とうとう梅雨入りしたらしい。雨が少ないと農作物はもちろん、山の木々も勢いがなくなる。今年は雪が少なかったので、早くから水不足の声が聞こえていた。最近は適度に降るということがなく、降ると一気に豪雨になる。少しずつ湿り気をもたらしてくれると良いのだが。
この季節になるとウメガサソウを見に出かけたくなる。地附山には自生するウメガサソウが多い。だが、年によって開花状況は変わる。今年は少ない気がする。ウメガサソウが満開になってくると、時期をちょっとずらしてモウセンゴケの純白の花が下から順番に開いてくる。小さく並んだ蕾が一気に開くことはないのが控えめだが、みんな開けば綺麗なのに・・・などと、自然界の仕組みなど知らない私は思ってしまう。受粉の不思議は調べてみるとさまざまな植物に工夫が見られるから、モウセンゴケにも理由があるのだろう。稀に2輪並んで開いているのを見つけると嬉しくなる。
地附山は一時公園として開かれた空間だったそうだから、人の手もずいぶん入っているのだろう。そのせいかわからないが、植物種は多い。中には外来種もあるが、コースを変えると咲く花も変わり、なかなか楽しめる山だ。
梅雨の走りか、雨が増えてきたら、斜面にシャクジョウソウが顔を出してきた。地附山にはシャクジョウソウが咲く場所が何ヶ所かあるが、ギンリョウソウは見えない。同じような葉緑素を持たない腐生植物だと思うけれど、何か咲く場所を選ぶ根拠があるのか。
クモキリソウも綺麗な明るい緑の葉を広げている。花も葉と同じような色で目立たないが、満開だ。
どのコースにどんな花が咲くかは歩いてみてのお楽しみ。びっくりするほど種類は多い。最近増えてきたウツボグサはどのコースを歩いても見られるようになった。濃い紫が目を惹く。ヒメジョオンや、シロツメクサ、アカツメクサなどは見向きもされないが、見事な造形だと思う。つい珍しいものに目がいくが、どこにでもあるものが素敵なこともある。
6月の後半になると木の実が膨らんでくる。森の生き物にとっては喜びの季節が始まるだろうか。桜の実、桑の実、木苺の実などは歩くたびにちょっとつまむ。ナツハゼ、ナツグミはこれからか。食べられない実ももちろん見て楽しむことができる。
キブシ、カエデ類、ダンコウバイなどが膨らんできた。ガマズミの仲間はキラキラ光っている。これからさらに膨らんで真っ赤になる。
そして、粘菌。ようやく動き始めた粘菌を追いかけて、山道を歩く。腐りかけた倒木の影を覗きながら歩くから、道無き道を分け入ることも多い。
まだまだ種類は少ないし、とっても小さいのが多くて撮影が難しいが、発見の楽しみは大きい。変化が早いので、うっかりしていると胞子を飛ばしてしまって、倒木と一体化したような姿になり、なかなか見つからない。
25日は私に一日出かける用があり、一人で登った夫が新発見をしたという。次は一緒に行って教えてもらおう。フサホコリという粘菌は紺色で小さく、よく見つけたと感心する。
我が家から最も近い地附山、中腹の公園には広い駐車場もあるからちょっと疲れていても、お天気が心配でも出かけることができる。公園のシンボルのようなポプラの木が昨年枯れて伐採され、遠くから見る目印がなくなったのが残念だ。豊かな樹木の森には花やキノコが多いのはもちろんだが、昆虫たちも、そして鳥たちも集まってくる。そしてその豊かな自然を求めて私たち人間もたくさん訪れる。最近では自然の爽やかな空気の中を走るトレイルランニングの人も多い。
さて、まだまだ初夏の花たち全てに会えていない。今年はネジキの純白の花に会えないうちに咲き終わってしまった。コースをちょっと変えればきっと咲いていたのに・・・。ハッと気がついた時には花は茶色く枯れてしまっていた。豊かなコースがあり、それぞれに咲く花があるということは、一方で見逃してしまうということもあるわけだ。今年会えなかった花にはまた来年会えるだろうか・・・。