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竜王山 1930m(長野県)

2016年6月3日(金)

地図・竜王山


らくちん登山、いや、登山と言っては申し訳ないかもしれない。山散歩。昨年紅葉を探して竜王のロープウェイに乗った。166人乗りというそのロープウェイの広さにびっくりした。北志賀の情報を調べると、山頂湿原の花の紹介がある。花を探して歩くことが好きな私にとって湿原は魅力的。おいでおいでと誘われているような気がする。


5月末の土曜から夏場の稼働を始めたロープウェイ乗り場に向かった。駐車場に着いた時はちょうど始発(9:00)のロープウェイが出発する時間だった。ゆっくりと出て行く箱の中には思ったよりたくさんの人が乗っている。

写真・ロープウェイ
竜王ロープウェイからの展望
バックに高社山、斑尾山、妙高山と重なる

私たちが登山靴を履いている間にも、車がやってくる。平日なのでほとんど人がいないだろうと思って来たが、予想外。乗り場に行ってチケットを買うと、入山届を書くように言われた。あれ?前に来た時は書かなかったなぁ・・・と思っていると、係員が次の客に「タケノコですか?」と聞いている。そうか、タケノコの季節なんだ。連日ニュースでタケノコ取りに入った人の遭難を報じている。のんきな私たちは、今がその旬だということも、竜王山がタケノコの産地だということも全く頭になく、やってきた。ロープウェイが動きだしたとき、全身ヤブ歩きに適した装備の人たちが「こんなに空いているロープウェイに乗るのは初めて」と話し合っていた。

写真・北アルプス展望
北アルプス展望


山頂駅に着くと、広い展望台がある。目の前に高社山、斑尾山、妙高山が重なって見える。そして、雲一つない空の下、善光寺平の広がりの向こうにまだ雪を乗せた北アルプスの峰々が遠く乗鞍まで繋がっている。近くは唐松、五竜、鹿島槍、その奥に劔、立山も見える。遠くは槍、穂高連峰がくっきり見える。のんびり眺めていても飽きない、空気が気持ち良い、体の奥から新しい自分が湧き上がってくるようだ。生まれ変わるような・・・という言葉を昔の人は色々な場面で使ったけれど、頷けるような気がする。

写真・北アルプス展望2
北アルプスの峰々
左から...爺、立山(真っ白)、鹿島槍、剣岳、五竜、唐松...、一番手前右は飯縄山

写真・北アルプス展望1
南方には穂高連峰〜槍ヶ岳
さらに南には乗鞍岳もはっきり!
(この写真には写っていません)


ずっとそこに座って山なみを眺めていても飽きないような気がする。以前スイスに旅した時、ツェルマットからゴンドラで登ったマッターホルンの登山口の展望台で、氷河に向かうベンチに半日座ってゆっくりおしゃべりをしていた老夫婦に会った。氷河をバックに寄り添うシルエットは、私たちにとって忘れられない原風景だ。が、やはり山頂湿原も覗いてみたい。7月には青いケシが咲くというお花畑を通り過ぎ、山道に入る。濃い花色のイワカガミがたくさん迎えてくれる。同じロープウェイで登ったはずの人たちは影もない。背丈を超す笹が茂っている林の中に消えて行ったようだ。時おり、ヤブの奥で呼び交す声が風に運ばれてくる。

写真・花イワカガミ
イワカガミ

山での遭難は天候の急変や滑落や、時おりニュースになるが、どちらかというと一般の人には遠い世界の出来事というイメージがある。ところがネマガリダケの季節には急に近づいてくる。すぐそこの山で、またか・・・という感じになる。ネマガリダケってそれほどおいしいものなのか。

志賀高原の奥の大沼池で、いただいたことがある。サバ缶と合わせたというみそ汁、確かに美味しかった。でも、もちろん命と引き換えにしたいとは思わない。山に入る人たちもみな、そう思ってはいないのだろうが・・・。


しばらく行くと山道は広いゲレンデにぶつかる。そこが山頂湿原の入り口になっているが、私たちはとりあえず山頂を目指す。ゆるやかなゲレンデ歩きはまさに山上の散歩。ふと振り返ると、北アルプスが近い。槍ヶ岳、穂高連峰がよく見える。特徴的なスカイラインが魅力的。北の方には長野から見慣れた唐松岳、五竜岳、鹿島槍ケ岳。白馬岳は森の中に半分かくれている。爺ケ岳あたりから大天井岳までの山の名前がいつも分からない。自分が登っていないせいなのか、遠くから見るとピークの形が分かりにくいからなのか、いつかもっと近くから見てみたい。

後ろを振り返りながら歩くとじきに山頂。スキーシーズンにはリフトでここまで来ることが出来る。山頂の看板の隣にレストランがある。営業は冬期だけ、今は閉まっている。このレストランの名前が『ローザンヌ』、バレエ好きの人には心引かれる名前だ。スイスのレマン湖のほとりにある都市の名前だが、2月に若者のコンクールが行われ、日本からの参加者も多く最近知名度が上がって来た。静かな小さな町で、レマン湖の水辺が美しかった。


写真・花イワナシ
イワナシの花

ここにあるレストランがなぜ『ローザンヌ』なのか分からないが、バレエに励んでいる孫に教えてあげようと、写真を撮った。振り返りながら登って来た道を、今度は目の前に展望を楽しみながら、湿原入り口まで降りて行く。

湿原は水芭蕉の葉が大きくなって来てそろそろ花の終わりを迎え、リュウキンカもかなり散っている。イワナシの花がポロポロこぼれていて、実が膨らんできている。ミツバオウレン、サンカヨウ、イワカガミなども、まだ花を見せてくれた。一面に葉を広げているマイズルソウも日の当たるところでは花がほころんで来ている。

写真・花ゴゼンタチバナ
ゴゼンタチバナ

木道を進むと、コバイケイソウが大きくなってつぼみも見えたが、今年はつぼみをつけている株が少ないように思えた。湿原は林に浸食されてきているが、まだワタスゲが風に揺れている広がりも何カ所かあった。渡ってくる風が気持ち良い。足元の小さなタケノコを採りながらロープウェイの山頂駅に向かう。目を下に向けて歩いていると、林の根元にはゴゼンタチバナの白い花が広がっている。頭上には終わりかけたムラサキヤシオ、ヤマツツジ、ムシカリの赤や白の花が空に映えて眩しい。


採ってきたタケノコを一日だけのみそ汁で楽しむ。山散歩もなかなか良いものだ。


他の方々が採っていたネマガリダケはもっと長く太いものだったが、登山道に生えていたこのような小さなものでも山の味を充分味わえた。

写真・採ってきたタケノコ
小さいタケノコ収穫

写真・竹の子味噌汁
鯖カンと合わせたタケノコのみそ汁



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