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変化する粘菌3 地附山 733m(長野県)

2023年6月16日(金)19日(月)21日(水)


6月半ばの16日、長野の梅雨はあまり雨量が多くないけれど、なんとなく雲が下がって湿った風が吹く。午後からは雨になりそうだけれど、やっぱり気になる粘菌の変化を見に行こう。

photo:コモチクダホコリの子実体:地附山
コモチクダホコリの子実体

前日ちょっと遠方へ出かけていたので、洗濯などをのんびりやって出足が遅くなったが、雨が落ちてくる前には行ってこれるだろう。

公園を抜けるとイケさんが歩いている。やっぱり、同じことを考えているね。昨日は遠くの山へ山菜採りに行ってきたそうで、美味しいシオデを持ってきてくれた。「とっても美味しかった」「アスパラみたいだろう。新鮮じゃないとダメ」などと山菜談義をしながら歩いていく。道の端にはさまざまなキノコが顔を出している。雨が多いからそろそろキノコの季節も始まりそうだ。

photo:テングタケ,フウセンタケ,キンチャヤマイグチ,ハリガネオチバタケ:地附山
キノコも出てきた1

photo:フサヒメホウキタケ:地附山
キノコも出てきた2

photo:未熟子実体(子持ちクダホコリ?):地附山
未熟子実体(子持ちクダホコリ?)

そして雨を喜ぶのは粘菌も同じらしい。赤い塊が枯れ木の上にポツポツと顔を出している。我が家の粘菌博士によるとクダホコリの仲間だそうだが、なかなかはっきりわからない。そしてやっぱり先日見たものがどんなふうに変化したかが気になる。赤いうちは目立つのですぐ見つけられるのだが、変化して黒っぽい色や焦茶色になってしまうとなかなか見つけられない。

最近粘菌に興味を持つようになったイケさんは、もともと自然のことに詳しく、キノコや山菜採りのいい目をしているから、粘菌を見つけるのが早い。そして撮った写真をみんなで吟味し合いながら歩くのは楽しい。

photo:ベニシジミも一緒に山頂:地附山
ベニシジミも一緒に山頂

photo:美しいタマツノホコリ:地附山
美しいタマツノホコリ

photo:花火のようなツノホコリ:地附山
花火のようなツノホコリ

前に見たものを教えあったり、新しいところを一緒に探したりしながら山道を歩いていると、通りかかる人たちが「倒木があったよ」と話しかけていく。倒木の場所を知らせてくれるなんて、親切に「粘菌がいそうだよ」と言っているみたいだけれど、そういうことではなく、「倒木が山道を塞いているよ」ということなのだ。いつも道の整備をしているイケさんにまたよろしくということらしい。でもさすがにいつも一人で太い木を始末するのは大変だろう。私は、「今度チェーンソーを持ってきて、仲間と一緒にやったらいいのでは」と話すのだが、現場を一目見たイケさんは「これなら今持ってるノコ(鋸)で十分だ」と切り始める。

photo:倒木を片付けるイケさん:地附山
倒木を片付けるイケさん

枯れ枝が邪魔だからと、切り始めたイケさんの隣で小枝をポキポキ折ってみるが、やはり邪魔になっている気もする。「大丈夫だから先に帰って」と言うイケさんも、私たちがそばにいると却ってやりにくそうだ。「気をつけて」と言って、私たちだけで道を引き返す。

でもやはり気にかかるので、粘菌を探しながら様子を伺っている。一人で作業をしていて怪我をしてしまったら大変だからだ。カーブした道の向こうで働いているイケさんの姿は見えないけれど、作業の音が聞こえている。2本の倒木が完全に切れてドスっと落ちた音を聞いて、ようやく少しずつ現場近くから離れた。

photo:マメホコリ:地附山

photo:マメホコリ:地附山

photo:マメホコリ:地附山

photo:マメホコリ:地附山

なんとも愛らしいマメホコリ

そしてのんびり花を見、粘菌を探して歩いていたら、作業を全て終わったイケさんより遅くなってしまった。「駐車場にまだ車があるけど、どこを歩いているの?」と、先に降りたイケさんからの電話がきたのはまだ公園の上の道だった。


photo:イケさんが片付けた倒木のあと:地附山
イケさんが片付けた倒木のあと

粘菌はとても小さいものが多く、倒木が半ば腐って崩れそうなところに見られる。見つけるとしゃがみ込んで目を近づけ、カメラを構える。どうしても立ったり座ったりの動きが多くなり、登山道を前へ、上へ、進む時間は倍になる。それでも初夏になって粘菌の活動が活発になってきたから、新発見があって嬉しい。

