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諏訪大社の御神体 守屋山 1650m(長野県)

2023年 11月27日(月)


photo:守屋山から諏訪湖:守屋山
守屋山から諏訪湖を見る

山梨に住む友人を訪ねた帰り、諏訪の温泉に泊まった。神奈川に住んでいる頃はスキーの帰りなどに立ち寄ったが、長野に引っ越してからは初めてだ。県内にありながらむしろ遠くなった感じだった。

諏訪湖の御神渡りや、諏訪大社の御柱祭など、全国的に知られている土地だが、諏訪大社の御神体の山といっても首を傾げる人が多いだろう。地元の人にとっては大切な山でも、ほとんど知られていないということは山に限らずよくあること。せっかく諏訪の温泉に泊まるのだから御神体の山、守屋山(もりやさん)に登ってこよう。

地図:諏訪湖:守屋山
諏訪湖周辺の山々・静岡構造線と中央構造線の交差点

ホテルを8時少し前に出発。茅野市から国道152号線で杖突峠まで登る。この辺りは南アルプスの最北部。糸魚川・静岡構造線と中央構造線が交差するあたり、様々な断層によって誕生した山が多い中で、守屋山は火山なのだそうだ。

photo:登山道入口:守屋山
登山道入口

photo:明るいカラマツの森:守屋山
明るいカラマツの森

いくつものカーブを越えて登ってきた道が、杖突峠の茶屋を過ぎると平らになり、広い駐車場がある。8時半、すでに車は3台停まっている。私たちも靴を履き替えて歩き始める。林道を少し入ったところに登山口の鳥居が立っていた。カラマツはすでに落葉が進み、森は明るい。ところどころに緑の葉をつけた低木がある。ソヨゴだ。緑の葉の下にきらりと光る赤い実をぶら下げている木もある。ウメモドキの実もミヤマガマズミの実も真っ赤に光っている。

地図:守屋山
 

photo:ミヤマガマズミ:守屋山
ミヤマガマズミ

photo:ウメモドキ:守屋山
ウメモドキ

photo:ノイバラ:守屋山
ノイバラ

photo:ソヨゴ:守屋山
ソヨゴ

陽を受けて輝く赤い実

photo:赤井沢新道入口:守屋山
赤井沢新道入口

明るい森をしばらく登ると林道にぶつかる。巨大な岩がいくつも転がっているが、これが溶岩だというから火山は恐ろしい。すぐに小さな鳥居があり、赤井沢へ降る登山道に入る。「せっかく登ったのに」と言いたくなるのはどこの山でも同じ、下りがあると恨めしくなる。沢の対岸にこれから登る守屋山の稜線を見上げながら道はどんどん降っていく。緩やかな下りなので、帰りはそれほど負担にならないだろうと思いながら歩く。鹿が多いと聞くから鹿よけだろうか、若木に金網の枠が取り付けられている。道の脇に延々と続く金網に、森を守ろうとする地元の人たちの苦労が見える気がする。鹿は天敵がいないので増えすぎ、今では鹿たちも食糧難になっているらしい。鹿が山の草花を食い荒らし、若木も食べ、日本の美しい山の景観が消えているのは残念だ。最近は各地で柵を巡らして景観維持や復活に努めている。

photo:大きな溶岩:守屋山
大きな岩は溶岩

photo:赤井沢を渡る木道:守屋山
赤井沢を渡る木道

さて赤井沢を木の橋で渡る。橋の入り口に危険を感じたら迂回してくださいと看板が立っているが、どこへ迂回するのか分からない不思議な看板だ。幸い木の橋はしっかりしていて、私たちは沢の向こうの広場に出る。

ここは分杭平、広々とした傾斜地に小屋が立ち、立派なトイレやベンチもある。奥に広がる沢にはザゼンソウが咲くそうだ。春にはザゼンソウを見にくる人も多いとか。ずいぶん昔、娘と諏訪のザゼンソウを見て歩いたが、それはここではなかった。もう一つ北の有賀峠にある「ザゼンソウの里」というところだった。夫と見に行ったのは秩父の山の奥だった。まだ暗いうちに家を出てぽっくりと可愛い赤紫の花をめでた。今はもちろんザゼンソウの花は見えない。地元の人が大切に保護している様子がわかるだけだ。

photo:ザゼンソウ:守屋山
ザゼンソウは早春に咲く

photo:守屋神社諏訪社:守屋山
守屋神社諏訪社にお参りして

一休みした後、奥にある小さな守屋神社の諏訪社にお参りして、その横から登山道に入る。しばらく森の中を登っていく。クロモジの木が多く、冬芽がたくさんついている。春になるとクリーム色の登山道になりそうだ。枝が折れているところをいただいてポケットに入れて歩く。時々香りを嗅ぎながら歩くと元気が出る。自然のアロマだ。

photo:カエデ:守屋山
カエデ

photo:クロモジ:守屋山
クロモジ

photo:ツノハシバミ:守屋山
ツノハシバミ

photo:ツツジ:守屋山
ツツジ

冬芽が膨らんでいる

photo:霜柱が残っている:守屋山
霜柱が残っている

あまり急な道はないが、それでもずっと続く登りはなかなか疲れる。まだ霜が残っているが、溶けたところは滑るから注意しながら歩く。道の脇にある倒木は苔むしている。観察しながら歩いているが粘菌の姿はあまりない。マメホコリが少し見つかった。

