久しぶりに空が明るい。細々あった用も済み、久しぶりにゆっくり山歩きができそうだ。夫がおにぎりを握っている。気分は山へ・・・みたいだ。
家から登山靴を履いて歩き出す。久しぶりに大峰山へ行ってこようと話していた。こんなに晴れた日は南斜面がいいだろう。家から大峰沢を渡り、歌ヶ丘に出る。沢を渡るところにはマメガキの実がたくさん落ちている。ヒイラギの花が咲いているが、そろそろ終わりか、白から茶色に萎れている。
歌ヶ丘から大峰山へのコースはよく歩かれている雑木林の中の気持ち良い道だ。この季節は木々の葉が落ち、森は明るく、足元は落ち葉の絨毯になっている。
ところどころに真っ赤な木の実が光っていて目を惹かれる。ミヤマガマズミとコバノガマズミ、そしてちょっと大きめのサルトリイバラ。ほとんど葉が残っていないので、実だけが宝石のように高みにある。
木の実は赤だけではもちろんない。黒く縮んだようになっているナツハゼはあちらこちらに見える。見上げればリョウブは房のような実をいっぱいぶら下げているし、ヤマウルシも結構多い。カエデの実もまだ枝の先に残っている。
木の実を楽しみながら登っていく。苔むした倒木を見つけるとその陰を覗き込む。粘菌が活躍していないかなぁ・・・と言いながら。しかしそろそろ雪が積もろうかという季節、粘菌も活動を締めくくって休眠に入るのか、胞子を飛ばした跡は見るものの、子実体の姿は見つけられない。粘菌だけでなく、キノコも同じ、越年型のサルノコシカケやカワラタケの仲間らしいのはたくさん見るが、カサを開いたようなキノコは見つからない。
気持ち良い日差しの下をのんびりキョロキョロ登っていくと、シュンランの実が立っていた。近づいて撮影。実の中をのぞくと粉の様な白い種がいっぱい詰まっている。もっとよく見ようと手を触れると、隙間からふわふわと舞い散る。風があれば遠くまで行くのかな。
登山道の脇には、花々の実もそれぞれの姿で立っている。オケラ、アキノキリンソウ、センボンヤリが多い。オヤマボクチも見つけた。
今年の夏は大峰山に登らなかったので、久しぶりだ。見覚えのある木の形、道のカーブ、大きなサルノコシカケなどを数えながら登っていく。稜線に近くなると、ナンキンナナカマドの大きな実や、アズキナシの小ぶりの実が目に入る。
木の実にはとても目を惹かれるが、枝の先に膨らむ冬芽はつい見過ごしてしまっている。それはあまりにも当たり前に全ての木の全ての枝先にあるから、あるいは小さくて地味な色合いのものが多いから・・・。私は苦手だから見ないようにしているかもしれない・・・と思い至る。木の種類だけ木の芽はあり、とっても似ているものも多い。でもよく見るとなかなか可愛い形のもの、それぞれの特徴がよくわかるものと、冬芽もまた楽しいと気づく。まだまだ分からないものばかりだけれど。
山頂に到着。珍しく今日はポカポカ暖かい。肩の四阿でおにぎりを食べよう。小鳥の声が近い。山頂にはトキワイカリソウやミスミソウなどの葉が緑色に光り、周囲の枯れた茶色の中に目立っている。
木々が葉を落とした山頂からは見晴らしが良くなった。浅間山の山頂から白い煙が立っているのが見える。以前より見通しが良くなったのはアカマツが伐採されたためもある。害虫にやられてずいぶん切られた。害虫駆除のため、積み重ねて囲われている伐採木の山が斜面にいくつも見える。
しばらく山頂を楽しんでから、地附山へ向かう。斜面の影になるからか、こちらは少し冷える。やはり今日は12月だと実感する。この斜面にはホツツジの木がたくさんあって、花の季節には白い花が目を楽しませてくれる。お隣の地附山にはほとんど見られないのはどうしてだろうか。今は可愛い茶色の実になっている。
地附山山頂からは少し白くなった飯縄山が大きく見える。その向こうには黒姫山、妙高山が聳えている。午後の日が長い影を落としている山頂には誰もいない。私たちも長居をせず下ることにする。道々粘菌の変化も見ながら家に向かった。