あんなに望んでいた雨が、このところ毎日のように降る。植物が生き生きしてきた。駒弓神社から登り始めるとすぐ、ツチグリが何個も転がっている。喜んでいるのは人間と植物だけではない。キノコがあっちにもこっちにもたくさん見える。
ゆっくり登っていく。ヤマハッカの花が増えてきた。たった一週間でも山の様子は変わっている。オケラがいよいよ咲き出した。道の両側に濃いオレンジ色が続いているのはトキイロラッパタケ、今年は多い。他にも名前を知らない小さなキノコが何種類も集まって生えている。どこまでも絶えなく続くのはハリガネオチバタケ。ランプシェードのような形が可愛らしい。「こんなにたくさんランプがあれば夜も歩けるね」などと独り言を呟きながら登る。
パワーポイントの出会いから下の道へ行く。六号古墳に向かっていくと、斜面にさまざまなキノコが出ている。写真を撮っていたら山で時々会う人がやってきた。「今年は美味しそうに見えるキノコが多いですね」と話す。でも、美味しそうにたくさん顔を出しているのはチチアワタケ、昔は食べたそうだが、今は毒ありとされている。
しばらくキノコを見ながら歩いていて、降りていく彼と別れ、私は六号古墳の方に向かう。粘菌も少しずつ動いている。雨のあとはツノホコリが綺麗だ。輝く純白で、新しいのは半透明。自然の姿は本当に美しい。
山頂で、ちょっとだけ青い蜂が来ないか待ってみたが、毎年この頃にはもう見られない。諦めてモウセンゴケ群生地に向かう。センブリの蕾はまだ小さく、ウメバチソウは白い色が見え出したところ。楽しみだが、まだまだだ。
今日は大峰山に登ろうか迷っていたが、町内の用で駆り出された夫が戻るのは午後だから、それまでたっぷり時間がある。足は自然に大峰山に向かう。
いろいろな木の実がそれぞれの色に変わりつつある。ナツハゼは黒く熟して美味しい。時々自然のデザートをいただきながら歩いていると、カエンタケの新しいのが出ていた。ビニールも持っていないので、うっかり駆除できないが、もっと増えるようなら道具を用意してきて駆除したほうがいいのかもしれない。
この季節はつい下を向いて歩くが、いいこともある。大きな木の根元に今日も冬虫夏草を発見した。先日も見つけたカメムシタケ。図鑑には発見しやすいものだと書いてあったが、続けて2度も見つけられるとは、本当にびっくりだ。
オクモミジハグマがあちこちに咲いている。タムラソウもまだ咲いているし、オケラの白が混ざり合ってお花畑になっている。トリアシショウマはすでに茶色の花穂になってしまったが。道に散らばる小さな赤いアオハダの実や、ツリバナの実を見ながら大峰山山頂に到着。自撮りの技術をアップしようと試みるが、なかなかうまくいかない。若い子達はうまいよなぁ。
帰りは来た道を引き返す。地附山山頂への道を分けて物見岩に降りる。善光寺雲上殿方面への道を進み、霊山寺の東に降りる。
途中で移動中らしい粘菌を見つけた。黄色いのは何度か見たが、真っ赤なものもある。粘菌だろうか、帰って夫に見せるのが楽しみだ。
二日経って、夫と山へ向かう。残暑が厳しくなってから体調を崩したり、細々とした用が増えたりして、夫が山へ入るのは久しぶりだ。赤い粘菌の正体を見極めようと張り切っている。
まずは地附山公園駐車場まで車で上がる。連休明けだからか、開園したばかりだからか、広い駐車場には車が一台も見えない。
靴を履き替え、「ゆっくり行こう」と言葉を交わしながら歩き始める。途中小さなキノコや大きなキノコに足を止めながら地附山山頂まで登ると、数ヶ月ぶりに会うスーさんが登ってきた。真夏は畑仕事が忙しかったと言うスーさんと話しながら、30分ほど山頂にいた。
だが青い蜂は現れないので、スーさんと別れて粘菌に会いにいく。黄色いふわふわは少しずつ固まってぶら下がっている、キフシススホコリだ。そして近くにはアオモジホコリの姿も見え出した。大喜びで撮影、でもまだ本番はこの後。
さらにしばらく歩き、先日の赤い粘菌のところへ。あれ、なんだか色が薄いみたい。顔を近づけてよく見ると、赤いポツポツが見える。「アカモジホコリだ」夫の喜ぶ声。
粘菌はもちろん、カエンタケも冬虫夏草も自分の目で見ると感動が違う。カエンタケはそれほど大きくないのに、実物は迫力がある。
頻繁に足を運び、よく知っているつもりの裏山だが、まだまだ発見があることに感動だ。