「今公園入り口に着いたよ。どこにいる?」。私たちは長野電鉄に乗って、信濃松川駅から歩いてきた。タノちゃんキミちゃんは車ですでに到着しているはずだ。今は移動していても携帯電話で連絡を取り合えるからありがたい。
色とりどりのバラの中を歩いてベンチに座っている二人と合流。今年はバラの開花が少し遅めだったそうだが、今が満開。公園内はむせる様な香りに包まれている。
中野市の一本木公園はバラ公園として知られている。この季節になると、公園だけでなく道路脇や民家の庭にもバラの花が開いてくる。そして我が家の庭にも数本のバラが香り出す。冬には凍る様に冷えるこの辺りの気候はバラに適しているそうだ。とは言っても丁寧なケアがなければこれほど見事には育たないだろう。訪れるたびにため息をつく。
さて、合流して園内で購入したという笹餅をいただいて一服。どこから見て回ろうか。まずイングリッシュガーデンの方に行ってみようと歩き出す。少し勾配があるので上から見下ろす様になる。一面のバラが見下ろせるので、私がカメラを構えて仲間を写そうとしていると「全員の写真を撮りましょうか」と女性が声をかけてくれた。カメラを渡して私も並ぶ。パチリ。すかさずタノちゃんが「何枚かシャッター押しといてください」。女性は少しアングルを変えてまたパチリ。歩き始めてすぐに全員の写真が撮れちゃったね。
ゆっくり降りていく。いくつものアーチが設えられていて、バラの花が立体的に見られる。もちろんアーチの下に立てば、バラに囲まれたアングルになる。ここは正式にはバーゴラと呼ぶらしい。何人もの人がアーチの中で写真を撮っている。ここでは遠くからやってきたタノちゃんキミちゃんの写真を撮ろう。
イングリッシュガーデンにはバラの足元にさまざまな花が咲いている。風があるので揺れている様が素敵だ。セージの仲間、ミントの仲間、ケシの仲間、ラムズイヤーなどと指差しながら歩くが正式名称がわかる花は少ない。人の手が作り上げた美しさはこれからもさまざまに変化していくだろう。
ぐるりと回ってバラの真ん中を歩く。ここ数年毎年来ているからどこにどんな種が咲いているかちょっとわかるところもある。緑のバラを見に行こうと夫。その名も「グリーン ローズ」だって。タノちゃんが「えっ、これで咲いてるの?」と言ったけれど、確かに花には見えない様な花だ。でもじっと見ていると、その重なった花びらになんとも言えない奥ゆかしさを感じる。
ゆっくり坂を登って賑やかなバラ祭りの販売店があるところに戻ると北信五岳が見える。遠く霞んでいるが、飯縄山、戸隠山、黒姫山、妙高山そして斑尾山。遠い山並みと目の下に広がるバラの花を眺めてから賑やかな広場に向かう。ちょっと喉も乾いてきたから薔薇ソフトクリームを食べよう。
喉を潤して元気回復、今度はバラのアーチや一本立ちの木が連なっている小道を歩く。木々の足元には名前の札が立ててあるが、とても覚えられない。著名人の名前を冠したものも多いがイメージで名付けたのもあって、本当にたくさんの花がある。一本木公園のパンフレットによると850種ものバラがあるそうだ。
バラの香りに包まれてさらに目を楽しませてから駐車場に向かう。帰りはタノちゃんキミちゃんの車に乗せてもらって我が家へ。夜はゆっくり話の花を咲かせる予定だ。
一本木公園のバラは今が最盛期だが、5月後半に埼玉に出かける用があり、最寄りの駅で降りたら、駅前が見事なバラの広がりになっていた。埼京線、与野本町駅。中野は長野の北部、埼玉の大宮から近い与野本町はかなり南になるから、開花時期は早いのだ。満開のバラが広がる中を歩いてバレエの公演を観に行ってきた。バラの品種はそれほど多くはないが、一面に咲き広がり、アーチ型に囲われたベンチなどもあって、落ち着いた駅前風景だった。
鑑賞したバレエ公演は、カーテンコール撮影OKという。ヨーロッパなどの公演では多いが、日本ではまだ少ない。盛り上がった公演のカーテンコールで撮影ができるのは、バレエファンとしては嬉しい。 見事なパフォーマンスを楽しみ、帰りはちょっと道を間違えてしまったのだが、バラを頼りに駅まで戻った。
中野のバラに囲まれ、その香りに包まれて、素敵なバレエのひとときも思い出していた。