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407 雨の地附山 733mもまた楽し(長野県)

2023年 9月28日(木)追記10月2日(月)


photo:傘をさして歩く:地附山
傘をさして歩く

病膏盲に入る(やまいこうこうにいる)という言葉があるが、今の夫がそれだろうか。昨日イケさんから「面白いもの(粘菌)を見つけたよ」と電話をもらったものだから、雨がちらつく中を地附山へ向かった。

と言いながら一緒に出かける私も同じ病か・・・。

傘をさそうか、さすまいかと迷う程度の雨だけれど、しとしと降り続いている。今日は寄り道をせずに粘菌がいそうなところに向かう。森の中をアオゲラが飛んでいる。鳴き声があちらこちらから聞こえ、木から木へ飛ぶ姿も見える。今日は空が霞んでいるせいか、小鳥が広いエリアで遊んでいる気がする。天敵に見つかりにくい日なのだろうか。

午後には用を控えているので、雨の午前の山歩きになった。昼前に雨は止むという予報なのだが。

photo:ニホントカゲとニホンカナヘビ:地附山
ニホントカゲとニホンカナヘビ

公園からゆっくり歩き始める。勾配の少ないメインルートを歩きながら「まだキノコが出てこないね」と話す。森の木々の葉が天然の傘になっているからか、道路もそこに積もった落ち葉も乾いているところが見える。昨日から降った雨も山全体を濡らすほどにはならなかったようだ。これではキノコも出ないだろう。

photo:ミツバアケビ:地附山
ミツバアケビ

photo:サルトリイバラ:地附山
サルトリイバラ

photo:ツノハシバミ:地附山
ツノハシバミ

photo:ツルアリドウシ:地附山
ツルアリドウシ

実りの季節


photo:何か見つかった?:地附山
何か見つかった? 9.18

先日(9/18)バッタリ会ったイケさんと一緒に観察した、粘菌の多いところでじっくりあたりを見る。前に見つけた粘菌が雨に打たれて崩れているのもある。胞子はうまく飛ばせたのだろうか。ツヤエリホコリが木と木の隙間に光っていたり、クモノスホコリがびっしり胞子嚢をくっつけ合うように並んでいたり、いつ来ても何かしら発見がある。

photo:マルバフジバカマ:地附山
マルバフジバカマ 9.23

photo:アキノキリンソウ:地附山
アキノキリンソウ 9.28

photo:ヤクシソウ:地附山
ヤクシソウ 9.23

photo:シラヤマギク:地附山
シラヤマギク 9.23

秋の花が賑やかに

photo:木を切る:地附山
木を切るイケさん 9.18

イケさんはキノコ名人だが、今年のこの時期の楽しみがなくてつまらなそうだ。何回か夜に降った雨も落ち葉の奥に染み込むほどにはならなかったらしく、落ち葉はカサカサに乾いている。私たちは藪の中の太い倒木も見て歩く。ヤマウルシの木もあるので、注意しながら歩く。イケさんは持っているノコ(鋸)で倒れそうな木を切ったり、枯れ枝を払ったりしながら奥への道を開いていく。

photo:クモノスホコリ:地附山
クモノスホコリがびっしり 9.18

キノコはないと言っているが、ヒメフサホウキタケはたくさん顔を出している。春に顔を出したマンネンタケは大きくなった。だが、季節を彩る、そして食卓を賑やかにするキノコは見つからなかった。

photo:マンネンタケ:地附山
マンネンタケ

photo:ヒラタケ:地附山
ヒラタケ

photo:キクラゲの仲間:地附山
キクラゲの仲間

photo:ヒメフサホウキタケ:地附山
ヒメフサホウキタケ

キノコ形それぞれ 9.18

photo:E217系.E233系,189系:地附山から
JR車両センターを見下ろす 9.18

のんびり山道を辿って、見つけた粘菌の写真を撮りながら山頂まで往復した。公園でイケさんと別れたが、「おーい」と呼ぶ。見ると、手に何かそっと持ってきた。私の掌に乗せてくれたのはタマムシ、の殻だ。赤に、青に、緑に輝いて光の角度で色が変わる。私がタマムシを見たことがないと話していたので、公園の木陰に落ちていたのを見つけて引き返してくれたのだ。

photo:ヤマアカガエル,アオスジハナバチ:地附山
生き物たち

法隆寺にある飛鳥時代の国宝『玉虫厨子』は、この羽を使っているという。歴史で習った時にはどんな虫かなぁなどと思いながら、実感がなかった。だが、今この虫の羽を手にしてみると、この小さなかけらを絵の具にするとは驚きだ。この羽で光沢のある装飾をするにはどれだけの虫が必要だったのだろうか。ただ、現在までに残っている羽はほとんどないらしい。

