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飯綱東高原から霊仙寺跡(850m)へ(長野県)

2023年5月10日(水)


photo:ヤマウツボ:飯綱町
ひっそりヤマウツボ

昨年初めて見たヤマウツボに会いたいと、今年も高原の森の中を訪ねた。昨年、落ち葉の影にひっそり咲く花を見た時には、踏み込んで生息地を荒らさないほうがいいと思ったはずなのだが、やっぱり会いたくなって訪ねてみた。そして今年も会うことができた。周辺にはまだ咲いているらしいが、出会ったヤマウツボに挨拶して引き返した。

地図:飯綱町、信濃町
飯綱町、信濃町南部

photo:ヤマウツボ:飯綱町
ヤマウツボ

季節の変化は年ごとに違うから、同じ頃に出かけても必ず会えるとは限らないだろう。昨年は至る所に純白の花穂を伸ばしていたヒトリシズカも、今年はみんな花の終わりになっていた。ラショウモンカズラが大きな紫の花をつけているのが華やかだ。盛り上がった土の上にタチツボスミレがそろそろ終わりらしい。ふと近づいてみると、葉に赤い筋が入っている。目立つ毛が生えていないから、これはアカフタチツボスミレだろうか。スミレの種類は多くて、なかなか名前が分からないのだけれど、少しずつ違いが見えるようにもなってきた。

photo:ラショウモンカズラ:飯綱町
ラショウモンカズラ

photo:チゴユリ:飯綱町
チゴユリ

photo:オオケタネツケバナ:飯綱町
オオケタネツケバナ

photo:ミツバツチグリ:飯綱町
ミツバツチグリ

沢沿いの森に咲く花

photo:アカフタチツボスミレ?:飯綱町
アカフタチツボスミレだろうか


飯綱高原はすっかり春景色、山を眺めてみようと霊仙寺湖の湖畔に立ち寄った。湖の向こうに飯縄山、霊仙寺山、そして遠くに黒姫山と妙高山が見える。

冬に来た時には湖面も真っ白になって幽玄だったが、春の暖かい空気を感じる広がりもいいものだ。

photo:冬の霊仙寺湖:飯綱町
冬の霊仙寺湖 2017.12.20
(黒姫山、妙高山)

photo:飯縄山、霊仙寺山(霊仙寺湖畔から):飯綱町
飯縄山、霊仙寺山(霊仙寺湖畔から)

景色を堪能して、次は霊仙寺山の麓を歩いてこよう。登山道の入り口には駐車場があるが、周囲はニリンソウの大群落。ニリンソウはここだけでなく、山裾の至る所に咲いている。少しでも水の流れがあれば、その流れに沿って白い広がりが続いている。純白に輝く花の群落は見ているだけで清々しくなる。近づいてみると、蕾の時はほのかに紅に染まっていて、また愛らしい。白い花びら(萼片)は5枚が普通だけれど、目を止めてみると7枚8枚などというものも案外多い。綺麗な花を撮影しようと思って近づいてみたら、5枚のものが珍しかったりする。2本の花柄の先に花を咲かせるからニリンソウというのだが、3本出ているものも多く、1本のこともある。また2本咲くのも時間差があって、「あ、一本」と思うと伸びた花柄の根元にもう一つ小さな蕾をつけていることが多い。

photo:どこまでもニリンソウ:霊仙寺跡
どこまでもニリンソウ

余談だが、駐車場で山菜取りに山へ入る人と出会った。厳重に身繕いをしながら、「この季節、山で遭難しても飢えることはない。食べられる山菜がわんさかとある」と笑っていたけれど、ニリンソウも食べられると話す。食べられることは知っていたけれど、猛毒のトリカブトにそっくりだからあえて食べようとは思わなかった。だがその人は、「花がついているのを採れば間違えないよ」と笑う。「花の時期にも食べられるんですか」と驚いて聞くと大丈夫だそう。

photo:ニリンソウのおひたし
ニリンソウのおひたし

話は前後するが、帰り道の道端で少し味見用に摘んできた。カタクリは道の駅などで売られているのを見るが、ニリンソウは見たことがない。昔の人はその種を無くさないようにしながら食卓に乗せる方法を知っていたのだろうか。味見だから今回だけと心の中で言い訳しながら、一つの株からは一本だけ、混み合っているところから一本ずつという具合に広い範囲から摘んできた。おひたしにしてみたら、クセのない爽やかな味だった。

さて、話を戻そう。車を置いて山の中へ入っていく。めあてのコチャルメルソウはキラキラ光っている。とてもユニークな形の花だけれど、小さい上に色も葉や茎と変わらないので目立たない。

photo:コチャルメルソウ:霊仙寺跡
ユーモラスなコチャルメルソウ

photo:コチャルメルソウ:霊仙寺跡

photo:コチャルメルソウ:霊仙寺跡

photo:コチャルメルソウ:霊仙寺跡

photo:コチャルメルソウ:霊仙寺跡

コチャルメルソウ:霊仙寺跡

photo:霊仙寺跡の巨石群
霊仙寺跡の巨石群

コチャルメルソウもツボスミレもタチカメバソウも、まさに花盛り。シロバナエンレイソウも綺麗だ。藪の中をうろうろしてから登山道に戻り、霊仙寺跡へ登る。巨岩が積み重なって苔むしている様はなんとも奇妙な景観だ。ポカポカと暖かい陽だまりで昼寝でもしたい気分になる。好きな岩に腰を下ろしてのんびりする。

photo:サワハコベ:霊仙寺跡
サワハコベ

photo:タチカメバソウ:飯綱町
タチカメバソウ

photo:ツボスミレ:飯綱町
ツボスミレ

photo:クルマバソウ:飯綱町
クルマバソウ

小さいけれど

photo:気ままな休憩タイム
気ままな休憩タイム

休憩の後は藪の中の沢を少し遡ってみる。清流が気持ち良い。流れの真ん中に置き去られたような岩にネコノメソウ(雄しべが4本、葯は黄色)が群生している。まさに水に洗われながら生きているという姿だ。すぐ近くの岩にもと思って見てみると、そっちは雄しべが8本だ。しかも葯の色が暗紅色、これはなんというネコノメソウだろう。チシマネコノメソウにも似ているようだが、この仲間もまた特定しにくいのだ。

photo:ネコノメソウの仲間:霊仙寺跡

photo:ネコノメソウの仲間:霊仙寺跡

photo:水辺に咲くネコノメソウの仲間:霊仙寺跡
水辺に咲く

photo:水辺に咲くネコノメソウの仲間:霊仙寺跡
水辺に咲く

ネコノメソウの仲間

photo:清流にリュウキンカ:霊仙寺跡
清流にリュウキンカ

photo:粘菌は?:霊仙寺跡
粘菌はいないかな

流れの早い沢筋をしばらく歩き、倒木の影に粘菌がないか覗き込み、小さな花々を見つけ、たっぷりと山の空気を吸い込んでから家に向かった。




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