11月23日勤労感謝の日を最後に、翌日から冬季閉園になる地附山公園を訪れた。この日が今シーズン最後の開園日と知ってか知らずか、この日の山は賑わっていた。
私たちは公園の管理棟前で仕事をしている西澤さんに挨拶して、いつも通り登山道に入った。下の方の紅葉はまだ綺麗だったが、少し登っていくと茶色になっている。登山道には落ち葉がたくさん散り敷いていて気持ちが良い。
一週間ぶりの地附山なので、粘菌の変化が楽しみだ。六号古墳の近くで観察していたら、チェーンソーの音が響いた。愛護会の人たちも今日は最後の活動日なのだろうか。
チェーンソーの音がする場所にはイケさんがいるかもしれない。粘菌の撮影をしている夫を残して、音のする方へ行ってみた。やっぱり、イケさんが大きな松の木の根元に屈んでいる。大人が3〜4人束になったくらいの太いアカマツだが、枯れてしまっている。近くのもう少し細い木のところに2人の人が屈んでいる。彼らがチェーンソーを当てている木も、枯れている。
私に気がついたイケさんはニコニコとしながらやってきて、今日はこの2本の木を切って終わりだと話した。簡単そうに言うけれど、こんなに太い木を倒して、さらに短く切って並べたりする作業は並大抵のことではないだろう。とりあえず、邪魔にしかならない私はその場を去ることにした。
粘菌を撮影していた夫と合流し、イケさんたちが作業する下を通って先へ進む。イケさんは森の向こうで手を振っている。「気をつけてね」と大きな声をかけて、私たちは桝形城跡の方へ進んだ。
途中の道には、先日イケさんが伐採した木が並べてある。いつ登山道に倒れてくるか分からないと話していた木だ。枯れた松の木を伐採した森は広くなった感じがする。
私たちはその森で粘菌を観察する。粘菌の変化は種類によって異なるのだろう。10月頃からずっと観察してきた粘菌がようやく胞子を飛ばし始めた。これに比べて春見つけたものや、ムラサキホコリなどはうっかりすると変化に間に合わず、気がついたら胞子を飛ばしていることがある。未熟子実体の姿を見たいと思っても、なかなかその状態の時に見ることができないのだ。
ゆっくり変化している粘菌を見ながら桝形城跡に登る。山頂の樹木はどんどん葉を落としているから、明るく、見通しも良くなってきた。志賀の笠岳と横手山が並んで見える。こちらから見えるスキー場は山田牧場あたりか、ゲレンデらしい白い筋が見えている。
木の枝越しの展望を楽しんでから地附山へ向かう。雑木林の道を登り、前方後円墳へ向かう。今年はキノコが少なかった。積み上げた伐採木などに出るサルノコシカケやカワラタケの仲間などはたくさんあるが、地面から出てくる大きなキノコが少ない。そんなことを考えながら歩いていたら、小さなキノコが一本すっくと立っていた。既に終盤に入っているようだが、まだすっきりした姿だ。青い色が残っているからこれはコンイロイッポンシメジかもしれない。
旗立岩から浅間山や湯ノ丸山を見たり、下のJR車両センターを見下ろしたりするのも楽しみの一つなのだが、今日は霞んでいる。先週山頂から煙が見えた浅間山、今日はぼんやりと霞んだ姿だが煙は立っていない。ここも木の間越しの展望だがクリアに見えるとなかなかいい。今日は霞んでいるので、立ち止まっている時間も短く先へ進む。
地附山山頂に到着。飯縄山、黒姫山、妙高山が綺麗に見える。斑尾山も前山の向こうに頭を見せている。いつもはほとんど人がいないが、今日は山頂の全てのベンチに人が憩っている。私たちも少しだけ座って煎餅を齧る。今日は午後から用があるので、あまりゆっくりはしていられないが、一段と白くなった妙高山を眺めながら一休みだ。
ポカポカと陽だまりが気持ち良い。急に寒くなって雪が降ったと思うと、こうしてまた暖かくなる。最近の気候は春夏秋冬安定しないのが普通になってきたが、自然の中で長いサイクルで命を繋いできた生物たちの姿をそっと横目で見ながら気持ちをおおらかにして暮らしていくしかないのだろう。
ふと見ればダンコウバイの花芽はぐんと膨らんでいる。ヤマウルシの実と、リョウブの実はちょっと似た形でぶら下がっている。サルトリイバラは葉を落とした茎に真っ赤な実が光っている。落ち葉の色もだんだん茶色になってきたが、まだそれぞれの木の色を残しているものも多い。
梢を見上げたり、地面を遠くまで眺めたり、ふと目を休めるように、枝の隙間から遠くの山の姿を見つけたり・・・のんびり歩きの楽しみは色々あって、「里山歩き、悪くないね」と夫と顔を見合わせた。