イケさんが見つけてくれたのは、もう随分前に死んでしまった個体らしく、殻だけが綺麗に残っているものだ。それでも光沢には全く遜色がない。昔の人もこの美しさをよく知っていたのだろう。

photo:カラハナソウ:地附山
カラハナソウ 9.18

photo:ヨモギ:地附山
ヨモギ 9.18

photo:ヤマハッカ:地附山
ヤマハッカ 9.23

photo:ミズタマソウ:地附山
ミズタマソウ 9.23

小さな花の集まり

photo:ダンコウバイ:地附山
ダンコウバイ

photo:アオツヅラフジ:地附山
アオツヅラフジ

photo:ナツハゼ:地附山
ナツハゼ

photo:アクシバ:地附山
アクシバ

色づいてきた木の実 9.23


少しでも雨が降ると山の景色が変わるのではないかと、その後(9/23)も登っているが、ここにもかしこにも雨上がりの倒木にはツノホコリが白く光っていた。普通のツノホコリに、エダナシツノホコリ、タマツノホコリなどが透明感のある白に、艶やかに光っていた。

photo:ツノホコリの仲間に囲まれて:地附山
ツノホコリの仲間に囲まれて

倒木の表面にゼリーのような透明の膜が流れるようにかぶさり、その端から小さな丸いツノホコリの赤ちゃんが盛り上がっている。ゼリーのような膜はツノホコリの変形体なのだろう。木の割れ目からは透けて見える小さなツノが生まれてきている様子が見える。

photo:ツノホコリの変形体:地附山
ツノホコリの変形体

photo:ツノホコリの未熟体:地附山
森の宝石ツノホコリの未熟体

半透明のツノホコリは美しく、見ていて飽きない。そしてそれが山のいたるところから顔を出している。白く光るツノホコリは、他の粘菌と違って探さなくても目に入ってくる。私たちは喜びながらも他の粘菌もないかなと、目を泳がせている。だが、この日はツノホコリ天国で、他の美しい粘菌はあまり見つけられなかった。ただ森の木の影にひっそりとヒメコンイロイッポンシメジが立っているのを見つけた。隣の大峰山では見たけれど、地附山では初めてだったから、とても嬉しい。近くをじっくり見て回ったが、たった一本しか見つけられなかった。

photo:ヒメコンイロイッポンシメジ:地附山
ヒメコンイロイッポンシメジ 9.23

この日もあまり快適な天候ではなかったから、ほとんど人には会わなかったが、帰り間際に毎日登るというヤマさんに会った。ヤマさんは粘菌には特に興味があるわけでもなさそうだが、自然の移ろいを楽しみながら歩いているから話が弾む。帰り道、一緒に歩きながら綺麗な粘菌の姿を見たり、秋の実の色づきを楽しんだりした。

photo:オオガンクビソウ:地附山
オオガンクビソウ 9.23


さて、雨の中を登っていく(9/28)。ツノホコリが美しかった日から5日経ったが、今日はもうほとんどが白い塊のようになって、周囲は黒い跡になっている。代わりにマメホコリが一気にたくさん顔を出してきた。綺麗なオレンジ色のものや、茶色くなったもの、そしてその周りに薄い桃色を帯びた胞子を散らしているものと、成長の様子は様々だ。

photo:マメホコリいろいろ:地附山
山頂に着く頃雨は止んだ

寒くなってくるとマメホコリは活発になるのだろうか。昨年も秋深くから冬にかけてたくさん見ることができた。そして今日は変形体のような、とろりとしたオレンジ色の塊もいくつか見られた。ぷっつりとした丸いマメホコリの近くにいくつかあって、新しく発生したものだろう。

photo:変化するクダホコリ:地附山
変化するクダホコリ

photo:クダホコリ:地附山
クダホコリ拡大すると 9.23

先日見つけたクダホコリは崩れたようになっていて、胞子を飛ばしてしまったようだ。それとも雨に流されてしまったのか。雨が降らずに乾燥していては発生しにくいのだろうが、あまり雨に打たれても流されてしまうようで、小さな粘菌の世界はなかなかに厳しそうだ。木の洞のようなところにたくさん見ることができるのは彼らの自衛手段でもあるのだろうか。シロウツボホコリ、ツヤエリホコリ、そして倒木の影に柄を伸ばすオオムラサキホコリなど、みんな雨に当たらぬような場所を選んでいる。

photo:シロウツボホコリ:地附山
シロウツボホコリ

苔の間に埋もれるように小さなオレンジの珠があったが、その半透明の輝きはまさに森の真珠と呼びたい。ホソエノヌカホコリかなと夫は呟いたが、未熟子実体は似たものが多いので特定が難しい。もう一つ、小粒の真珠を散らしたおしゃれなブローチのようなものを見つけた。こちらはあまり見られない細胞性粘菌ではないかと、これまた夫は喜んで見入っている。

