猛暑になっても雨が多く、激しい雷雨も何度かあった。夏に入って所用が重なり、なかなか山へ行けない。少しの時間を見つけて何度か裏山に出かけたが、さすがにキノコは腐りかけたものが多くなっていた。秋の花がちらほら咲き始め、木の実が膨らんできたのも面白い。
昨年地附山でユウスゲの花を見そびれたので今年こそはと思っていた。昨年見つけたユウスゲの花は4株。だが、今年はどの株も花穂をつけていない。ようやく一株見つけたのは硬い蕾、それでも小さな蕾が数個ついていたので、一つくらいは花を見ることができるだろう。そして日を置いて朝早めに行ってみたら、今度はたった一つの蕾になっていた。その翌日期待を込めて朝行ってみたが、すこし膨らんでいるだけ。夕方には開くのかもしれないが用があって来られない。今年も地附山のユウスゲに会えないけれど、また一年楽しみが続くと思うことにしよう。来年は何株蕾をつけてくれるだろうか。
公園が開く前に登る駒弓神社からの登山道は愛護会の人たちが整備したのか、今年は歩きやすい道になっている。キキョウ、ママコナ、マツムシソウなど華やかな色の花が開いてきた。花に釣られて虫たちも集まってくる。そろそろ青い蜂が活動を始めるのではないかと20分ほど待ってみたが、現れなかった。
梢で鳴いている鳥も暑そうに見えてしまうが、彼らは彼らの心地よい場所を求めて移動しているのかもしれない。時々見かけるアサギマダラも海を越えて飛んでくるというから何だか感動してしまう。
町はかなり気温が上がっているようだが、森の中には爽やかな風が吹くのがありがたい。だが、先日の激しい雷雨の影響か、大きな松が倒れ、道を塞いでいるところもあった。
ゆっくり一回りして、粘菌を見つけるたびに立ち止まり、しゃがみ、ルーペでのぞいたり、カメラを向けたりしながら進む。いつも純白で目を惹かれるツノホコリが、ハート型になって発生しているのを見つけて大喜び。白いマメホコリも見つけたが、これはチチマメホコリではないかと夫がつぶやく。雨が多かったせいか、至る所に小さな粘菌が発生している。クモノスホコリは倒木一面に広がり、すでに胞子を飛ばしているのも多い。胞子を飛ばした後はスカスカになって、なるほど蜘蛛の巣の名前がここからきたと頷ける。
暑い夏は公園が開くのを待つより涼しい朝のうちに登る方が良いと考える人が多いようで、登っていくと降りてくる人に何人もすれ違う。
ところが夫に用がある朝、一人で久しぶりに物見岩から歩いてみたが、誰にも会わない。今年はこのコースのウメガサソウを見ることができなかったので、花の跡でも良いからじっくり見ようと思ってきた。
このコースのウメガサソウはまとまってたくさん咲くので、毎年花開く時を楽しみにしている。だが今年5月初め、花の前に登った時にその株が見当たらなかった。花にはまだ早いから見落としたのかもしれない、花咲く頃にまた来ようと思っていたが、花の季節にはここに来ることができなかった。
そして今度はゆっくりじっくり見ながら歩いた。やっぱり無い。何度か見直したけれど、小さなウメガサソウが一輪咲いたのか、茶色い実が一個ついていただけ。大きな株の端の方にあったものかもしれない。これはやはり盗掘にあってしまったのか。とても残念だ。知人がネット販売に長野発で売り出しが出ていたと話していた。「ウメガサソウは移植を嫌うから、買ってもなかなか育てられないだろうに、盗掘してまで売る人はそんなことはどうでも良いのだろう」と嘆いていた。地附山はウメガサソウが咲く山として人気が高い山だ。その花が心無い人の手で消えていくのはとても悲しい。
他の花も見てみようと、いくつかのコースを往復して歩いた。地附山ではあまり見ないタケニグサが大きな木の間に、背比べをするようにツンと高く立っている。優しそうな形の大きな葉が特徴だ。花の穂は下から順番に糸を集めたように開いて先端へ登っていく。
また少し歩くとオニドコロが木の幹を登って小さな花穂を垂らしていたり、ミズタマソウが小さな小さな白い花と、緑の毛玉を輝かせていたり、道端の花からも目が離せない。
これらの花は、山の中の道沿いにたくさん見られるうえにあまり目立たない花なので、ただの草という扱われ方をしているようだ。
どの花もそれぞれに美しいが、繁殖しにくいもの、環境が少なくなってきているもの、人の手で何かできるなら絶やさない方法を探っていきたいものだと思う。盗掘など言語道断!