのだろう。私たちもここで靴の紐を締め直し、みんなと同じ方向へ歩き始める。いくつもの角を曲がるが、道標がつけられていて道に迷うことはない。道端にはツルボが満開だ。途中の道角に江戸時代の高札場が残っていてびっくり。時代劇などで目にしたことがある。看板によるとこの辺りは台村と言ったらしい。

photo:ツルボ:日和田山

photo:ツルボ:日和田山

photo:ツルボ:日和田山

photo:ツルボ:日和田山

ツルボがいっぱい

photo:まずは腹ごしらえ:日和田山
まずは腹ごしらえ

高麗川を渡るとたくさんの人は右へ、私たちは逆の左に入っていく。日和田山の登山口はすぐ。のんびり8時に家を出てきたので、そろそろお昼だ。お腹が空いたので、登山口から少し登った森の中でお昼を食べる。持参のおにぎりと、歩く途中で買ってきた栗ご飯だ。深い森の下は小さな笹の葉で覆われていて、風が気持ち良い。

お腹がいっぱいになったので早速歩こう。すぐ一の鳥居が見える。道々木の幹に「カエンダケ注意」の看板がかかっている。一度も見たことがないから見てみたいと思うが、たくさんの人が登るようなところに出てはやはり困るのだろう。その姿はなかった。

photo:男坂、女坂の分岐点:日和田山
男坂、女坂の分岐点

photo:男坂登り始め、深い森の中:日和田山
男坂登り始め、深い森の中

鳥居を越すと道は二つに分かれる。右には『女坂』左には『男坂』とある。だいたい『男坂』が険しく急だろうから、登りはこっちにしよう。登り始めるとなかなか・・・。大きな岩が重なるように連なっている急な岩場の道だった。人もあまり登っていない。年配の慣れた様子の男性が降りてきて、「なかなか険しいですよ」と声をかけて行った。「はーい」と答えながらまだ随分登るのかなとドキドキ。

photo:男坂:日和田山
男坂を登る

photo:男坂木の根と岩の間を登る:日和田山
木の根と岩の間を登る

photo:男坂慎重に登っていく:日和田山
慎重に登っていく

だが、そこから重なる岩の間をすり抜けるように登ると人がたくさんいるところに出た。二の鳥居の岩場だ。ここで『女坂』と合流。二の鳥居の間から巾着田が見下ろせる。高麗川が屈曲してΩ状になっているのがよくわかる。

photo:見晴らしの良い二の鳥居:日和田山
見晴らしの良い二の鳥居

photo:二の鳥居は男坂女坂の合流点:日和田山
二の鳥居は男坂女坂の合流点

しばらく見晴らしを楽しんでから山頂へ。山頂へはもう一息だ。標高は低いけれど、岩場の雰囲気を味わえ、奥の山への縦走もできるからか狭い山頂は賑わっていた。都心方面の視界が広く、高層ビルの塊が散らばっているのがかすかに見える。目を凝らすとスカイツリーも見えている。

photo:二の鳥居から巾着田を見下ろす:日和田山
二の鳥居から巾着田を見下ろす

photo:日和田山山頂にて:日和田山
日和田山山頂にて

せっかくの展望だ。座って残りのご飯を食べながらひと時を過ごす。アオスジアゲハがひらひら舞っている。ずっと木の梢を舞い続けて、一緒に展望を楽しんでいるようだ。

photo:スカイツリー(中央)が見える:日和田山
スカイツリー(中央)が見える

photo:女坂には立派な手すり:日和田山
女坂には立派な手すり

さて、山頂を楽しんだからそろそろ降りようか。下りは『女坂』を行く。道はよく作られていて緩やかな坂道だったが、これが思ったより大変だった。というのは土の表面がツルツルしていてとても滑りやすい。木の根があれば却って靴止めになるが、それもまばらだ。そしてちょっと急なところには立派な手すりが設けられていた。『男坂』とはあまりに印象が違うのでびっくり。

何度か足を取られそうになりながら一の鳥居まで降りる。花がほとんど見られなかったけれど、森の外れにくると、ヤブツルアズキの黄色い花やイヌホオズキの白い花がポツリポツリと咲いている。

photo:イヌホオズキ:日和田山
イヌホオズキ

photo:名称不明:日和田山
名称不明

photo:小豆の起源ヤブツルアズキ:日和田山
小豆の起源ヤブツルアズキ

photo:オシロイバナ:日和田山
久しぶりに見たオシロイバナ

花に会う


photo:川沿いの道を曼珠沙華公園へ向かう
川沿いの道を曼珠沙華公園へ向かう

さて、今度は巾着田に行ってみよう。高麗川沿いに奥へ行くと森の中が赤く染まっている。彼岸花だ。しかし、まだ芽を延ばし始めたばかりの花茎が長短たくさんある。地面から直接蕾をつけた黄緑色の茎が伸びてくる姿はどこかかわいらしいような、儚いような・・・。その姿が花の根元にたくさん見えている。

前に来たのも9月半ば過ぎだったが花は満開で、もう萎れているものもたくさん見た。今日も季節としては同じ頃だけれど、まだ蕾が多い。いかに気温が高い日が続いたかわかろうというもの。ようやく気温が下がって、彼岸花が開く温度になったということなのだろう。今は八分咲き九分咲きと言ったところか、花の間に緑の隙間が見えている。満開になると赤一色になるのだからすごい。

photo:彼岸花:巾着田

photo:彼岸花:巾着田

photo:彼岸花:巾着田

photo:彼岸花:巾着田

どっちを見ても彼岸花

夫は山の上から見下ろすとΩ型の中一面が赤くなると思っていたと、「赤くなっていない」と呟いたのだが、巾着田の彼岸花は川沿いの森の中に咲くので、上からは木々の緑が見えるだけ。わずかに縁の赤が見えていた。

photo:巾着田 曼珠沙華公園
巾着田 曼珠沙華公園

photo:まだ蕾がいっぱい:巾着田
まだ蕾がいっぱい

photo:帰る前にカフェで一息:巾着田
帰る前にカフェで一息

行っても、行っても真っ赤な彼岸花、そして間の小道には途切れなく人の流れ。私も夫も疲れてきた。そろそろ帰ろうか。来るときは電車で大きく回って高麗駅で降りたが、帰りは途中の高麗川駅まで行くバスがあるそうだから、それに乗ってみよう。

しばらく時間があったので、バス停近くのカフェで休み、乗り鉄旅の締めくくりにしようか。

大宮駅でお弁当を買って新幹線の中で乾杯、二人で今日の山旅を語りながら、優雅な車中の時間は流れていった。

photo:国際興業バス,高麗川駅,川越線
帰りはバスと鉄道の旅




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