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216 紅葉と新蕎麦と 戸隠鏡池(長野県)

2021年10月25日(月)、10月30日(土)


photo:中央広場から戸隠山
中央広場から戸隠山

久しぶりに友人がやってきた。高い山には雪が乗り始めたが、標高の低いところはこれから紅葉シーズンだ。さて、どこへ行こうか。友人が鏡池の紅葉はどうだろうと言う。いい時期かもしれない。紅葉を愛でたら、美味しい新蕎麦を食べてこよう。

考えることは皆同じだろうと、混みそうな休日を避けて月曜日(10月25日)に出かけたが、これもまた考えることは同じになったのか、月曜でも戸隠を訪ねる人は多かった。

photo:ツルマサキの実・戸隠高原
ツルマサキの実

森林植物園入り口の駐車場は他県からの訪問者の車でいっぱい。わずかに空いている空間に車を停め、歩き始める。あいにくの曇り空だが、戸隠の岩山はよく見える。周囲は赤、黄、茶色のビロード色に落ち着き、すっかり秋深しだ。

photo:オオウバユリ実の殻・戸隠高原
オオウバユリ実の殻

みどりが池のほとりを回って高台園地に向かう。草紅葉の茶色の中をゆっくり歩く。所々にオオウバユリやツルリンドウの実が残っている。オオウバユリの実はもう風に乗って飛んで行き、すっくと立っているのは殻ばかり。これが雪原の中にも残っていることが多く、潔い立ち姿に感動することがある。高台園地からは森の中を降って、随神門から続く外周の小径に合流する。カラマツ林を進むと雑木の森になり、淡い紅葉が広がってくる。

photo:紅葉の森を歩く・戸隠高原
紅葉の森を歩く

このところ雨が多かったからか、道には水溜りが多く、ぬかるんでいる。そして戸隠を訪問する人が多いからだろう、木道はガタガタに傷んでいる。長い板の端に乗ると反対側が持ち上がって「シーソーみたい」などと笑いながら歩くところもある。油断するとぬかるみに落ちてしまうから気をつけていこう。至る所、板が割れたり落ちたりしている。

photo:穴があいた木道・戸隠高原
穴があいた木道

木々の葉は紅葉し、一年の役目を終えて足元に散り積もっているが、枝には実がぶら下がっているものも多い。小鳥が好んで食べる実も多いのだろう。戸隠は野鳥の森としても愛されている。

photo:コマユミ・戸隠高原
コマユミ

ぬかるんだ道を滑らないように気をつけて歩いていくと天命稲荷の赤い鳥居が見えてくるが、その手前の広場に翁像と嫗像が向かい合って立っている。誰の像なのか、いつ頃建てられたのかわからないが、どこか親しみを覚える二人だ。私たちは三人の翁と嫗になって、はいパチリ。ユーモアあふれるたのちゃんはやっぱり踊ったね。

photo:翁像と嫗像の前で・戸隠高原
三翁踊りて三嫗笑ふ秋の森

photo:紅葉の中の天命稲荷・戸隠高原
紅葉の中の天命稲荷 2021.10.30

赤い鳥居が並ぶ稲荷をすぎると沢沿いの道をしばらく進む。道の脇にはフユノハナワラビがたくさん穂を伸ばしていて、触ると煙のように胞子を飛ばす。春、森を純白に彩っていたケナシヤブデマリの実がわずかに枝先に残って縮んでいる。足元には実が弾けて黒い羽のような種子が見えているが、これは何だろう。後で調べたら、これはコバギボウシ、夏に薄紫の綺麗な花を咲かせる。

photo:実・フッキソウ,マムシグサ,ジャコウソウ,ヒュウガセンキュウ・戸隠高原
探してみると面白い実

photo:フユノハナワラビ・戸隠高原
フユノハナワラビ

photo:コバギボウシ・戸隠高原
コバギボウシ

最後にわずかな急階段を登ると右側に鏡池が広がる。その向こうには戸隠連峰の岸壁。迫力満点だ。残念ながら青空ではないが、雪を乗せ、裾を紅葉で彩られた戸隠の岩峰が鏡池に映っている。きみちゃんが「どうして逆さに写っている景色が喜ばれるんだろう」と呟く。「生命は水の中から始まったと言うから、水を懐かしむ遺伝子が残っているのかも知れないね」などとたわいもない話をしながらしばらく絶景を眺める。何故か、水に映る姿の方が色濃く見えるのもまた興味深い。

photo:鏡池を撮る・戸隠高原
鏡池を撮る

景色を眺め、景色の写真を撮って満足ではあるけれど、やっぱり自分たちの足跡を振り返りたい時もあるから、みんなで一緒に記念撮影。美しい山と、美しい池と、わたくし達。

今年は気温の変化が激しく、寒くなったかと思うと再び暑くなったりしたので、紅葉の華やかさはちょっと不足しているようだ。その年によって違う色合いもまた楽しめば良い。落ち着いた色合いが良いと言う見方もあるだろう。山に雪が乗っていると岩の荒々しさが増して景色に奥行きが出るようにも思える。時は流れ、同じ色も形も二度とあり得ないのだから、今をたっぷり楽しもう。

photo:雪を乗せた西岳と鏡池・戸隠高原
雪を乗せた西岳と鏡池

photo:西岳と鏡池前での集合写真・戸隠高原
全員集合!

