朝8時、今日こそはと車に乗って出発。体調は回復してきたが、まだ一日のウォーキングには自信がないという夫が車で集合場所まで送ってくれる。夫は森林植物園の駐車場には入らず去っていったが、正解だ。駐車場は満車というより車が溢れている。道路上にも縦に並んで駐車している状態だ。これはきっと野鳥観察だな・・・と思いながら「八十二森のまなびや」に向かう。一週間前に間違えて来てしまったけれど、今日は大丈夫。集合場所に行くと戸隠ボランティアの会の旗が立っている。
今日のガイドはレンジャーさん、そして時々ここ「まなびや」でお会いするカトさんの笑顔も見える。すでに落葉が舞い始めている戸隠の森だが、赤に黄色に色付いている葉も美しい。
中央広場に大きなカメラを設定している人たちに混じってナナカマドの木を見上げる。マミチャジナイという旅鳥が見える。旅の途中で一週間くらい留まる鳥だそうだ。見られる期間が短いので、全国から野鳥好きな人たちが集まるそうだ。ここではもう一種ムギマキという小鳥が有名だという。
マミチャジナイを見上げ、バイバイと言って出発。私たちは越水に向かう。戸隠奥院道を歩き、中社に向かう。夏に友人と来た時はこの道をゆっくり逆コースで歩いたが、今日は午後の雨予報が気になるので、あまりのんびり歩きにはならない。
中社から森の中に入り、小鳥ヶ池に向かう。風がないから水面が鏡のように周辺の木々を映している。空には雲が広がっていて、戸隠山が見えないのが残念だ。
しばらく進むと大きな硯石がでんと横たわっている。石の上に少し窪みがあり、水が溜まる。今は落ち葉がいっぱいで、のぞいても自分の顔が映らないが、鬼女紅葉の手下がここに自分の顔を写してその醜さに驚いて改心したという言い伝えがあるそうだ。
さて、先へ進もう。小さなアップダウンを繰り返して紅葉の中を進む。キノコ採りの若い男女、走っている軽装の人たち、外国からの訪問者などなど、時々すれ違う人たちは様々だ。ヒトツバカエデは明るい黄色に黄葉している。春の山菜として有名なコシアブラは色が抜けて白く変化する面白い木だ。トチノキはみんな同じ茶色に丸まって落ちてくるが、大きなホオノキの葉はすっかり落ちてしまったのや、まだ緑色を残して空に広がっているのや、茶枯れて枝にしがみついているのがある。ホオノキは森を作らずぽつりぽつりと立っているので、それぞれの環境に合わせているのだろうか。
ようやく鏡池に到着、ここでお昼だ。池面は鏡になっていて紅葉と山肌を映しているが、戸隠山の稜線部分は雲に隠れている。今日の雲は厚くなる一方のようだ。斜面の上の方に座ってお昼のパンを齧りながら池の風景を眺める。
食後は鏡池を一回りして森林植物園に戻るコース。池の周遊コースは落ち葉が積もっている。鏡池の奥に差し掛かると、水鳥達がたくさん見えてきた。「あ、オシドリがいますよ」と、鳥に詳しい参加者が双眼鏡を覗きながら言う。水草が浮いたあたりに5、6羽のオシドリが浮かんでいる。すぐカメラを向けるが、遠い。野鳥の人たちのような長〜いレンズをつけなければ美しくは撮れないなぁと思いながら、小さなカメラで数枚シャッターを押す。
この辺りにはセンブリが咲くので、レンジャーさんはセンブリの説明をしている。もう花は終わって、若い実の膨らみが見えている。近くにはゲンノショウコもあり、昔からの民間三大胃腸薬だ。もう一つはドクダミ、これは庭や道端でもたくさん見ることができる。
森の中でイカルやゴジュウカラを見たり、湿原の淵で珍しいと言われるムギマキを見たり、野鳥観察の人たちの動きの後ろから、にわか野鳥観察も楽しめた。
色づいてきた森を歩きながらキノコを見つけたり、草の実のそれぞれの形に感動したりして歩く。最後は茶色くなって地面に倒れて行くのだけれど、実りは来年に子孫を残していく。
草や木は小さくとも実を見せてくれるが、キノコや、粘菌、シダ類などは胞子で増えていくという。裸眼では粉にしか見えないけれど、顕微鏡で見ると違いがあるそうだ。
自然の様々な姿に触れて楽しく歩き、解散場所のみどりが池に着くとポツリと雨が落ちてきた。