神奈川に住んでいた頃はちょっと時間が見つかると丹沢の裾野を歩いていた。ふと見つかった時間を楽しく歩くことに使いたいと思っていた。
冬の休日といえば、スキーを担いで、渋滞の中を北へ向かったのは若い頃で、だんだんゆっくり山道を歩く方向へ変化してきた。そして、リタイア後は長野へ引っ越しすることを決めてからは長野への家探しの旅も加わり、ちょっと見つかった時間の山歩きはとても嬉しいものだった。
前年(2010年2月7日)友人に勧められて七沢森林公園を歩いてみたら、もっと自然の色濃い道を歩きたくなったのはこちらの勝手な思い。
七沢森林公園は丹沢山塊の東山麓にあり、里山をそのまま公園に整備した県立公園。広さは65ヘクタールもあるそうで、コースは里山を歩いているようだ。ながめの丘と名付けられた高台は標高183m、なかなか見晴らしが良い。東京横浜のビル群がよく見えた。麓の厚木市には仕事で何度も出かけていたので、里山のような自然という言葉に惹かれて気軽に出かけたのだ。
だが、やはり囲われた自然はどこか満足感が少ない気がした。花の季節に行ってみればまた違うのかもしれないが。
その後同じ県立の秦野戸川公園にも行ってみた(2010年6月13日)。ここには孫が小さい頃時々家族で出掛けていたそうだ。傾斜地があり山道も歩けるというので行ってみたのだ。風の吊り橋を渡って自然観察の森を登ってみた(最高地点340m)。広さは36ヘクタール、自然の中で走り回れるし、中央に流れる水無川で水遊びができるのが孫たちには嬉しかったようだ。
丹沢大倉尾根の登山口とあって山の空気は素晴らしいが、公園を歩いているともっと深く山へ入りたくなって困る。
時間があまりなくても行ける山を探し、宮ヶ瀬ダムの奥の南山に出かけたのは山麓の公園を歩いた翌年の3月。厚木から国道412号を走り、宮ヶ瀬湖まで行く。ダムの南をぐるりと回って宮ヶ瀬湖畔園地を通り、鳥居原園地まで、複雑な形の宮ヶ瀬湖を橋で渡りながら進んでいく。
宮ヶ瀬湖畔園地には大きなもみの木があり、クリスマスの頃はイルミネーションが美しいそうだ。息子たちは何回か見に来たそうだが、私たちは夜のお出かけは苦手だ。
鳥居原園地に車を停めて歩き始める。少し湖のほとりを歩くと道標があり、登山道に入る。いきなり急な狭い階段が続いていてびっくりするが、道は森の中にゆっくり登っていく。登山口の階段を登り始めたのは10時55分とメモにある。家を出たのは9時前だったから2時間近くかかってしまった。
森の中を登っていく。大きな木が茂る森の中は面白い。針葉樹の森は暗いが、すっくと伸びた幹が気持ち良い。落葉樹の森の中は冬も明るく、見通しも良くなる。それぞれの木の枝ぶりを楽しんで歩き、時には木登りもできる。
権現平展望台に着いたのはちょうど正午だった。広く手入れされ、見晴らし場には階段状の木の広場があって、宮ヶ瀬湖が見下ろせる。雄大な景色だ。仏果山の尾根が湖に張り出しているのがよくわかる。
お腹も空いたし、気持ち良い広い空間なので、ここでお昼を食べよう。
景色を眺めながらお昼を食べ、南山に向かう。権現平には三角点(568.5m)があり、標高は南山より高いのだが、南山山頂はもう少し先になる。
20分ほども歩くと南山山頂に到着。
薄雲が遊んでいるが、眼下の宮ヶ瀬湖は綺麗なブルーに輝いている。丹沢山塊を流れる水は青色が濃いと聞くが、その水を集めた宮ヶ瀬湖も綺麗な青だ。
山頂からは丹沢主脈の稜線がすぐそこに見える。塔の岳も蛭ヶ岳も山頂を踏んでいないが、真ん中の丹沢山には登った。ブナの森を抱える深い山だ。左に目を移せば大山が『山』の字の形に見えている。
眺めを楽しんでいるうちに雲が広がってきたので降ろう。もう一度権現平展望台を通って降る。宮ヶ瀬湖のほとりに建つ鳥居原ふれあいの館でちょっと買い物をしてから、車に乗る。帰りは橋を通らず湖のほとりの道を一周りするように進んで、国道129号に出て帰った。
3時に鳥居原園地を出発して家に着いたのは4時、帰りは早かった。