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戸隠越水から旧越後道の紅葉(長野県)

2022年10月27日(木)


10月もそろそろ終わる頃、標高の高いところから錦模様が降りてくる。今年はあまり戸隠に行かなかった。紅葉を見に行ってこようか。

道路の混雑が落ち着く頃を待って、家を出る。走っている間にも空が青く澄んでくる。今日は遠くが見えるかなと、途中の夕陽展望苑に上がってみることにする。雪を被った北アルプスが近い。さらにすぐそこに戸隠のゴツゴツした岩肌が見えている。

photo:白馬三山:戸隠高原から
白馬三山

map:飯綱・戸隠

階段を登っていくと南にも視界が開ける。蓼科山と八ヶ岳の峰々が連なっている。そしてその隣に見えるのは、富士山。小さく見えるけれど、端正な姿は間違えようがない。

photo:戸隠から見る富士:戸隠高原から
戸隠から見る富士

photo:戸隠連峰が一望に:戸隠高原から
戸隠連峰が一望に

見晴らしを堪能したから、先へ進もう。今日は旧越後道を歩いてこようと話していた。スキー場の駐車場に車を停めて、せせらぎの小径に入る。緩やかな降りの道は落ち葉に埋もれている。

落ち葉の間から丸いどんぐりが転がっているのが見える。拾ってみると、先端が割れて芽が膨らみ始めている。もう少しで根が出てくるのだろう。秋から冬へ、季節は確実に眠りに向かっているけれど、見えないところで生き物はそれぞれの命をつなぐために働いているのだ。

photo:どんぐり,トチの葉,コスギゴケ:戸隠高原
森の秋

photo:粘菌、キノコかなぁ:戸隠高原
粘菌、キノコかなぁ

photo:吊る:戸隠高原
ブランコだ

photo:ツリバナ:戸隠高原
ツリバナ

倒木を見れば粘菌がないかと覗き込みながら先へ進む。粘菌もキノコも目立つものは少ない。せせらぎの小径を降りて、旧越後道に出る。長い年月、たくさんの人に歩かれただろう道は窪んでいる。落ち葉がふかふかに積もって歩きやすいが、この季節歩く人はいない。道の真ん中に太いツルが垂れ下がっている。これはフジか、まるでブランコのようだ。つい楽しくなって座ってみる。弾みがついてちょっと怖い。

道の両側には丈高い笹が緑の絨毯になって広がっているが、ヤマナシの大木があったり、ブナの森があったり、トチノキの葉が落ちていたりして賑やかだ。落葉樹の間に緑濃い針葉樹もあって、歩いていくと森の変化が楽しめる。落ち着いた色の多い中にツリバナの華やかなオレンジ色が揺れている。

photo:クロスカントリーツアーコースの道案内:戸隠高原
あんな高いところに

ふと見上げると、道端の樹木の高いところに「クロスカントリーツアーコース」の道案内がついている。ずいぶん雪が積もるんだねと、二人で見上げる。

今日は念仏池まで行って、そこから引き返してくるつもりで歩いている。念仏池の近くに沢沿いの道らしいところがあるので入ってみる。以前にも来たことがあるが、その時は小さな水の流れがあって渡れず、引き返した。今日は水量が少ないのか、流れてきた枝などが溜まったのか、橋のようになっているところを通って渡れそうだ。

photo:昼になっても溶けない霜:戸隠高原
昼になっても溶けない霜

流れを渡ると一気に登りになる。深い沢に落ちている左斜面は伐採されている。ここは林業の道なのだろう。しばらく登ると、道に霜柱が増えてきた。もう昼近いのにまだ溶けずにしっかり残っている。7cmほどの柱がキラキラ光って眩しい。

前方には高デッキ山らしい丸い山頂が見え、左には黒姫山がどっしりした姿を表してきた。そして、振り返ると戸隠連峰が大きく立ちあがっている。赤い衣の裾を靡かせているような美しい姿に思わず立ち止まる。

photo:高妻山中腹の紅葉:戸隠高原から
高妻山中腹の紅葉

photo:高デッキ山中腹の紅葉:戸隠高原から
高デッキ山中腹の紅葉


photo:紅葉の大展望
紅葉の展望・クリックで拡大

photo:低いカラマツ林の中で:戸隠高原
カラマツより大きいぞ

カラマツの森を舞台にして、その上に大見得をきる歌舞伎役者のよう・・・なんてたとえが古いかな。

広く見渡せる紅葉の世界にしばらく浸ってしまう。立っている道は荒れて、カラマツの幼樹があちこちに背を伸ばしている。きれいな三角錐の樹影そのままに小さな森を作っているから近くに立つと自分が大きくなったような気がする。

大きく広がる紅葉の風景の真ん中に二人だけ、なんという贅沢な時間だろう。しばらくその優雅な時間を楽しんでから降る。

念仏池へは近い。途中の沢筋は夏の水量が多かったのか、荒れているところが何ヵ所かあったけれど、歩けないほどではない。

photo:土砂が堆積した沢:戸隠高原
土砂が堆積した沢

photo:念仏池:戸隠高原
念仏池

念仏池はこんこんと湧いている。砂を巻き上げながら湧き出す清水が遥か昔から耐えずに続いているという、不思議な池だ。

池のほとりで一息ついて、来た道を戻る。越後と信州を結んだ古い道を人々がどんな気持ちで歩いたのか、思いは過去へも遊ぶ。

photo:蕎麦屋で:戸隠高原
舌鼓

そして、やっぱり戸隠蕎麦だね。以前団子屋のおじさんが教えてくれた美味しいという蕎麦屋さんに入ってみた。お店は入れ替わり人が来て繁盛していたが、あまり待たされずに席に着くことができた。

私たちは今見てきた紅葉の素晴らしさを話しながら新蕎麦に舌鼓を打った。




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