13日、久しぶりに晴れたので粘菌の変化を見に出かけた。できるだけ近道をして粘菌の変化を見ることを一番の目的にして登った。山頂下の道でしゃがみ込み、枯れ木の下を見ていたら、「何してるの」と声がする。イケさんだ。粘菌と聞いて、イケさんも私たちと一緒に行くことにした。
桝形城跡に向かう。そしてまた木の洞に粘菌発見。夫が撮影している間に、私とイケさんは桝形城跡の山頂を一回り。今年は目当てのキノコが見つからないと、イケさんは嘆いている。
さて、16日、みんなで粘菌のその後を見に登った。公園の入り口でイケさんと会う。寄り道はせず、まっすぐ粘菌を見にいく。桝形城跡の登山道脇に伐採した木が積み上げてあるが、その木の隙間に赤く一面に出ているイクラ状の粘菌。ホソエノヌカホコリではないかと話しながら、夫とイケさんは熱心にのぞいている。この木を伐採したのもイケさんだ。時々笑いながら「もっとたくさん伐採して粘菌の出る場所を作ってあげよう」と言う。山を見ると、倒れそうな木が目に入るらしい。
イクラと言いたくなるオレンジのつぶつぶの粘菌があっちにもこっちにも顔を並べている。なかなか変化しないが、ようやく茶色になってきた。そして一部は濃い茶色で、まるでチョコボールだ。『イクラ』から『チョコボール』へ、そしてこの後はどうなるのだろう。なかなか終わりにならない粘菌探索だ。
数日経って(20日)様子を見に行った。夫がチョコレート色になった粘菌を撮影している間に、まだオレンジ色の粘菌を見ていたら、何か動くものがいる。アリがくわえているのは粘菌か。オレンジ色の小さい塊をくわえて右往左往している。そして、別のアリが粘菌に向かってやって来た。どうするんだろうと見ていると、なんとビックリ、粘菌をくわえて一生懸命引っ張っている。じっと見ていると、足を踏ん張って全身で引っ張っているように見える。何度も挑戦し、千切れず、また別の粘菌を引っ張る。数回挑戦して、このアリはトコトコ去っていった。千切れなかったから諦めたのか、引っ張りながら中身を吸い込んだのかは不明だが、アリが粘菌を齧る姿は初めて見た。
13日、あっという間に昼も過ぎたので、道々イケさんからキノコを教えてもらいながら帰る。私たちが登りで見つけた白いボール状のものを、帰り道でイケさんに見せるが、さすがのイケさんもはっきり分からないと言う。「家に持って帰って切ってみろ」と言うので、持って帰った。
この日は私にも見分けがつくようになったハツタケと、まだまだ確認があやしいアミタケをたっぷりお土産に家に向かった。家で早速調理しようと洗い桶に入れたら、キノコを浸けた水が青緑色に染まっている。そしてハツタケと一緒に袋に入れてきたアミタケの接触点が青緑になっていた。すごい色素だとびっくりしながら、採ってきたアミタケの煮物に舌鼓を打つ。
13日に地附山で見つけた白くて丸いキノコ、家に帰って切ってみた。これはスッポンタケの幼菌だ。さすがはイケさん、本当は分かっていたね。その真っ二つに切った写真をイケさんにメールで送ったら山の帰りに見に来た(15日)。「キノコの図鑑に載っているのと同じだ」と、みんなで覗き込む。そして明日も山へ行こうと盛り上がった。
キノコを浸けた水の色が染まるのはハツタケのせいだと思い込んでいたが、どうやらアミタケを浸けておくと青緑色になるらしい。16日も20日も、アミタケはいっぱい採れたから、判明した。
ハツタケに似たキノコもいくつか見た。綺麗なオレンジ色のはアカハツか、ワイン色の液が手につく。一見似ているが、傷がチョコレート色になるキノコもある。名前は分からない。
