ようやくポカポカと暖かい日が増えてきた。桜の蕾も膨らんできたようだ。3月中旬になって積もるような重い雪が何回か降ったためか、春は少しばかり足止めをされたようだったが・・・。
南の方へ行けば少しは花も見られるだろうかと、上田近くの和合城跡(城ノ山)に向かった。最近乗り鉄ミニ登山にハマり気味。私が若い頃は東京を起点にアルプスや東北の山へと全て乗り鉄登山だった。車は重い荷物を持たずに家から登山口まで行けるからとても便利だ。だが、運転をしていると風景を眺めることもできないから、バスや電車の車窓を楽しめる乗り鉄登山の魅力は捨てがたい。
さて、長野駅からしなの鉄道に乗って、西上田駅で降りる。途中の車窓から登ったことのある山々を数える。これから登る和合城跡も見上げる。千曲川が削ったのか垂直の壁がドーンと立っている。車窓からでは上まで見上げるのが難しいほどの高さだ。
西上田駅から国道18号線沿いに少し戻る。国道に沿うように川も流れているが、この川、見下ろすと真ん中で二つに区切られて2本の流れになり、それぞれの水面の高さが違う。来たところも行くところも違うのだろうか。
下塩尻登山口から登り始める。堰堤が何段にも築かれている乾いた谷の脇から一気に急坂を登り始める。靴が隠れるほどの落ち葉の堆積で、山道がどこかわからないくらいだ。急な山の斜面には葉を落とした木々が遠くまで続いている。葉がないから、見通しが良い。
大きなカシワやクヌギなどの葉が茶色い海のように波打ってどこまでも広がっている様子はなかなか気持ち良い。イノシシが食べ物を探して動いたあとか、時々大波のようにうねって盛り上がっているところもある。
足元に巨大な豆の莢がたくさん落ちている。これはサイカチの木の実。気をつけて見ると、山道の脇に大きなトゲを持ったサイカチの木が立っている。
登るにつれ、斜面のあちらこちらに積み上げられた石垣が現れる。城跡とはいえ、中腹のまだ低い斜面のあっちにもこっちにも石垣を組んであるのは見たことがないと思っていたが、これは畑のあとらしい。麓に栄えた養蚕のための桑畑が広がっていたのだという。そうか、それで森には巨木がなく、比較的明るいのだと納得。石垣の脇には背の低いコクサギの木が続いているところもあった。丸い実が殻になってくっついているのを見ながら行くと、まだ中に種を隠しているのもあった。
厚く積もった落ち葉の中からはスミレやイチヤクソウなどの葉が見えていたが、花は全く見当たらない。麓の道端には春の花がたくさん咲き出していたが、山はもう少し後になるようだ。
茶色一色の中を登り詰めて稜線に出ると、狭い稜線の向こうは坂城町鼠宿からの登山道。私たちは左に、稜線の先端に向かっていく。堀切を越すとちょっと広くなったところに出る。ここは四の郭、順番に三、二と登って本郭に至ると、図入り説明板が立っている。稜線の先端なので、細長い。本郭の先は一気に切れ落ちている。
先端に立つと視界が開けて、上田方面から坂城方面に向かって流れる千曲川を真ん中に街が開けているのが見下ろせる。まだ11時前だけれど、お煎餅でも齧りながらのんびり見晴らしを楽しもうかと思ったが、だんだん雲が厚くかぶさってきたうえに風が冷たい。一つ降り二つ降り、木に囲まれた四の廓の倒木に腰を下ろしておやつタイムとする。持ってきた煎餅の袋がパンパンに膨らんでいる。さほど登ったとも思えないけれど、気圧が低いのだろうか。煎餅を食べながらふと腰かけている倒木を見ると、そこに粘菌の姿が。慌ててしゃがみ込んで見る。そこには粘菌が活動した痕跡がたくさん残っている。もう少し暖かくなってくると再び活発に動き始めるのだろう。毛糸のような細毛体もたくさん見えている。