しばらく鏡池を眺めていたが、そろそろお昼時だ。お腹も空いてきた。もう一つの楽しみは新蕎麦、お昼時は混むかも知れないときみちゃんが心配している。ここから来た道を引き返して車まで行く予定だったが、きみちゃんは自分の歩くペースが遅いからと思案顔。

私たちはまだ走ったことがなかったが、鏡池までは車の道路も通じている。きみちゃんとたのちゃんにここで待っていてもらって、私たちが車まで行って迎えにくることにした。

photo:新蕎麦ザル蕎麦、天ぷら蕎麦など・戸隠高原
コロナ予防の衝立を挟んで新蕎麦

鏡池から森林植物園の駐車場までタッタカ歩いて約30分。ぬかるみ道を歩いて泥だらけになった靴を履き替えるのにちょっと手間がかかったが、車で鏡池に向かう。この道は短いかと思っていたが、意外と長かった。西岳の岸壁が木々の向こうに見えてきてもう少しで鏡池というところで、向こうから歩いてくる二人連れが見えた。たのちゃんときみちゃんだ。

「待っていられなかったんだ」と夫が笑う。「せっかちだからね」と私。

道の真ん中で二人を拾いUターン、お蕎麦屋さん目指して走る。北アルプスが見えるお蕎麦屋さんで美味しい新蕎麦を堪能し、満足満足。

photo:雪化粧した鹿島槍ヶ岳、五竜岳・戸隠高原豊岡の蕎麦屋さんから
鹿島槍ヶ岳、五竜岳


友人たちが帰ってから5日後、青空が広がった。土曜日だったが、青空の下の鏡池を見てこようと夫が言う。紅葉も、もう少し華やかになっているのではないだろうかと言う。きっと混むだろうから朝一番で行ってこようと、7時半に家を出た。まだ空いているかと思ったが、8時の駐車場は満車に近かった。それでも僅かの空きに車を停め、まずは鏡池へと歩き出す。日の出前の気温の低下で一面霜がおりている。落ち葉を白く縁取る霜はキラキラ輝いているが、太陽光が差し込むと端から洗うように消えていく。お日様は偉大だ。

photo:落ち葉に霜が降り白くなった・戸隠高原
落ち葉に霜 2021.10.30

photo:霜が降り白くなった道・戸隠高原
霜がおりた道 2021.10.30

樹上の霜も溶けて、大粒の水滴が落ちてくる。ポトンと音がするような水滴の中を歩き出す。青空の下の雨みたいだね。

photo:もみじの葉と青空に浮かぶ半月・戸隠高原
月ともみじ 2021.10.30

途中の森は、ずいぶん木の葉が落ちてしまった。風もないのにハラリハラリと葉が舞っている。小鳥が飛び、落ち葉が舞い、森の中に動きがあって目を楽しませてくれる。

鏡池の堰堤にはたくさんの人がいた。車で来る道は一方通行になっているらしいが、満車状態。こんなに人が多いのは初めてだ。コロナで外出ができなかったが、少し下火になってきたので、一気に自然の中に飛び出す人が増えたのだろうか。青空をバックに澄んだ鏡のように山を映している鏡池、人工池とは思えない佇まいだ。

photo:ママハハコ,ムラサキゴケ,クマイザサ,オオカメノキ冬芽・戸隠高原
秋の陽だまりに 2021.10.30

photo:真っ青な空に戸隠山と戸隠を映す鏡池と周囲の紅葉
鏡池の紅葉 2021.10.30

美しい風景を目に焼き付けて、早々に私たちは鏡池を後にした。見たい花があったので、森の中を縦横に行ったり来たり、登ったり降りたりを繰り返しながら歩いたが、見たかった花を見つけることができなかった。また宿題が増えてしまったが、戸隠の森は何回歩いても素晴らしいから、また来よう。

photo:戸隠高原で見つけた木の実・ニシキギ,ツリバナ,ミヤマイボタ,タラノキ
木の実 2021.10.30

photo:スッポンタケ・先端に穴が空いている・戸隠高原
スッポンタケ 2021.10.30

花は見つけられなかったが、暗い森にキョトンと飛び出したスッポンタケを見つけ大喜び。まだ残っていた見事なツリバナの実にも感動。森には歩くたびに発見と感動がある。

みどりが池に戻ったら、たくさんのカメラマンが大きなカメラを据えて同じ方向を向いている。野鳥観察の人たちだ。私たちはシジュウカラやゴジュウカラ、そして大きなカケスしか見えなかったが、カメラマンは何を狙っているのだろう。彼らにもまた違う発見と感動があるのだろう。

photo:野鳥観察の大勢の人々・戸隠高原
野鳥観察の人々 2021.10.30


さぁ、家に帰ろう。車で出発したのはちょうど正午だったが、道路は戸隠に向かう他県ナンバーの車がつながっていた。




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