久しぶりに会う友人とはつい話が弾む。前日は遅くまで話に花が咲いた。翌朝、青空が広がっている。散歩日和ではないか。タノちゃんが「やっぱり鏡池ですかね」と笑う。数日前に紅葉の始まりを見たが、山には雲がかかっていた。今日は戸隠の山々が見えるだろう。
先日混み合っていて、駐車場にもなかなか入れなかったのに懲りもせず、「平日だから大丈夫だろう」と、ゆっくり朝ごはんを食べてからタノちゃん運転の車に乗った。
車は宝光社まで進み、鏡池への道を通り過ぎる。「こっちからの一方通行ではないかしら」と呟く私の言葉を笑うように、細い道から車が出てきたから。あれ、逆の一方通行かしら・・・と先へ進んだが、鏡池へ入る道には無情にも侵入禁止の標識が立っていた。
仕方なくUターンして、再び宝光社の下から細い道に入る。森の中を走る道は狭いうえ、側溝があるので、すれ違うのは難しい。一方通行がありがたい。
しばらく走って鏡池に到着。やっぱり・・・、手前の駐車場入り口には車が並んでいるようだ。待つしかないと思ったが、前方奥の駐車スペースから車が一台出ていく。タノちゃんがすかさずそこへ車を停める。ラッキー。
聳えるように大きく戸隠連峰の峰々。山肌には彩り豊かな秋の木の葉。ここから見下ろすと、鏡池にはわずかに漣が立っているようだけれど。
目の前の山を眺めながらゆっくり鏡池へ降りていく。鏡池の堰堤には人がたくさんいて、皆紅葉の戸隠山を見上げている。近づいていくと、湖面には山が映っている。まさに鏡だねぇと、感動して眺めていると、また漣が動く。時々風に揺らされながらも水面には見事な戸隠山の錦絵が浮かぶ。
しばらく山を眺め、さてどうしようかと顔を見合わせる。足を痛めてから段差のある道は難しいというキミちゃんだが、池のほとりを一周するコースはどうだろう。緩やかな登りがあるけれど、幅も広くて比較的歩きやすい道だよと勧める私に引っ張られて、池巡りのコースを歩いてみることになった。
森の中の道は一面に落ち葉が敷き詰められ、ふかふかしている。まだ緑の楓も美しいけれど、白いホオノキの葉、真っ赤な丸い葉、黄色いのはダンコウバイか、それぞれの色と形にハラリと舞う。
緩やかに登って池を見下ろすと、対岸の山々の紅葉も美しい。そして、木々の隙間から見える水面には見事な逆さ森。美しい木々の枝が水上にくっきり映っている。そして、池の中央にはたくさんの水鳥が浮かんでいる。時々水鳥の声が響くと、タノちゃんがあれはカイツブリなどと教えてくれる。
水面を見下ろすのはもちろん素晴らしいが、足元の斜面にはツルシキミの赤い実が光り、ユキザサの実もポツリと赤い。
前にセンブリが咲いていたけれど、もう終わったかなぁと話しながら道端を見ていくと、花はほとんど終わっているが、わずかに一輪咲き残っていた。その細いセンブリの葉をちょっぴり齧り、「にがいっ」と叫ぶのはタノちゃん。私も一つ齧ったけれど、すまし顔!でも本当にセンブリは苦いよ。
池の奥にまわっていくと道は少しずつ上ったり下ったりする。だが、ゆっくり歩いているので、キミちゃんも大丈夫と言う。枯れ木にポコポコ生えたキノコや、童話の世界のように可愛いベニテングタケなどを見つけては覗き込み、歓声を上げている。湿ったところに降りると細い木道が敷かれているが、苔が生え傾いているのもある。沢を渡る木の橋には特大の穴が空いている。よそ見をしていたら川に落ちそうな大きな穴だ。
タノちゃんは先導して、「ここの木道はグラグラしているよ」などと知らせながら進んでいく。なんとか一周して、随神門からの道と合流した。ここからは沢沿いに進んで鏡池に戻る。
「あ、イワナがいるよ」と、タノちゃん。大きいのはサッと石の影に隠れたけれど、小さいのが水に逆らうようにヒレを動かして川上に向かってじっとしている。みんなで魚見物をしてから鏡池に戻った。
綺麗な青空だったが、少し雲が出てきたようだ。お天気は降り気味との予報、晴れ男のタノちゃん効果か、青空が見えてよかったね。
さて、戸隠といえば美味しい蕎麦。車に乗って、一方通行を進み、中社の上に出る。しばらく走って目当ての蕎麦屋さんの前に着く。駐車場がいっぱいだねと言いながら見ていると、一台動き始めた。あの車出ていくみたいだよ、ラッキー。すかさずそこに停めて、美味しい戸隠そばにありつけた。
さらに、蕎麦ソフトもいただいて、贅沢な戸隠の散歩となった。