雪が少なくても底冷えのような寒さはある。3月になって里山にも雪がないのは珍しい。一ヶ月間違えたのではないかと思うほどにポカポカと暖かい日の翌朝、凍えるような寒さに震えたりする。風の強い日も多い。これが今年の3月の始まりだ。
1日)景色はまだ冬枯れの茶色一色の中にシダ類だけが濃い緑で目立っている。そんなことを言うと怒られそうだ、元気な葉の根本にシュンランの花芽が膨らんでいる。日当たりの良い斜面ではカンスゲも花芽を伸ばし始めている。久しぶりに前方後円墳への道をゆく。山頂では風当たりが強かったが、この稜線はポカポカ暖かいのでどっかりと腰を下ろしてほのかな春の空気の中おやつタイムを楽しむ。
2日)昼に用があったので、朝7時半に家を出て一回りしてきた。昨日の今日では発見もあまりないかとサッサッと歩いていたら、小鳥が飛んできて目の上の枝に止まってこちらを見下ろしているようだ。もっとゆっくり周りを見ながら歩いたら?と言われたような気がしたが、ホオジロ君はそんなこと思ってもいないだろう。
4日)ちょっと雨っぽいけどどうしようかと夫。少し待ってみようかと言っているうちに青空が見えてきて、支度を始める。昨日は全国的な雨だったらしいが、今日も崩れ気味。傘をカバンに入れて歩き出すが、歩いているうちに雲は薄くなってきた。それでも時々思い出したようにポツリと落ちてくる。こんなお天気だからか、山には誰もいない。ここ数日の強い風に落ちたか太い枝が所々に転がっているくらい。北の方は降っているのか、山は雲に隠れて見えない。誰にも会わないのも寂しいねと話しながら今日はちょっと「タツネ」に降りてみようと話す。昔の人はここから駒弓神社へお参りしたという参道だ。
5日)さて、行こうかと言うと「えっ、どこへ」「お散歩お散歩」。それでは一緒にと準備を始める夫。いつも同じ道ではつまらないねと、今日は伊勢社周りの道を行くことにしよう。緩やかに登る家家の間の道を歩き、伊勢社からは急な斜面をジグザグに登る。たくさんの木が倒れ、崖土が崩れ落ちてきている。この上は戸隠七曲りに続く車道だ。ふと見ると崖の途中にシュンランが放り出されたように転がっている。太い根は白く乾いたようになってしまっているが、葉はまだ生きているように見える。救出したはいいが、どこへ植えてやろう。悩みながらとりあえずビニール袋に周辺のこぼれた土と落ち葉と水を入れて持つ。
久しぶりに物見岩に立つ頃には青い空が広くなってきた。長野市の向こうに聖山方面の山並みがうっすら見えている。振り返れば大峰山の山頂も見えている。景色を眺めながらおやつを食べる。
山頂への急坂を歩き始めたら、森の中がうっすら白い。昨夜の雨は山では雪だったようだ。山頂もうっすら雪化粧が綺麗だった。
6日)午前中用がある夫を残して、一人歩き始める。いつものりんご畑の道を鳥の声を聞きながらゆっくり歩く。今日は雲ひとつない晴天だ。飛行機が通るが筋を引く飛行機雲は全くない、青空に白い飛行機がポツリと浮いている。山頂から久しぶりに旧道に回ってみる。昨年は熊出没のニュースが多く、旧道にはなかなか行けなかった。熊鈴をガンガン鳴らしながら歩く。この道に見られる花々が元気か気になるところだ。まだ茶色一色だが、サイハイランの葉を見つけて嬉しくなる。
いつも歩かない道巡りと独りごちながら、物見岩から雲上殿へ向かう藪道を歩いて帰った。
9日)朝の日は明るくさしているのに底冷えのする寒さだ。「行ってくるけれど、どうする?」と聞くと「もちろん行くよ」と支度を始める夫。だが、思ったより寒いので、久しぶりに車で駒弓神社の駐車場まで上がる。歩き始めると小さな木に黄色い花が開いているのが見える。ナニワズの雄花だ。関東ではオニシバリ(別名ナツボウズ)が咲くが、そっくりだ。別名ナツボウズと言われるのは夏に葉を落とすからという。冬の森で真っ赤に熟したナニワズを見つけると嬉しくなるが、この実は有毒なので食べてはいけない。
ナニワズの花は黄色が鮮やかだ。生息域が違うから同時に見たことはないけれど、オニシバリはもう少し緑がかった色という。晩秋に友人と三浦半島の里山を歩いた時、オニシバリの蕾があったことを思い出した。もう咲いているだろうか。
暖かい地方に想いを飛ばしながらも、長野の春を待つ山歩きを楽しむこの頃だ。