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思い出の鳳凰三山縦走と桃源郷(山梨県)

〜地蔵ヶ岳 2764m、観音岳 2841m、薬師岳 2780m〜

2025年4月8日(火)、1978年7月14日(金)〜16日(日)


photo1乗り鉄旅に出発
乗り鉄旅に出発

山梨に住む友人が「桃の花を見にきませんか」と誘ってくれた。今年は雪が多く、春先に気温が下がったので、例年より開花が遅いかもしれない。花の時期は年毎に違い、花見はその日の天候にも左右されるから事前に計画するのは難しいが、幸い出かけた日は青空が広がった。

鉄ちゃんの夫は長野からの鉄道旅にもワクワクしながら、小淵沢駅まで迎えにきてくれた友人と合流した。

photo2桜の向こうに鳳凰山
桜の向こうに鳳凰山

photo3モモの花に会う
モモの花に会う

目の前に大きな甲斐駒ヶ岳、そしてアサヨ峰から鳳凰山へ続く山並。鳳凰山の真ん中には地蔵ヶ岳のオベリスクがツンと立っている。


私が一人で鳳凰三山(地蔵ヶ岳、観音岳、薬師岳)を縦走したのはもう半世紀も前の話だ。金曜日の夜に新宿発の夜行で出発。近くにいた男性グループは北岳バットレスの登攀を計画していると話していた。私は話を聞きながら目をキラキラさせていたと思う。

迎えてくれたミニバスに乗って御座石鉱泉から歩き始めた。いつものことながら歩き始めはノロノロの私はしんがりあたりを行く。燕頭山(2104m)を越え、ゆっくり歩くうちに一人抜き二人抜き、鳳凰小屋に着いたらその日の3番目ですよと言われた。

photo4地蔵岳のオベリスクで
  地蔵ヶ岳のオベリスクで 1978.7.15

photo5観音岳でご来光
観音岳でご来光 1978.7.16

鳳凰小屋に宿泊手続きを済ませて地蔵岳に向かった。鳳凰小屋の細田倖市さん撮影の写真を見たことがあった私は持っていた本にサインしてもらい、ツーショットの写真を撮ってもらったのに、何回か引越しするうちに無くしてしまったのが残念だ。

それは後の話だが、その日は地蔵ヶ岳の大きなオベリスクに向かう。オベリスクの姿が目の前に立つと、肩の賽の河原はザレた急斜面が続き怖かったのを覚えている。そこで出会った数人の登山者と写真を撮りあって話す。一人の男性が、観音岳からの尾根に黒百合が咲いていたというので、帰りはそっちを回ってみることにした。赤抜沢ノ頭(2750m)を越えると、すぐそこに北岳の雄大な壁が見える。私は電車の中で出会った若者たちが登っている姿を想像し、無事を祈りながら山稜を歩いた。来る時に見たという人も含め、何人かの目で探しながら鳳凰小屋分岐から小屋へ戻ったのだが、その日黒百合は見つけられなかった。

photo6薬師岳山頂で富士山をバックに
薬師岳山頂で富士山をバックに 1978.7.16

翌朝は暗いうちに歩き始め、観音岳でご来光を待った。寒さに震えながら待っていると、鮮やかな日が差し、その光を浴びた瞬間暖かくなる。太陽の凄さを感じたものだ。

太陽の光を満喫した後、観音岳から薬師岳、砂払岳(2740m)、苺平(2515m)、山火事の跡を見て、杖立峠(2184m)、夜叉神峠(1770m)と歩き続けて、南アルプススーパー林道に降りた。

photo7懐かしい御座石鉱泉登山口
懐かしい御座石鉱泉登山口 2014.11.5

途中で出会い、話が合って何となく一緒に歩いた数人は、いつの間にか旧知の仲間のようにともに下山した。そして車で来ているという男性の言葉に甘え、みんなで夜叉神峠の登山口から同乗させてもらった。私は男性の最寄りだという小田原駅まで乗せてもらって帰り道はずいぶん楽だった。

