善光寺平展望・クリックで拡大
山道を進んでいくが、雲はいっこうに晴れない。道は緩やかに下り勾配になって聖湖のほとりに着く。周囲は真っ白、気温は2℃。ここまで来て霧に包まれるとは。
駐車場には車が何台か停まっている。こんな霧の中、山に登る物好きが私たちの他にもいるのかと思ったが、彼らはどうやら釣り人らしい。聖湖のほとりに設けられた釣り用の桟橋には小さなテントも見える。みんな防寒具で膨れて釣り糸を垂れている。聖湖は湧水でできた天然の湖だそうだ。
釣り人を横目に見ながら私たちは聖湖の湖畔を奥へ進む。気温が下がったからか、水面からは靄が立ち込め幻想的な風景が広がっている。湖の奥には聖博物館、航空資料館があり、その周囲は広々とした公園になっているが、こんなに寒い日は誰もいない。
私たちは登山口を探してうろうろ。公園の斜面をまっすぐ登ると上の道に出るのだが、初めてなので分からず、下がって湖畔の道に出た。ぐるりと遠回りしてようやく登山口へ。道はよく踏まれていて歩きやすいが、今日は湿っている。風が強いので、木々の湿りがパラパラ落ちてくる。激しくなると雨のように落ちてくる時もある。寒いので、夫は防寒を兼ねてポンチョを羽織る。
夏は賑わいそうなスカイライダーを左に見ながらジグザグと森の中を登る。カラマツの落ち葉が積み重なっているところは絨毯のように足に優しいが、落ち葉で埋もれた道が湿っている時は要注意だ。滑る。そして木の根や、石ころが落ち葉に隠れている。低い山であっても、短い距離であっても、山道を歩く時は一歩一歩注意して歩く。そうやって歩いていると落ち葉の下にキノコが隠れているのを見つけることもある。山道を歩くご褒美だ。
白樺の木はすでに葉を落として白い幹が寒そうだ。ホオノキの葉が広がっていると、そこだけ道が白く見える。もう土と同化したようなホオノキの実、パックリと二つに割れたクルミの実などを見つけながら歩いていると、上から男性が降りてきた。挨拶をしてすれ違う。こんな日に登るのは私たちだけかと思ったら、他にもいたねと話す。何回かジグザグを繰り返して登ると頭の上が開けた。山頂だ。
360度の展望は、360度の白い世界になっていた。かろうじて山頂標識の柱が見えている。立派な展望台も霧で濡れた方位盤もがあるが、今日は虚しい。山頂から出発するスカイライダーの出発点がすぐ下に見えるが、そこも霧のヴェールの向こうに霞んでいる。全長710m、標高差120mという中部圏最大の滑り台だそうだ。
雨にはなっていないが、風が強いので寒い。記念撮影をして早々に降ることにする。帰りは公園に直接降りよう。公園から湖畔を回って車に戻る。
まだ昼前だ。私たちの山旅では珍しいけれど、レストランでランチを食べよう。山道があまりに寒かったので、少し温まって帰ろう。湖畔に立つ赤い屋根のおしゃれなレストラン『聖湖レイクサイド館』は地元の食材を使うオリジナルメニューがあるそうで、人気らしい。私たちの後からも客が絶えず、テーブルは一杯になった。
美味しいランチを食べて、帰りは千曲川展望公園から、青空の下に広がる善光寺平の見晴らしを楽しんで帰った。
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