美味しいクリタケやオウギタケを教えてもらった。テングタケはとてもかっこいいけれど有毒だ。紫色が綺麗なフウセンタケも様々な種類があるそうだ。柄の付け根がそろばん玉のような菱形のフウセンタケは食べられると聞いて、初めて食べてみた。お吸い物にしたら味が出ていたようだが、少なすぎてはっきり分からなかった。山にはまだまだ私の知らないキノコがいっぱいあるようだ。
イケさんと一緒にセンブリを見に行ったのは13日。センブリは三大民間生薬(ドクダミ、ゲンノショウコ)と言われる薬草だが、とにかく苦い。子供の頃、センブリは見たことがなかったが、ゲンノショウコはよく摘みに行かされたものだ。干して煎じて飲むと胃腸薬になったようだ。センブリも同じような効用らしい。
イケさんはこの秋まだ山頂から奥へ行かなかったとかで、今年のセンブリを初めて見たそうだ。斜面のかなり下まで続く花を見て嬉しそうだ。センブリの花を見た後はゆっくり帰り道。途中の桝形城跡を一回りして帰ろう。
イケさんは私たちのキノコの師匠だが、樹木の師匠でもある。桝形城跡の登山道には大きなアオハダの木がある。アオハダの小さな実は陽を受けて宝石のように光る。アオハダの実は綺麗な赤だが、まれに黄色い実をつける木がある。イケさんによれば地附山界隈には一本しかないそうだ。
山頂付近にはアズキナシの木が多い。赤い実に小さな点々が見えてナシの実に似ているので覚えたが、ウラジロノキもよく似た実をつける。ちょっと大きめの実が赤くなってきて、山の頭上は賑やかだ。
ノブドウも色づいてきた。食べられないけれど、さまざまな色に変化するので、なかなか可愛い。どんな生き物も同じだと思うが年によって姿が違う。去年のノブドウは白っぽい色で、あまり色がつかなかったが、今年は綺麗に染まってきた。
標高が低い地附山の木々はまだ紅葉が始まったばかりだが、全体に秋色になってきたなぁと思う。花の姿は少なくなり、枯れた葉の中にポツンと実が隠れているのを見つけると来年も咲いてねと声をかけたくなる。ツルリンドウの赤紫の実は輝くようでよく目立つが、まだ花も咲いていた。
私は藪の中、踏み跡を分けて歩くのが好きだから、ピークハンターというわけではないと思っているが、やはり登れば山頂を踏みたい。地附山の山頂から見える飯縄山もうっすらと赤く染まってきた。『山粧う』季節だ。
キノコを探し、粘菌を探し、山を分けいっていくと鳥の声も賑やかに追いかけてくる。ケラの声、カケスの声、シジュウカラの声、聞き分けられる声だけ拾っているから、他の声はみんな『小鳥の声』だ。そして小さな蝶も舞っている。陽の光を浴びて休む間なく飛び交っている。もうじき寒くなることを知っているのだろう。
森が豊かだから小動物もいるようだが、雪の上の足跡以外に、その姿はなかなか見ることができない。石の上、地面の端っこなどに糞を見ると、「ああいるんだな」と思う。彼らはどんなものを食べて生きているのか。木の実、草の実は豊かに色づいているが、食べられて一気になくなるという様子はない。
庭の木の実はヒヨドリが来てついばみ始めるとあっという間に減っていく。山は大きく深いということなのだろう。ありがたいことに。
時々熊も里山にやってくるようだが、山奥深く食べ物が潤沢なら彼らも好んで危険な人間の住処にはよってこないのではないかと思うが・・・山の恵みの豊かなことを祈るしかないか。
野生動物ならぬ身で山の斜面をずり落ちる。立木に掴まりながら一歩一歩、落ちるように降りたり、木を頼りに登ったりが面白い。足元に転がるドングリくんはコナラにミズナラ。そして、クヌギかと思えばこれはアベマキの実だそう。今日もイケさんに教わることが多い。