日本海沿岸や東北地方は大雪のニュース、長野にも雪がやってきた。東京方面に往復したり、泊まったり、新幹線の遅れを気にしながらの慌ただしさだったが、ようやく一息ついた。最新の技術力なのか、新幹線も大きな遅れはなく運行していた。年内にもう一回往復する予定だが、しばらくじっくり山歩きをしていないので足が鈍っている。「散歩に行ってこよう」と夫、彼もやっぱり土の上を歩きたいらしい。
地附山公園は冬季閉園中なので、駒弓神社コースの駐車場に車を停める。今日は青空が綺麗だが、日陰には白いものが残っている。木の葉がすっかり落ちた森には小鳥たちが舞い飛ぶ姿が見える。カラ類の混群だろう、シジュウカラやヤマガラの他にメジロ、コゲラも混ざっている。他のカラ類もいるのだろうけれど、動きが早くてみつけられない。
鳥の声の下を歩いてゆっくり登っていく。木の影になる斜面には白く雪が残っている。標高が上がるにつれ、その白い部分が増えていく。今日は青空が綺麗だから、まっすぐパワーポイントへの登山道を上がっていく。善光寺平の向こうの山が綺麗に見えるのではないかな。
藪歩きは楽しいけれど、この季節藪に入っても雪を被った倒木には粘菌は見つからないだろう。夫が楽しみに観察してきた粘菌たちもさすがに冬ごもりの季節になったのかあまり変化が見られなくなった。ヌカホコリやドロホコリ、マメホコリなどの姿はあるのだがじっと寒さに耐えているかのようだ。
先日まだ雪がない時に藪の中を歩いていて、マンネンタケを発見した。赤紫に艶光りしたマンネンタケはカサの中に細い枝を抱え込んでいた。粘菌だけでなく、自然の中にはさまざまな不思議が隠れている。
こんな寒い裏山にも登る人は案外多くて、何度もすれ違いながら挨拶を交わす。見知らぬ人が多いのは、この季節だからか。夏場はもっと標高の高い山へ登る人も、冬になると積雪を恐れて裏山にやってくるようだ。
夏でも冬でも毎日のようにこの山を歩く人も多い。かくいう私たちも散歩と言いながら時々歩いているわけだ。花がない季節は寂しいけれど、まだ木の実は頭上で光っているし、冬芽は少しずつ膨らんでいる。雪が積もれば倒れて土に帰っていく草たちもまだ実をつけている。
登り始めの駒弓神社周辺の雪はほとんど消えて、日陰の斜面に少し残るだけだったが、パワーポイントから上に登っていくと周囲は真っ白になってくる。
数日しか経っていないのに、雪が残っただけで山の気配は一気に冬になる。この山のどこかに隠れている野生の動物たち、これまではその気配を感じさせないことに成功してきた彼らも、雪の上に残る足跡でその存在がぐんと身近になる。
山頂も真っ白だ。まだ白黒まだらの雪景色だが、もう一回降ると真っ白になりそうだ。地附山山頂から大きく見える飯縄山も雪に覆われている。ただ中腹に残るスキー場跡にはまだ茶色い色も混ざっている。数年前に閉鎖されたスキー場、近くてのびのびしていて、良いスキー場だったけれど、こんなに雪がなくては閉鎖も仕方なかったのだと思える。
飯縄山、黒姫山の奥に見えるはずの妙高山は雲に覆われている。雲の動きがあるから白い山肌が見え隠れしているが、きっと雪が降っているのだろう。「あそこに」と、指をさせるところにあるのに、積雪量は全く違う。
子供の頃私が暮らしていた新潟は、2階から出入りしたこともある豪雪地帯だった。一晩で1メートル積もるのは普通だった。夜中でも屋根に上がって雪下ろしをしたことがあるが、ここしばらくは温暖化のせいか雪の量は少なかったようだ。今年は日本海側から東北、北海道まで一気に降っているらしい、暮らしている人にとっては大変なことだろう。
私たちは地附山に積もるわずかな雪を楽しんでいる。ありがたいことかもしれない。先日きた時にはまだ秋色一色だったが、いよいよ冬山の景色になってきた。さて、散歩を楽しみながらゆっくり帰るとしようか。
これから寒さが厳しくなる季節なのに、木々の冬芽はしっかり春への準備を始めている。そっと眠るように、でも確実に時を刻んでいるのだと教えてくれる。