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前山1796mから四十八池湿原1880m(長野県)

2023年 8月8日(火)


志賀高原は広い。北の奥志賀から南の横手山まで沢山のゲレンデがあり、冬はスキーで賑わった。少し広くみれば竜王山も含め、岩菅山、焼額山、赤石山、志賀山、笠岳、横手山といくつも山の名前が思い浮かぶように、山登りにハイキングに四季を通じて人気のエリアだ。

photo:ヤマホタルブクロ:志賀高原
ヤマホタルブクロ

photo:ヤマハハコ:志賀高原
ヤマハハコ

photo:ニッコウキスゲ:志賀高原
ニッコウキスゲ

photo:タチコゴメグサ:志賀高原
タチコゴメグサ

渋峠あたりに咲いていた

photo:渋峠2172mは深い霧:志賀高原
渋峠2172mは深い霧

私たちは何度か奥志賀スキー場まで出かけて滑ったものだ。焼額から東館山、タンネの森、寺小屋などのゲレンデはリフトで渡り歩くことができるので楽しんだ。横手山までは出かけたが、中央部のゲレンデではあまり滑らなかった。人が多かったからだ。

長野県民になってからスキーには出かけなくなったが、時々訪ねてくる友人や家族とともに自然をたっぷり味わえる山歩きや池巡りに訪れることが増えた。

春や秋の移ろいの季節が素晴らしいのだが、働いている若者たちには時間の制限があるからそうも言っていられない。真夏の日差しの中、友人と志賀高原に向かった。台風も近づいているそうで、空模様は怪しい。眩しい青空と動きの速い雲。さてまずは志賀高原山の駅に行ってみよう。

photo:指先にアキアカネ:志賀高原
指先にアキアカネ

photo:渋峠近くから:志賀高原
渋峠近くから

目的を定めていなかったので、山の駅から東館山を見上げてゴンドラに乗ってみようかと話す。ところが、風が強いので運休という。では横手山まで足を伸ばしてみよう。国道292号をぐいぐい登る。道の脇にはヤナギランが濃いピンクの花穂を伸ばしているが、見上げると霧なのか雲なのかわからない白い塊が山を覆ってはまた消えていく。一喜一憂しながら渋峠に到着したが、周囲は真っ白。ここではまだ咲いているニッコウキスゲが露を乗せている。斜面に広がるニッコウキスゲに喜んだが、霧の粒は大きくじっとしていればしとしと濡れてくる。しばらく待ったけれど、山頂部は一向に晴れないので、霧がないところまで戻ろう。

photo:リフトで前山山頂1796mへ:志賀高原
リフトで前山山頂1796mへ

空模様は怪しいが、車の中は話の花が咲く。途中数カ所で景色を眺め、前山リフト乗り場まで降りてきた。青い空が見えるから、この辺で歩いてみようか。志賀高原は初めてという友人たちは「どこも綺麗だからOK」と嬉しそう。私と夫は渋池あたりまで歩いてこようと頷き合っている。

前山山頂から周辺の山を眺め、渋池に向かうと水面がキラキラ光っている。水草も陽を浴びて光を揺らしている。なんとも美しい光景にみんな大喜び。真紅に光るモウセンゴケを見てびっくりする友人。

photo:渋池:志賀高原
渋池

photo:渋池にて:志賀高原
渋池にて

渋池の美しさを眺めているうちに、もう少し奥まで歩いてみたくなった私たちは四十八池湿原を目指すことにした。

地図:四十八池湿原:志賀高原

友人は最近山歩きに目覚めた一人と、ほとんど山歩きをしたことがない一人・・・「無理はせず、行けるところまででいいね」と言いながら奥へ進む。背中のリュックには雨具や傘が4人分入っているから大丈夫だろう。

photo:ギンリョウソウ:志賀高原
ギンリョウソウ

photo:ヤマオダマキ:志賀高原
ヤマオダマキ

photo:ヒカリゴケ:志賀高原
ヒカリゴケ

photo:モウセンゴケ:志賀高原
モウセンゴケ

森の中の魅力的な姿

photo:キノコがいっぱい:志賀高原
キノコがいっぱい

photo:マツカサのようなキノコ:志賀高原
マツカサのようなキノコ

歩き始めると見事な苔の世界にびっくり。雨が多かったからか道はかなり濡れている。水たまりを避けながら進む道は整備されているのに、深山幽谷の趣きがある。志賀高原や北八ヶ岳などの火山でできた山特有の大岩に乗った針葉樹の姿が私たちに非現実の世界を垣間見せてくれるのだ。さまざまな色のキノコも苔の間から顔を出していて私たちは一つ一つに感動しながら先へ進む。ぐちゃぐちゃの水溜りを避けながら進む道は遠く感じるが、苔とともにびっしりと続いているイチヤクソウが疲れた気分に活を与えてくれる。木の洞をのぞいたり、光る実を撮影したりしながら歩いて、ようやく木々の向こうに湿原の広がりが見えてきた。

photo:ツバメオモト:志賀高原
ツバメオモト

photo:オオバタケシマラン:志賀高原
オオバタケシマラン

photo:アクシバ:志賀高原
アクシバ

photo:タケシマラン:志賀高原
タケシマラン

木や草の実が光る

photo:見えてきた四十八池湿原:志賀高原
木々の向こうに湿原が見えてきた

photo:マルバダケブキ咲く四十八池湿原:志賀高原
マルバダケブキ咲く四十八池湿原

photo:霧にけむる四十八池湿原:志賀高原
霧にけむる四十八池湿原


急ぎ足で僅かに降ると目の前が白い空間になる。歩いているうちに青空は消えて、霧が濃くなっていた。マルバダケブキが丈高く黄色い花を揺らしている。湿原は霧に覆われて幻想的だ。木道を進むとミズギク、イワショウブ、ウメバチソウなどの花が咲いている。イワショウブの花は純白に輝いているが、実になると真っ赤だ。一つひとつが迷うことなくそれぞれの姿で立っている。なんだか潔い気さえする。

photo:ウメバチソウ:志賀高原
ウメバチソウ

photo:イワショウブ:志賀高原
イワショウブ    実

photo:ヒメシロネ:志賀高原
ヒメシロネ

photo:ミズギク:志賀高原
ミズギク

繊細な造形

妖精というには歳を重ねた私たちではあるけれど、霧の中に消えていく木道をトコトコと歩きながら、日常の暑さも喧騒もしばし忘れて豊かな自然の中に浸っているのだった。

photo:森の中は発見がいっぱい:志賀高原
森の中は発見がいっぱい




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