photo:美しい粘菌ホソエノヌカホコリか:地附山
美しい粘菌ホソエノヌカホコリか

photo:ツヤエリホコリ:地附山
ツヤエリホコリ

photo:キフシススホコリ:地附山
キフシススホコリ

photo:細胞性粘菌かな:地附山
細胞性粘菌かな

photo:オオムラサキホコリ:地附山
オオムラサキホコリ

雨に打たれても美しい粘菌 9.28

私はサワフタギらしい木の実の色の変化を楽しみに森の中を歩く。いつの間にか雨は上がって、傘を杖代わりに歩いている。雨の日もまた面白い。

photo:サワフタギだろうか:地附山
サワフタギだろうか

追記10月2日(月)

10月になった。日差しは弱くなり、雨量も増えた。山の景色も変わったかもしれない。歩き始めると小さなキノコが目に入る。やっぱりキノコが出てきたようだ。木の実の色も濃くなってきている。花は散ってしまったが、これからは実りの季節、そして紅葉の季節だ。

photo:ハナタデ:地附山
ハナタデ

photo:イヌタデ:地附山
イヌタデ

photo:ナギナタコウジュ:地附山
ナギナタコウジュ

photo:ヨモギの仲間:地附山
ヨモギの仲間

秋の山道に咲く

道の両側に艶のある茶色のキノコが一面に広がっている。これはチチアワタケだったが、アミタケに似ていたので、間違えてしまった。よくよく見れば、アミタケの管孔はもっと荒く黄色い色が濃い。そして傘の色も濃い茶色なのだが、艶のある茶色と、蜜にびっしり顔を出している様子に惑わされた。チチアワタケは食べられるけれど、たくさん食べるとお腹を壊すと言われている。アミタケは茹でると紫色に変色するけれど、チチアワタケは変色しないので、茹でると違いがはっきりする。

ヌメリイグチ
photo:ヌメリイグチ:地附山

ナラタケ
photo:ナラタケ:地附山

ツチカブリかな
photo:ツチカブリかな:地附山

キツネノチャブクロ幼菌
photo:キツネノチャブクロ幼菌:地附山

キノコが出てきたね

photo:アカイボカサタケ:地附山
おとぎの国みたいアカイボカサタケ

私たちがキノコを見て喜んでいるところにイケさんがやってきた。粘菌の変化を見るために毎日登っているのだと言う。すっかり粘菌博士になってしまった。

毎日観察しているという粘菌は柄のない粒々が広がっているもの。夫はトゲケホコリかなと言っているが、確定できない。ウツボホコリの周りにとても小さな白い点が見えるが、これも細胞性粘菌ではないかとワクワクして見ているが、やっぱり確定できない。

クロサカズキホコリと
ニセタチコホコリ(右小さい)
photo:クロサカズキホコリとニセタチコホコリ:地附山

 
クダホコリ跡
photo:クダホコリ跡:地附山

 
トゲケホコリかな
photo:トゲケホコリかな:地附山

ウツボホコリの周りは
細胞性粘菌かな
photo:キツネノチャブクロ幼菌:地附山

分からないことがいっぱいの粘菌

もっともっとたくさん見ないと分からないのかなぁと話しているが、小さな世界が少しずつ近くなってきている気もする。

photo:クロサカズキホコリとニセタチコホコリ:地附山

photo:クダホコリ跡:地附山

photo:トゲケホコリかな:地附山

photo:キツネノチャブクロ幼菌:地附山

シロウツボホコリ

そしてやっぱりキノコが顔を出してきたのは嬉しい。秋の山道にキノコが見えないのはなんと寂しいことだったかと、その姿を目にしてより強く感じる。

photo:ハンノキイグチ:地附山
イケさんが見つけたハンノキイグチ

イケさんは名人の目で急な斜面の下の方にあるキノコも見つけてしまう。

今日は藪の中で、青いキノコを見つけた。ヒメコンイロイッポンシメジかと思ったが、傘に縞模様が無い。これはナスコンイッポンシメジでは無いだろうか。成熟したものは色が少し褪せているが、若いのは綺麗なブルーで目を惹かれる。

photo:ナスコンイッポンシメジか:地附山
濃い青が美しい

季節を彩る自然の移り変わりが豊かで、その変化を楽しめるのは素敵なことだと改めて思った。

photo:ハリガネオチバタケ,チチアワタケ(キセルガイつき),フウセンタケ,ドクベニタケ,キイロラッパタケ:地附山
キノコがいっぱい出てきた




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