半世紀も前の懐かしい単独登山の思い出だ。その後一度夫とキミちゃんと一緒に御座石鉱泉の登山口を訪ねたことがあるけれど、思い出はほんのりとセピア色だ。


今日は友人たちと山梨の桃源郷を訪ねる。行き先はもちろん山梨県民の友人にお任せ。南アルプス市の桃源郷に行こうと、車を回してくれた。ちょうどランチタイムになるので、花見のピクニックとばかり食料を買い込んで出かけたが、標高を上げていくと桃の花はまだ5部咲き3部咲き。白いスモモの花が満開だが、濃いピンクの桃の花はその間に申し訳なさそうに開き始めているばかり。ところどころ満開に近い花畑を見つけると、車を停めて「わぁ〜」と歓声を上げる。上からピンク一色の花を見下ろそうという計画だったが、今年はやはり少し遅めだったか。

photo8スモモが満開
スモモが満開

photo9モモの花
モモの花

photo10スモモも桜も満開だ
スモモも桜も満開だ

photo11モモと富士山
モモと富士山

気を取り直して、森の中にある深い碧色の湖を見に行こう、そしてそこでランチを食べようと、さらに車は標高を上げていく。

photo12県民の森でランチ
県民の森でランチ

深い針葉樹の森の向こうに突然深い碧色に輝く湖面が見えた。思わず息を呑む。最初の菖蒲湖を越えると南伊奈ヶ湖、その上にいくつかの施設に囲まれた駐車場があった。櫛形山の入り口にある県民の森だ。緑の広場には木のテーブルがいくつかあったので、私たちはそこでランチタイムを楽しむことにした。久しぶりに暖かくなった春の空の下でのんびり食べるランチはやはり格別だ。

photo13県民の森の昆虫ホテル
県民の森の昆虫ホテル

photo14香り高いヒノキの森
香り高いヒノキの森

ヒノキの森を下っていくと北伊奈ヶ湖というのもあるそうだからと歩いてみた。鬱蒼とした森の中には大木が切り倒されていて、その切り口からは素晴らしい自然のアロマが広がっている。アシビの花が揺れているのを見たり、はるか下に揺らぐ北伊奈ヶ湖の湖面を眺めたりしてから、車に戻る。帰る前に深い碧を近くに見ようと南伊奈ヶ湖に近づくと、コブハクチョウが滑るように近づいてきた。タノちゃんがパン切れを少し分けてあげると上手にパクリと食べる。人懐こいコブハクチョウはしばらく私たちの近くに浮いていた。

photo15アセビ
アセビ

photo16キブシ
キブシ

photo17碧美しい南伊奈ケ湖
碧美しい南伊奈ケ湖

photo18南伊奈ヶ湖のコブハクチョウと
南伊奈ヶ湖のコブハクチョウと

桃源郷の桃の花は少し早かったけれど、友人の家に向かって標高を下げていくと、一面に濃いピンクの花が広がっている。今年はまだ低いところが綺麗なんだねと、歓声を上げる。花の向こうには富士も綺麗に見えている。

photo19桃畑と富士山
桃畑と富士山

タノちゃんが急に「へそを見に行こう」と言う。「へそ?」、この近くに「日本列島のへそ」という場所があるそうだ。細い道を幾度か曲がり、桃畑の間を進むと『へそ』はあった。

小さな標柱が立っている。日本地図にこの場所の印が描いてある。何だか楽しくなってくるね、私たち、へそに立っているんだ。

photo20日本列島のへそです
日本列島のへそです

そこからは右に左に満開の桃、桜を見ながら友人の家に向かう。今日の暖かさで一気に開いたのか、朝出発する時よりも花色が濃いように思う。

photo22広い桃畑で
広い桃畑で

photo23花の中に遊ぶ
花の中に遊ぶ

この季節になると思わぬところにほのかな赤を交えた白い花霞が見られ、「ああ、こんなところにも桜」と驚くことが多い。他の季節には静かに木々の間に身を隠していて、今ここ!とばかりに鮮やかに華やかにその存在を主張する。遠くは山の斜面にほんわかと浮かぶ山桜、近くは川沿いに、神社や寺の境内に、密集する大木のソメイヨシノか。

photo21天然記念物山高神代桜
天然記念物山高神代桜

友人の家に向かって走る車の中から桜見物。遠近の桜はもちろん、『わに塚の桜』、『山高神代桜』などの有名な名木も満開になっている。山高神代桜は天然記念物に指定され、日本三大桜(福島県の三春滝桜、岐阜県の根尾谷淡墨桜とともに)の一つなのだそうだ。

モモの濃い赤、桜の淡い赤、スモモの白、色とりどりの花の中を走って友人の家に到着。待っていた猫のな〜ちゃんと花見の後の宴に時を忘れた。

photo24花見の後の宴
花見の後の宴




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