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袴岳その3(新潟県・長野県) 1135m

2018年5月11日(金)

妙高山


視界が開けると、目の前に妙高がそびえる。チラチラと眩しい光が差し込む森の道を車は何度も曲がりながら進んでいた。道は野尻湖の東湖岸を縫うように進んでいるはずだったが、新緑の濃いカーテンに隠されて、なかなか視界が開けなかった。



黒姫山

夫が見つけた「こっちの道が一番近いみたいだ」という初めての道を、私たちは走っていた。野尻湖の別荘地へ続く道のようだが、くねくねと曲がるそこは所々狭くなり、ガードレールも無くなるので、ドキドキする道だった。けれど、そのドキドキを越えてあまりある雄大な景色に、私たちは車を停めてしばし見とれた。濃紺の野尻湖の向こうに、雲を従えた妙高、黒姫、そしてその奥に戸隠の峰々が見えている。


私たちは車に戻り、斑尾タングラムを越えて万坂峠に向かった。今日は万坂峠を越えて赤池の駐車場まで行き、そこから袴岳に登る予定だった。野尻湖の湖岸を外れ、タングラムに登り始めた頃から工事車両が目立つようになった。万坂峠には数台止められそうな駐車場があったが、私たちはそこを通り過ぎて先へ行く。

赤池への分岐には工事中の看板が立っていたため、見逃してしまった。しばらく進んでからようやくUターンをして戻ってみたが、やはり通行止めになっていた。そこで万坂峠まで引き返し、今日はそこから登ることにした。


チゴユリ

斑尾高原には信越トレイルと名付けられた整備されたトレイルコースが縦横に走っているが、今日歩くのは、袴湿原トレイルから袴岳トレイルと名付けられているルートだ。

靴を履き替え、足元を整えて出発。森の中にはチゴユリが今を盛りに咲いている。小さな白い花が下を向いて咲いているので目立たないけれど、とても可憐な花だ。茎の先に1個だけ花をつけているものが多いが、ここのチゴユリは2個花をつけている双子が多い。花を見つけると私は嬉しくなって足が軽くなる。

袴湿原

クロサンショウウオの卵

ユキツバキやタムシバが咲く稜線を少し行くと袴湿原にたどり着く。湿原はさほど広くない。乾き始めているのか、ツゲの低木が目立つ。それでもミズバショウが残っていた。ショウジョウバカマも多い。湿原のはずれの水が多いところにはクロサンショウウオの卵がたくさんあった。湿原を訪ねてサンショウウオの卵を見つけると、まだ自然が豊かなのだと嬉しくなる。

コミヤマカタバミ

湿原からの流れをたどって袴池に行く。この流れに添ってサンカヨウが咲くのを見たかったのだが・・・まだかたい蕾だった。山肌にはコミヤマカタバミか、淡い桃色の花が露を抱いている。とてもきれいだ。そして小さなネコノメソウがポツポツと咲いている。ボタンネコノメソウだろうか。ヤマエンゴサクも紫の花をつけている。山の花はどれも小さいけれど、個性のある姿で目を奪われる。

袴岳に登るにはちょっと足を伸ばすことになるが、袴池の向こうまで行くとイワカガミがまだ咲いていた。イワナシはもう散って実が膨らんでいる。袴池にはミツガシワが芽吹いている。残念ながらまだ花は見られないが、もう少し経つと白い花が群れ咲くだろう。

ボタンネコノメソウ


分岐点まで戻り、袴岳を目指す。少し暗い杉の林を越え、緩やかに登る。確かこの辺りにはミヤマアオイがあったはず・・・と、足元に目を向けると、あった。小さな白っぽい花が2枚の葉の間にころりと転がっている。

ミヤマアオイ

ブナの芽吹き

気持ちよいブナの森をゆっくり歩く。袴岳は、標高は低いけれど、ブナの森が緩やかな起伏の中に続いていて、とても気持ちよい山だ。最近森林浴という言葉がよく聞かれるが、まさしく、木々の清々しいエネルギーのシャワーを浴びているようだ。昨年は同じ時期に登ってまだ雪が沢山残っていた。ブナの周りに根開けが始まっていて、のぞき込みながら雪面を歩いたことを思い出す。今年は小さなハート形の芽吹きが見られ気候によって変わる自然の微妙な変化を感じる。

ブナの森


森の中には様々なスミレ、フデリンドウ、ニシキゴロモなどが目を楽しませてくれる。気持ちよい空気の中を歩いて、小さな沢を越えるところに確か前に来たときサンカヨウが咲いていたっけ。この道を下って・・・、そうそう、あそこだ。けれど、今年のサンカヨウはまだ蕾だった。袴湿原のところよりちょっぴり大きく膨らんで、今にも開きそうな白い花びらが、仲良く手をつないでいる。

スミレ(袴岳にて)

サンカヨウ


山頂で、目の前に大きな妙高を見ながらおにぎりを食べると、今日は少し先まで行ってみることにした。道は赤池まで続いているが、今日は峠に車を置いてきたので、ちょっぴり歩いて引き返すことにしようと話しながら行く。山頂からはすぐ傾斜が強い下りになる。森の様子はあまり変化が無く、今度赤池から登った時にまた来ようと引き返すことにした。しかし、この途中の森で緩やかな傾斜の一面にカンアオイが広がっているのを発見したので、歩いてみて良かった。コシノカンアオイと思われる大型の赤茶色の花がずっと向こうまでゴロゴロ転がっていて圧巻だった。

コシノカンアオイ


山を降り、峠から車で斑尾高原山の家を目指した。ここに車を置いて、八坊塚トレイルに向かう。ここには地元の人が保護しているシラネアオイが咲くという。4月に来た時は雪が多く、溶け始めたところだけに小さな芽吹きがあった。そして、今日は沢山の花を見ることができた。ただ、車道から入ったばかりのところに数株あるが、その一カ所に大きく穴が空いている。盗掘の痕のようだ。人間はなかなか欲望から逃れられない存在だということを見せつけられた気がする。

シラネアオイ

斑尾高原山の家の中はどんなふうだろうとのぞいてみる。自由に休んでよいと書いてあるので入ってみた。豪華なテーブルとイスの空間が広々としている。平日だからか、私たちしかいなくて貧乏性の私たちはなんだか居心地が悪い。ちょっと休んで出てきた。

斑尾高原山の家にて

帰りはいつもの道を牟礼まで下りることにした。途中思いついて、ワイナリーに寄ってみた。地元で頑張っているワイナリーで少し買物をして帰った。





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