神奈川県と東京都の境にある陣馬山の山頂には大きな馬が立っていると聞いて、いつか登ってみたいと思っていた。この山は戦国時代に北条氏を攻めた武田氏が陣を張ったそうで、それが山名の由来と言われているそうだ。
高尾山からの縦走も楽しそうだが、たまには電車旅もしたいと言う夫の希望も合わせて電車で行ってみることにした。
8時半に家を出てのんびり登山だ。とは言うものの目的地は神奈川のハズレ、電車ではちょっと時間がかかるが、楽しみなので張り切っている。最寄りの駅から田園都市線、横浜線、中央線を乗り継いで相模湖駅に着いたのは10時。乗り鉄での登山は気分がゆったりして楽しい。夫と二人でおしゃべりをしたり、窓外の景色を楽しんだりしながら行く。鉄ちゃんの夫は一段と興味深い様子で、駅ごとに電車の車体のマークや数字を見て喜んでいる。
相模湖から線路と高速道路の脇を少し歩くと。高速道路を越える橋がある。階段を登って高速道路を見下ろしながら橋を渡ると、目の前が与瀬神社。無事を願ってお参りしてから歩き始める。
神社の脇から深い森の中を登って行く。最初から結構急な登りだ。秋の森にはアザミやシュロソウが咲いている。キバナノアキギリは大きめの黄色い花、イヌヤマハッカは小さい紫の花、そしてくるりと花びらを丸めたクサボタンもたくさん咲いている。
白い花穂がツンツン立っていて疲れを癒してくれる。サラシナショウマを小さくしたような花はイヌショウマだろうか。道の脇の斜面を白い風が流れるように揺れている。
しばらく頑張って登っていくと、緩やかな森の中の道になる。だが、花を見て楽しんでいたのも束の間、また登りになってしばらくは頑張って登っていく。息を整えながら登っていくと730mほどの明王峠に辿り着く。茶店らしい建物があるが、埃が溜まっていて現在は営業していないようだ。ここまではほとんど人に会わなかったが、茶店の周りはちょっと開けていて腰を下ろして休んでいる人もいる。小仏峠や景信山の方から縦走してきたのだろうか。森の端に咲く花を指さしてあれこれと楽しそうに話している姿も見える。小さな花を見つけて喜ぶ姿には親しみを感じる。
遅い出発だったので、もう午後1時になっている。私たちもここでお昼休憩にしよう。ここからは後100mほどの高低差だ。比較的緩やかな山道になるからゆっくり頑張ればいい。おにぎりを食べて30分ほど休んでから再び歩き出す。
山頂だ、目の前に大きな白馬が立っている。これだ、いつか会いたいと思っていた白馬。私たちは白馬と並んで、まずは記念撮影。
山頂は思ったより広い空間で、茶店があった。お昼は食べてきたけれど、山頂の茶屋で何か食べるというのもまた面白そうだ。夫はけんちん汁を、私はかき氷をいただくことにする。のんびり山頂の空気を楽しもう。
ぼーっと過ごしていたら、いろんな人たちが現れては消えることに気がついた。私たちが登って来たコースとは逆の北側から人が現れては一回りして消えていく。思ったより人気の山なのか。実は山頂直下の北側まで道路が通じていることがわかった。駐車場がある和田峠からは30分ほどで山頂に到達できるようだ。神奈川と東京の境界の山だけれど、東京からのアクセスも良いから訪れる人も多いのだろう。
だいぶ山頂でののんびり時間を楽しんだからそろそろ降ろうか。午後2時半、重い腰を上げる。
同じ道を歩くのはつまらないから栃谷の方へ行ってみようか。針葉樹のくらい森の中をどんどん降って、美女谷温泉への看板を見た。4キロとあるから結構遠い。もっとも温泉に入ろうと言う計画は最初から持っていない。頑張って歩く。麓のバス停に着いたのは午後4時。バスを待つのも面倒なのでさらに歩いて藤野駅に着いたのが午後4時25分。 ここからは再び電車の旅を楽しんで、我が家に帰り着いたのは6時半だった。
楽しい鉄道山旅だったが、陣場山にはいくつものコースがあることを知ったので、今度は違うコースを登ってみたいと、その後もう一度出かけたのだが、中央線が不通になっていて高尾止まり。諦めて、高尾山に登って帰ったが、あれからなかなか登るチャンスを得られないまま月日が過ぎてしまった。