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セリバオウレン満開 髻山 644m(長野県)

2023年3月21日(火)


髻山の中腹にセリバオウレンの群生地があると聞いて、昨年の春に数回行ってみた。藪の中を歩き回って探したが、残念ながら見つけられなかった。

今年こそと思いながらあれこれ忙しく過ごすうちに日々が過ぎ、気がつけば花の時期を過ぎてしまったかもしれない。

昨年秋に見つけた粘菌のその後の変化も気になる夫と、二人でドキドキワクワクしながら髻山に向かった。車を停めて、りんご畑の中を歩き始める。りんごの木は芽吹き始めている。木々の周りにはオオイヌノフグリが青い絨毯になって広がっている。

photo:オオイヌノフグリ:髻山
一面にオオイヌノフグリ

photo:粘菌ヤリカミノケホコリ:髻山
粘菌ヤリカミノケホコリ

溜池を過ぎ、山道を登り、粘菌のいた木の洞をのぞく。「あれ、いない?」「雪の下で枯れていなくなっちゃったのかなぁ」と、目を凝らす。交代で何度も見てみるがいなそうだ。だが、確かこの凹みの上の・・・と、記憶を頼りにもう一度ゆっくり目を近づけてみると、いた。胞子を飛ばした後の茶枯れた姿ではあるが、黒く長い柄が光っている。

photo:粘菌ハチノスケホコリ:髻山
粘菌ハチノスケホコリ

少し離れた枯れ木にはハチノスケホコリ、ムラサキホコリの姿も見える。みんな胞子を飛ばしてお疲れ様の姿になっている。 春の粘菌はまだ活動を始めていないのか、なかなか見つけられない。また見にこよう。

さて、今度は花を探そうか。昨年歩き回った藪の上まで行って、少しずつ範囲を広げながら探すことにする。アズマイチゲの花が閉じ加減に俯いている。山頂まで登って帰りに寄れば開いているねと、話しながら先へ行く。近くには赤い色が綺麗なキツネノサカズキらしいキノコがたくさん顔を出している。

photo:シロキツネノサカズキモドキ:髻山

photo:シロキツネノサカズキモドキ:髻山

photo:シロキツネノサカズキモドキ:髻山

photo:シロキツネノサカズキモドキ:髻山

シロキツネノサカズキモドキ

夫は周辺を横に移動して見ているので、私は斜面をどんどん降ってみる。下の方の杉林も越えていくと溜池があった。もう下の道路が見えるから一回戻ろうと、登り始める。登りすぎると一つ奥の峰に行ってしまいそうだったので横に回りながら歩いていたら、あった!

小さな白い花が、まるで花火が開いたように一斉に空に向かっている。「あ、ここに」と思ってからはもう目がじっとしていられない。どんどん先まで目の前の広がりいっぱいにセリバオウレンの花。うっかりすると踏みそうになる斜面を、足元に気を付けながら登っていく。夫と合流し、二人で時間を忘れて花にみとれていた。

photo:セリバオウレン雄花1:髻山
セリバオウレン雄花1

photo:セリバオウレン雄花2:髻山
セリバオウレン雄花2

photo:セリバオウレン両性花1:髻山
セリバオウレン両性花1

photo:セリバオウレン両性花2:髻山
セリバオウレン両性花2

雄花と両性花

photo:踏まないように端からそっと撮影:髻山
踏まないように端からそっと

セリバオウレンは雌雄異株。だが、雄しべと雌しべが見られる両性花があり、雌花は少ないそうだ。昨年別のところで探した時も見つけられなかった。雄花と両性花はわかりやすいけれど、雄しべが退化したという雌花はなかなか見つけられない。だが、花の真ん中にいると雄花も雌花もどうでも良くなる。ハナバチが飛んでいる。彼らが働いて、また来年もそのまた来年も、この美しい花の姿を残してくれればいいなぁなどと強く思う。

photo:セリバオウレン:髻山

photo:セリバオウレン:髻山

photo:セリバオウレン:髻山

photo:セリバオウレン:髻山

セリバオウレン

photo:セリバオウレン:髻山
満開のセリバオウレン

しばらく花の中で幸せな時間を過ごし、さて山頂まで行ってこようかと歩き出したら、さっきは閉じていたアズマイチゲが大きく開いていた。純白に光っている。

花々に挨拶して、今日は近道で一気に山頂へ行こうと藪の中を直登し始めたのがいけなかった。小さな岩が重なっている急な崖の道は崩れやすく、道もなく、細い木につかまりながら体を持ち上げていくしかない。

photo:アズマイチゲ:髻山
アズマイチゲが開いた

photo:アズマイチゲ:髻山

photo:アズマイチゲ:髻山

photo:アズマイチゲ:髻山

photo:アズマイチゲ:髻山

アズマイチゲ

photo:急斜面に福寿草群生:髻山
急斜面に福寿草群生

「でもあそこに山頂が見えているから」と、元気を出して登るとそこはまだ山頂ではなく、一つ張り出した出っ張りだった。そんなことを数回繰り返していく急斜面には、なんと福寿草がたくさん咲き出していた。最後の崩れ落ちそうな斜面には群落になって黄色い広がりがあり、疲れた気分を盛り上げてくれた。

photo:福寿草:髻山

photo:福寿草:髻山

photo:福寿草:髻山

photo:福寿草:髻山

福寿草

photo:なんとか山頂へ:髻山
なんとか山頂へ

photo:白い胞子が飛ぶベニチャワンタケ:髻山
白い胞子が飛ぶベニチャワンタケ

福寿草に元気をもらって一登りすると、見慣れた登山道の近くの斜面に飛び出したので、そこからは安心して山頂に登りきった。緩やかになった落ち葉の中に、真っ赤なキノコが顔を出している。くるりと丸まったお茶碗のような形の上に乗っていたスギの葉をどけると白い煙がふわりと立ち上った。茶碗の中から胞子を飛ばしているのだ。軽く吹くとまたフワリ、この茶碗の中で胞子を作っているんだね。

photo:ヒオドシチョウも山頂で日向ぼっこ:髻山
ヒオドシチョウも山頂で日向ぼっこ

ポカポカ気持ち良い陽だまりになっている山頂にはヒオドシチョウが数頭くるくる回りながら戯れるように飛んでいる。時々疲れたように草の上に降りてじっとしているが、またくるくる飛んでいく。長い冬を越えて、春がきたのを喜んでいるかのようだ。 私たちもチョウと一緒に陽だまりを楽しみながら、のんびり過ごした。




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