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戸隠鏡池(長野県)

2017年6月20日(火)

地図・戸隠鏡池


山梨から友人が二人、我が家にやってきた。

「戸隠や志賀も散策するのに良い季節になりましたよ。来ませんか?」との、私の誘いにのっての旅となったようだ。

彼らは昨年秋に、我が家へ来る前に戸隠に回ってきたそうだが、その時は霧で岩肌を見ることが出来ず、しかも以前一度案内したことがある、おいしい蕎麦屋さんも見つけることが出来なかったと残念がっていた。

今度は前日に我が家に泊まって、みんなで出かけることにした。「是非とも鏡池に映る戸隠を見よう」と楽しみにしているが、今は梅雨の季節、前後に雨の予報もあり、「天気がよければ見えるでしょう・・・」といささか弱気を抱えて日を決めた。


さて当日、「ガソリンも入れたいから・・・」と言う言葉に甘えて、ちょっと大きい彼らの車に同乗。友人が運転して、後部座席から夫が道案内をする。

長野市の北にある我が家から、戸隠高原まで行く道は幾通りかあるが、4人の大人を乗せているので、急坂が続く七曲がりは止めて、浅川ループ橋を通って、飯綱高原を抜けていくことにした。

車はありがたい。ぐんぐん高度をかせいで飯綱高原スキー場に出る。そこから飯縄山の中腹を巻くようにして、道は戸隠へと続く。最近観光客が増えたそうだが、看板や幟などがほとんど無く、走っていて気持ちのよい森の中の道だ。

右に飯縄山の登山口を見て少し走ると、昨年彼らが見つけられなかった蕎麦屋がある。帰りはここで食べようと話しながらさらに先へ進むと、森が切れて、目の前に戸隠連峰がそびえている。

朝から遠霞みの空で、少し不安があったのだが、そんな不安を吹き飛ばすように山肌が青く鋭い。車を停めてしばし眺める。ごつごつした戸隠の岩肌がそそり立つ様は、いつ見ても感動的だ。

戸隠の村の中に入ると道は細く急になる。宝光社、中社を車の中から拝んで、その先のみどりが池の駐車場に停めた。

写真・クリンソウ
クリンソウ

歩き出そうとしてびっくり。ミズバショウがまだ咲いている。その向こうにあるピンクは?カタクリだ。ヤマエンゴサクも、キクザキイチゲも見える、ここはまだ早春なんだ。駐車場と道路の間には深い窪みがあり、きっと雪が最近まで残っていたのだろう。そう思って奥を見ると、駐車場の脇にはまだ積み上げられた雪が残っている。


ここから鏡池まで、緩やかな森の中の道を歩く。1.5km、もうちょっとあるかな、2kmは越えないと思うけれど・・・。

写真・カモメラン
カモメラン

みどりが池から森に入るとすぐピンク色の小さな花が石垣の上に咲いている。カモメラン。ヒモで囲ってあるのがなんとも無粋だ、戸隠にあってもマナーの悪い人がいるということだろうか。

私はヒモの外側からカモメランの写真を撮って先へ進む。写真に興味のない友人たちはゆっくり歩きながら森の空気を堪能しているようだ。

写真・春ゼミ
春ゼミ 葉はツボスミレ

よく整備されている戸隠森林植物園の淵をたどるようにして奥へ進む。春ゼミの声が頭上から降ってくる。とても小さいうえに木の肌にそっくりな色なので、なかなか見つけられない。後の話だが、帰り道で友人が「そこの葉が動いた」と言い、いくつもの目で探してようやく見ることが出来た。

足元にはズダヤクシュが一面花盛り。淡いクリーム色で小さな花穂だが、木漏れ日を受けて輝き、大地が光の波になっている。正直に言うと、これまでズダヤクシュを見つけてもあまり感動しなかった。地味で、山に登ればどこにでもある花という印象だったから。

写真・ズダヤクシュ
一面に輝くズダヤクシュ
(手前の広い葉はフキ)

でもこの森のズダヤクシュはすごい。どこまでも光って続いている。『見直しました!』

森の中を木漏れ日を浴びながら歩いていく。高低差があまりないので、おしゃべりを楽しみながらゆっくりのんびり行く。鳥の声も聞こえるが、葉が茂っているので、姿はなかなか見つけられない。

写真・コケイラン
コケイラン

植物園の整備された道をいくつか右に分けて進み、最後に随神門との分岐を左に進む。森の中を歩いているので、すぐ近くなのに戸隠連峰の姿は、まだ見えない。


歩きながら、小さな花を見つけるとかがみ込んで写真を撮っている私を見て、友人がおかしそうに言う。「立ったり座ったり、良い運動になりますね」。私たちの笑い声が森の中にのどかに響く。

いきなり森の向こうに真っ赤な色彩が広がった。天命稲荷の鳥居だ、真新しい朱色の鳥居がたくさん並んでいる。前に夫と二人で来たときは、真っ赤な鳥居は一基くらいしかなかった。自然と人間の営みとが共存してきた歴史のひとコマを見るようだ。昔々も、こんなに山奥の小さなお稲荷さんを拝むために人々は山道を来たのだろうか。

写真・鏡池に映る戸隠連峰
鏡池に映る戸隠連峰


ここを抜ければ、鏡池はすぐ。最後に少し階段状の登りを頑張ると、右にいきなり大きく岸壁がそびえ立つ。木々の向こうに水面がさざ波を浮かせている。

「わぁ〜」と、思わず声が出る。良かったね、戸隠に会えたね。


写真・鏡池をしばし眺める
しばし眺める

鏡池は人間が農業用に作ったもの、堰堤の上に立つと、湖面に戸隠連峰の岩肌が映る姿を正面に見ることができる。この景色が有名になって、訪れる人も多いそうだ。特に紅葉の頃には沢山の人が訪れるという。

今日は中央あたりにさざ波が寄せていたが、手前の水面は山を映している。緑濃いこの季節の姿もなかなか美しい。以前私と夫が来たのは、紅葉にはちょっと早い時期だったので、静かな池を楽しめた。今日も、平日だったので、まぁまぁ静かな山道歩きを楽しめた。

写真・秋の鏡池(2015.10.4)
秋の鏡池(2015.10.4)

堰堤の上に座ってしばらく眺めた後、ほとりのレストランで『豆腐ジェラート』を食べた。歩いてきてほてった体に冷たいジェラートは気持ちよかった。


写真・戸隠そば
戸隠蕎麦を食べて・・・

戸隠に会えて満足した私たちは、来た道をゆっくりもどった。そして、楽しみにしていた蕎麦に舌鼓を打ったのは言うまでもない。





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