戸隠に集まる会合があり、集合場所は飯綱高原森の家。今年はあまり行けなかった大谷地湿原の隣、チャンスだ。用がある夫に遠回りして送ってもらい、約束の時間より2時間ほど早めに到着した。
大谷地湿原はちょうど草刈りをしたばかり、まだ草いきれの匂いがしてきそうな風景だ。このところ雨が多いので、湿原の端を流れる沢水は勢いがいい。まず、中央の遊歩道を湿原の真ん中に向かって少し歩く。正面に見えるはずの飯縄山は雲の中、残念。長野市内は青空が広がっていたのだけれど、山に入るにつれて雲が多くなり、今は全くの灰色一色だ。
戻って、左回りに周回路を行こう。カンボクの実が赤くなっている。刈り払われた草原には残されたオオウバユリが実を膨らませてツンツン立っている。今年はずいぶんたくさん咲いたようだ。蕾の頃に来て、今、実になってからまた来たけれど、花の季節に来ることができなかったのは残念だ。
ケヤマウコギらしい実がゴツゴツあるが、白いのはまだ花なのかな。森の中に入っていくと、木道脇の流れにびっしりとミゾソバの花が揺れている。小さなピンクと白の混じり合った金平糖のような花。いつ見ても可愛いと呟いてしまう。しかし花だけ見るとママコノシリヌグイもミゾソバも区別がつかない。全体の姿と葉が違うから分かるけれど、自然の中にはそっくりさんがいっぱいいて、難しい。
湿原の淵を彩る花々は赤、紫、白と賑やかだ。ツリフネソウはそろそろ終わりなのか、落花が散らばっている。ぐるりと回っていくとキツリフネも咲いている。セリ科の花は大小様々で、しかもみんな似ているから、私にはなかなか特定できない。何度も図鑑を見たり、この地の花情報を見たりしてようやくこれはオオバセンキュウらしいと分かる。
アケボノソウとトリカブトは開いてきたところだ。いつ見てもその造形の美しさに息をのむアケボノソウ。センブリ属の花はみんな繊細な形で、私の好きな花たちだ。
トリカブトはたくさん種類があって分かりにくいものの一つだ。この地に咲くのはツクバトリカブトかな。葉の形、屈毛などを見て、きっとそうだと思ってもやっぱり確信はない。細かく分類されている種は素人には本当に難しい。トリカブトの仲間と覚えておくのが賢いかもしれない。
高く伸びたアザミが倒れそうになって最後の花を開いているが、アザミの仲間もたくさんあって、私には名前がわからないものが多い。立ち姿や葉の形からタチアザミじゃないかと思うが、断定はできない。 ヒトリシズカの葉が森の淵に光っている。ちょっと元気がないのはそろそろ冬支度かな。見上げればミツバウツギの実が膨らんでいる。
森の木や草花は冬に向かって準備をしているのだろう。日中はまだ暑いとはいえ、朝晩はかなり気温が下がる日も増えてきた。木も草もそれぞれの姿で実り、次世代へ命を繋いでいくようだ。緑色だった実が赤に黒に、そして青にと変化してゆく過程も面白い。
木道をぐるっと回っていくと小さな四阿がある。周りには倒木があり、あまりのんびり休めそうなところではないが、豊かな湿原の植物に囲まれていて楽しい。見事なサラシナショウマの群落は東屋の周りにも広がっている。ツリフネソウの赤にキツリフネの黄色も、そして金平糖のようなミゾソバはどこまでも緑の上に散らばっている。
湿原にはあまり目立つキノコはないかと思っていたが、その縁を飾るように様々なキノコが顔を出している。大きなキノコはあまりたくさん見えないが、小さなキノコは色々な形のものがあちらこちらにある。黒くてガサガサした傘のキノコはイグチの仲間か、形はアカイボカサタケそっくりだけれど、綺麗な茶色に光っているキノコもいる。ハリガネオチバタケも顔を出している。傘の色が濃くて赤っぽいのを見つけると、ハナオチバタケではないかと近づいていく。その違いは傘のヒダの数という。16ヒダ以上がハナオチバタケ。今日見つけたのは14ヒダくらいだった。
そして、赤い傘が綺麗なキノコを見つけたので、ドクベニタケかと思ったが、柄を見るとほんのり赤い。ドクベニタケの柄は純白だ。これはニオイコベニタケというらしい。花だけでなく、キノコもそっくりさんがたくさんいるようだ。よく中毒のニュースがあるのはやはりそっくりさんを間違えて食べちゃうからだった。花も楽しみ、キノコも楽しみ、仕事がらみとはいえ、なかなか素敵な大谷地湿原だった。
そうそう、最後に今日のイチオシ、なんとも可愛いタマゴタケに参りました。