地附山公園(防災メモリアル地附山公園)の開園を待って出かけることが増えた。8時半に管理の人が扉を開けるから、その時間には着くように出かける。家からは車で5分。
地附山を登るコースは一周するだけなら1時間半もあれば十分だ。だが、花を見、キノコを見、粘菌を探し、さらに写真を撮影しながら歩いていると時間はいくらあっても足りないくらいになる。しかも自然の移ろいは早く、蕾を見つけた花が咲いてそれがまた実をつけていく様子を、キノコや粘菌は変化した姿を見たくなるから続けて何度も登ることになる。
公園へ向かって行くと地附山愛護会の人たちが集まっている。重そうなチェーンソーを持って登って行く人の中にイケさんもいる。作業の日だからあまり話はできない。ちょっと情報を交換してから「気をつけて」と声をかけて分かれる。6号古墳の下へ行ったら、チェーンソーの音が響いて、木の枝越しに働くイケさんたちの姿が見えた。
歩いていると汗が吹き出してくる。すっかり夏の色が濃くなったことを教えてくれるように夏の花が開いている。高いところを見上げれば、春咲いていた花が実を膨らませていて、見つけて歩くのが楽しい。
このところ雨が多いからか、新しい伐採木からも粘菌が顔を出している。横倒しになり半ば腐っているような古い木の幹には一面びっしりと張り付くような粘菌だ。全長が2mmほどしかない粘菌はアミホコリやクモノスホコリの仲間らしい。小さな点々を支えている柄はあまりに細いので、日に透かすと消えて、光るホコリが空中に浮いているようだ。 久しぶりにJR車両センターをゆっくり見下ろし、咲き出したカキランに挨拶して家に帰ると12時半を回っていた。
家にじっとしていると体が鈍る。毎日午後から夜にかけて雨が降っているが、午前中は止んでいることが多い。夫は用があるというので、今日は駒弓神社からのコースを登ってこよう。階段脇にはオオバジャノヒゲが満開だ。
久々に駒弓神社に挨拶して登り始める。桔梗の蕾はまだ膨らみも見えないほどだが、ギボウシの蕾はもう今にも開きそうだ。タカトウダイがぐんぐん背を伸ばしている。ハナヤスリは実が色づいている。花を楽しみながら山頂につきベンチに腰を下ろしたら電話が鳴った。
「今日は家にいるの?」イケさんだ、今日は用があって登らないと言っていたけれど。「山頂に着いたところ」と応えると、「来ているのか」とおかしそうに笑う。と言うことはイケさんも来ているんだね。登山口で私が見たいと話していたキノコを見つけたから電話したそうだ。
今日は用があって山には登れないと話していたイケさんだが、用が終わって時間があったので、登山口あたりだけ散策したそうだ。山にいるのが元気の元なのはこちらも同じだ。
「見たい、どこにあるの?」と聞くと、「教えてあげるよ。待っているからゆっくり来なよ」。食べられるキノコはまだないそうだが、私が見たかったハナオチバタケはいっぱい出ていた。
朝連絡するところがあったので、珍しく1時間遅れで車を出す。しかも午後は用があるからあまりのんびりしていられない。急坂を登って公園の駐車場に着く頃にイケさんから電話。もう一回りしたのだそうだ。「いま家?」と言うから「駐車場に着くところ」と応えると「公園の上にいるよ」。
公園の上の広場で合流、これまでにカメラで撮影した粘菌の写真を見ながらにわか勉強会?
しばらく写真を見て話をしてから歩き出す。やっぱり実物を見るのが一番だ。私たちは雨が降ったからキノコもちょっとは見つけられるんじゃないかとやってきたが、「雨の後パッと晴れないとダメ」とキノコ博士は言う。まずは先日イケさんが見つけたというムラサキホコリの仲間を見に行こう。体長の長いふわふわした毛のようなものが木の幹に生えている。スカシムラサキホコリではないかと夫が言う。粘菌はキノコや苔が生えてくるような朽木に多く見られるが、生木にも生育することを初めて知った。急な斜面なので、立木につかまりながら撮影する。
s
いつも歩いている道だが、雨が降ったからか粘菌の未熟子実体がたくさん顔を出している。まるでイクラのように広がっているものもある。
道の端に何か動いている。カミキリムシの仲間らしい。木の皮とそっくりな模様だから動いてくれないと見つけるのが難しい。擬態と呼ばれ、天敵から身を隠す工夫なのだ。そして面白いことにこの虫は触られるとひっくり返ってじっと動かず、死んだふりをする。これもまた自然の中で生き延びる工夫らしい。
そろそろトンボソウが開いただろうか。昨年は花穂の先が黒くなって、開く前に枯れてしまったのが多かった。今年はなんとか蕾が大きくなっているようだ。
粘菌を探しながら、花を見、虫にも目を引かれ、にわかパーティの私たち3人はのんびり歩いている。6個の目が次から次へと面白いものを発見するから、山頂で一息ついた頃には昼近くなっていた。午後の用が気にかかるので、帰りは近道をして一気に降ろう。
森の中に赤っぽいキノコが見えた。「あれはガンタケ」とイケさん。テングタケとガンタケはそっくりさん。特に顔を出したばかりの頃はよく似ていて区別がつきにくい。ガンタケは軸が傷つくと赤くなると教えてもらったが、本物を見るとよくわかる。少し先にはテングタケもあった。イケさんと一緒に歩くと色々なことに目を開いてもらえるから嬉しい。
雨が続いたので『キノコ』がたくさん出ているかと思ってきたが、まだ少し早いそうだ。みんなが楽しみにしている美味しい『キノコ』はもう少し待たないといけないと話しながら、ふっと木の影に何かを見つける。とっても大きなキノコだ。フライングして出てきたのが、誰にも見つからず木の影に隠れていたらしい。もう少し経てばたくさん出てくるだろう。
綺麗なアジサイを眺めながら最後の下りを楽しんだ。