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霧立ち込める旭山 1524m(長野県)

2024年8月17日(土)


志賀高原旭山地図:志賀高原旭山

久しぶりに山へ行こうと早めに家を出た。何しろ猛暑が続く中、涼しいのはやはり標高の高いところだろうと、志賀高原に向かった。数日用があって山道を歩いていないから、足慣らしも兼ねてゆっくり歩ける山へと志賀に決めたのだが、天気予報とは裏腹に雲に覆われている。それでも、だんだん雲が上がっていくようだから行ってみようかとR292を進む。

深い霧の一沼:志賀高原旭山
深い霧の一沼

だが、登るに連れ霧が濃くなって、数メートル先が見えない。これでは危険と、琵琶池の広い駐車場に車を停め降りてみた。漂う霧は一向に晴れそうにないので、どうしようかと顔を見合わせる。

せっかくここまで来たのだから、今日は旭山をのんびり歩いて帰ろうか。旭山なら霧が濃くても歩けるだろう。

山道で目を楽しませてくれる

ツルリンドウ :志賀高原旭山
ツルリンドウ

ツリガネニンジン:志賀高原旭山
ツリガネニンジン

アザミ仲間:志賀高原旭山
アザミ仲間

ヤマハギ:志賀高原旭山
ヤマハギ

靴を履き替えてまず一沼に行ってみるが、池の上は真っ白。すぐそこのスイレンがヴェールの向こうにあるようだ。山道に入ると、ツルリンドウや、ツリガネニンジンなど晩夏の花が迎えてくれる。道の両脇にホツツジが満開で、わずかな風に揺れている。背丈ほどのホツツジを愛でながら登っていくと暗い森になる。森の下にはヒカゲノカズラが這い広がって、フォークのような胞子嚢穂を立てている。

ホツツジが満開:志賀高原旭山
ホツツジが満開

歩いているとキノコの匂いがする。登山道の脇にはササや下草を伐採した様子の手入れされた広がりがあり、ポコポコとキノコが生えている。もう少し後になれば可愛いベニテングタケが出てくるのだが、まだその姿は見えない。ふと足元を見ると赤茶色の艶のあるキノコ、手に取ってみたら、割れ目から白い液体がにじんできた。「あ、チチタケ」。キノコの種類は多くて、なかなか名前がわからないが、その完成された姿が魅力的でつい写真を撮ったり、手に取ったりしてしまう。キノコは胞子を飛ばすために地上に出てきた花のようなものだから、成長したのは手に取って裏を見せてもらっても大丈夫ねと言い訳をしている。観察した後はあった場所にそっと置いて「胞子を飛ばしてね」と話してくる。

ヒカゲノカズラ:志賀高原旭山
森の中は一面ヒカゲノカズラ

幻想的な霧の森:志賀高原旭山
幻想的な霧の森

霧は晴れたりまた濃くなったりしていて、なかなか幻想的な世界を醸し出している。キノコは圧倒的に名前のわからないものばかりだが、ところどころにイチヤクソウが見える。すでに花が終わって、実が膨らんでいる。そしてウメガサソウの若い実も見つけた。我が家から一番近い里山にたくさん自生する花だが、志賀の山で会えるとは嬉しいことだ。

花の終わりを見ながら:志賀高原旭山
花の終わりを見ながら


存在感のあるキノコ

チチタケ:志賀高原旭山
チチタケ

ドクベニタケ:志賀高原旭山
ドクベニタケ

イグチの仲間か:志賀高原旭山
イグチの仲間か

アカヤマドリ:志賀高原旭山
アカヤマドリ

これもキノコの仲間

ベニナギナタタケ:志賀高原旭山
ベニナギナタタケ

ナギナタタケ:志賀高原旭山
ナギナタタケ

ニカワホウキタケ:志賀高原旭山
ニカワホウキタケ

アンズタケ:志賀高原旭山
アンズタケ

キノコを撮影:志賀高原旭山
キノコを撮影

さらに朽ちかけた白樺の倒木に粘菌を発見した。雨に打たれたところは崩れかけていたが、木の下側に発生していたものは美しい姿を保っている。ツノホコリは数種類が混生している様子、しかもキフシススホコリの変形体らしい黄色い膜の中に顔を出しているものもある。ツヤエリホコリは銀色に光っていて、まだ薄く剥がれる前の姿を見ることができた。全長が1mmほどの粘菌だが、胞子嚢の表面が銀箔を剥がすように輝きながら剥がれてくる粘菌だ。

粘菌にも会えた

キフシススホコリ:志賀高原旭山
キフシススホコリ

ツヤエリホコリ:志賀高原旭山
ツヤエリホコリ

ツノホコリ:志賀高原旭山
ツノホコリ

エダナシツノホコリ:志賀高原旭山
エダナシツノホコリ

キノコを見たり、粘菌を探したりしながら歩くうちに山頂に到着。木々の間を縫って少し歩くと下に琵琶池が見える。時々霧が流れる水面には何艘かの小さな船が浮かんでいる。

今日はのんびり登山なので、山頂で少し早いおにぎりタイムにしてゆっくり過ごす。登りで汗をかいた夫は「寒いくらいだ」と呟く。「涼しいところに行こうと言って出掛けてきたのだから満足でしょう」と、私が言う。

旭山山頂も霧の中:志賀高原旭山
旭山山頂1524mも霧の中

山頂から琵琶池を見下ろす:志賀高原旭山
山頂から琵琶池を見下ろす

山頂付近にはヤマホタルブクロやヒヨドリバナが群生している。名前がわからないぺったんこの黒いキノコや、薄茶色の手のひらより大きなキノコなども見える。黒いぶつぶつの傘のキノコも発見、これはオニイグチではないか。見かけは悪いけれど、確か食べられるキノコだった。途中大きなアカヤマドリも見つけたが、これも食用になる。その脇に転がっていた傘と柄が離れてしまったのも、ずっしりして美味しそうに見えたが・・・。

ヤマホタルブクロがいっぱい:志賀高原旭山
ヤマホタルブクロがいっぱい

オニイグチと思われる:志賀高原旭山
オニイグチと思われる

山頂でたっぷり時間を過ごしたので、またゆっくり森を楽しみながら降ろう。霧に濡れてシラタマノキの実が光っている。途中の森には見えないけれど、登り始めと山頂部には広がっている。白く、ちょっと歪な形が妙に可愛い実だ。樹上にもさまざまな色の実があり、山は秋の気配が濃くなっていることを感じる。

木々の実り

シラタマノキ:志賀高原旭山
シラタマノキ

ムシカリ:志賀高原旭山
ムシカリ

ウワミズザクラ:志賀高原旭山
ウワミズザクラ

ヤマウルシ:志賀高原旭山
ヤマウルシ

志賀山あたりには岩と木の巨大なモニュメントのような姿が見られるが、旭山にも岩を抱いた木が見られる。まだ幼木が大きな岩の上にすっくと立っているのを見つけた。ここから根を伸ばし、この大岩を抱いて大きくなれるのだろうか。厳しい自然に負けるなと、心の中で声援を送りながらゆっくり降った。

岩から生える木:志賀高原旭山
岩から生える木




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