カラマツに混じり白樺の大きな木が続くと急に視界が開け、目の前に守屋山東峰山頂の最後の斜面が見えた。右下に諏訪湖が見える。ヨイショとひと頑張りで東峰山頂だ。

photo:シラカバの巨木:守屋山
シラカバの巨木

photo:粘菌マメホコリ:守屋山
粘菌マメホコリ

男性が3人楽しそうに話している。ぐるりと360度の展望だ。10時半ちょっと前に到着、杖突峠から2時間弱だ。途中のんびり休んだり、粘菌の観察で止まったりしてきたから、まぁまぁのペースというところか。

photo:東峰への最後の登り:守屋山
東峰への最後の登り、視界が開ける

photo:守屋山東峰山頂:守屋山
守屋山東峰山頂に着いた

ここからは西峰の山頂も見えている。人がいるのが見える。先に登っていた男性は地元の人だそうで、東峰の山頂は岩でゴツゴツしていて狭いから、西峰で休む人が多いと話してくれた。

展望を楽しんでから、私たちも西峰目指して出発。東峰の岩を降りたところに守屋神社奥宮が祀られてある。行ってきますと挨拶して進む。この奥宮は頑丈な柵で囲まれているのでびっくりしたが、雨乞いのために祠が倒されるのを防ぐためだそうだ。

photo:東峰の肩に守屋神社奥宮:守屋山
東峰の肩に守屋神社奥宮

photo:途中のピーク中嶽から諏訪湖を見る:守屋山
途中のピーク中嶽から諏訪湖を見る

せっかく登ったのに、一度降りるのが残念だが、降っていく。登りにかかると小ピークの中嶽を越え、緩やかな登りで西峰に出る。西峰の肩には細石(さざれいし)との看板がついた青い大きな石があった。

photo:守屋山(西峰)山頂:守屋山
守屋山(西峰)山頂

photo:甲斐駒ヶ岳,北岳,仙丈ヶ岳:守屋山
甲斐駒ヶ岳 北岳 仙丈ヶ岳

三角点のある山頂はゆったりとしていくつもベンチが置かれている。目の下に諏訪湖が大きい。美ヶ原、霧ヶ峰、八ヶ岳、南アルプス、中央アルプス、御嶽山、乗鞍岳、北アルプス、そしてうっすらと浅間山。北信五岳も見えるそうだが、今日は少し霞んだ空なので見えない。

目の前に甲斐駒ヶ岳、北岳、仙丈ヶ岳が大きく見える。前日あの甲斐駒ヶ岳の向こうの麓に行っていたとはなんだか不思議な気分。友人の家から見た甲斐駒ヶ岳はちょうど逆の方向だったのだ。

photo:守屋山(西峰)山頂から諏訪湖、霧ヶ峰、八ヶ岳方面を見る
守屋山(西峰)山頂から諏訪湖、霧ヶ峰、八ヶ岳方面を見る・クリックで拡大

11時、あちこちのベンチで昼食を食べている。私たちも座って煎餅を食べる。風もなくポカポカと気持ち良い日だ。稜線を歩いているときは風が冷たかったのに、山頂に風がないのはありがたい。時間を忘れていつまでもいたくなる。ここは人気の山と聞いたが、確かに私たちが休んでいる間も、何人もの人たちがやってきてはまた降りていく。カップ麺を食べている人や、お弁当を広げているグループもある。くつろげる山頂を持ち、四方に展望が広がる守屋山は確かに素敵な山だと思う。

photo:中央アルプス:守屋山から
中央アルプス

photo:乗鞍岳 御嶽山:守屋山から
乗鞍岳 御嶽山

photo:オオカメノキ(ムシカリ)冬芽:守屋山
オオカメノキ(ムシカリ)冬芽

だが、長野まで帰ることを思えばそろそろ腰を上げなければ。山頂の下に大きなオオカメノキがある。少し膨らみ始めた冬芽が空に両手を広げたように伸びている。トリカブトの実がたくさん揺れているが、すでに種を落とした殻が多い。それぞれの色や形で森を彩る冬芽や木の実に挨拶しながら来た道を戻った。




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