新しいものを見つけるとどうしてもその後の様子が知りたくなる。イクラのように赤くぷつぷつと張り付いていたのがたった2日で赤茶色に変化していく様子など、続けて観察しなければわからない。透き通るような白い未熟子実体がグレーや茶色の子実体になって胞子を飛ばす、その早さに本当に驚く。

photo:シロウツボホコリ:地附山
シロウツボホコリ 6.19

photo:シロウツボホコリ:地附山
シロウツボホコリ 6.19

photo:シロウツボホコリ:地附山
シロウツボホコリ 6.21

photo:シロウツボホコリ:地附山
シロウツボホコリに虫 6.21

シロウツボホコリ

photo:ウツボホコリの変化:地附山
ウツボホコリの変化

19日、21日と続けて裏山へ出かけたが、粘菌の変化が分かるのが面白く、長い時間山の中であちらこちらと歩き回って遊んできた。

山は夏の様子が濃くなり、ウメガサソウは満開。雨の恵みを受けてシャクジョウソウがニョキニョキ顔を出してきた。ハッとするような青の小さな花オニルリソウも咲き出した。1メートルもの高さになって、葉も大きな草だがその先に咲く花は5mmくらいしかない。蕾の時はピンク色に俯いているが開くと鮮やかなブルーだ。

photo:オニルリソウ:地附山
大きくて小さいオニルリソウ

春に枝を飾っていた木々の花はそれぞれの実を膨らませている。みんな違うのが当たり前だけれど、花が散ってすぐ実が大きくなるもの(モミジイチゴやミヤマウグイスカグラなど)もあれば、花も実もゆっくり木の上で遊んでいるかのように膨らんでくるもの(ナツハゼやナツグミなど)もある。

photo:シロウツボホコリ:地附山
ウメガサソウ 6.16

photo:シロウツボホコリ:地附山
ウメガサソウ 6.21

photo:シロウツボホコリ:地附山
ウメガサソウ 6.21

photo:シロウツボホコリ:地附山
ウメガサソウと実 6.21

ウメガサソウ

photo:ノハラナデシコ:地附山
ノハラナデシコ 6.19

photo:ゲンノショウコ:地附山
ゲンノショウコ 6.21

photo:イチヤクソウ:地附山
イチヤクソウ 6.19

photo:ツルアリドオシ:地附山
ツルアリドオシ

野の花

イケさんから教えてもらったり、図鑑を見たりして木の名前も少しずつ分かるものが増えてきた。カエデの仲間も私にはみんな『もみじ』としか呼びようもないほど区別ができなかったが、ウリカエデやウリハダカエデだけではなくカラコギカエデのように実の形に特徴があるものなども見つけられるようになってきた。

photo:カラコギカエデ:地附山
カラコギカエデ 6.19

photo:ツノハシバミ:地附山
ツノハシバミ 6.19

photo:ダンコウバイ:地附山
ダンコウバイ 6.19

photo:ナツグミ:地附山
ナツグミ 6.21

木の実が膨らんできた

photo:ムラサキホコリ:地附山
ムラサキホコリ 6.19

photo:ムラサキホコリ:地附山
ムラサキホコリ 6.19

photo:ムラサキホコリ:地附山
ムラサキホコリ 6.21

photo:ムラサキホコリ:地附山
ムラサキホコリ 6.21

ムラサキホコリ

photo:ニセタチコホコリ:地附山
ニセタチコホコリ

食べられる実はちょっぴりずつ味見をすることにしている。ソメイヨシノの実は赤から黒になってきて甘さも強くなった。これからの季節は木の実をつまみながらの山歩きが楽しめる。

photo:コマメホコリ:地附山
コマメホコリ

地附山はコースがいくつかに分かれていて、その時の気分でバリエーションを楽しめる。粘菌を探すためには色々なコースを歩きたいし、変化を見るためには同じコースを繰り返し歩かなければならないし・・・毎回「今日はどこから行こうか」と相談しながら歩くことになる。

photo:ムレウツボホコリ:地附山
ムレウツボホコリ

昨年見たマンネンタケがどうなったか気になって藪の中を登ってみた。昨年のマンネンタケは色褪せたようだが形はそのままだ。そして足元からは新しいマンネンタケが顔を出してきた。艶やかなアイボリーと茶色のツートンカラーが光っていて、大きくなるのが楽しみだ。

photo:マンネンタケ:地附山
マンネンタケ

photo:変形体から子実体に変化:地附山
変形体から子実体に変化したのか

粘菌、粘菌と言って笑われることもあるが、道端で小さくなって覗き込んでいると「何かあるんですか?」と聞いてくる人がいて「粘菌を見ているんです」と応えると「最近よく耳にしますが、どれですか?」などと会話が続くことも増えてきた。「『年金』ではなく『粘菌』です」と断らなくても会話が通じるようになってきたのはなんだか嬉しい。

photo:ウツボグサが満開:地附山
ウツボグサが満開

まだまだわからないことがたくさんあるが、それはどんな世界も同じことかもしれない。満開のウツボグサを眺めながら歩いていると、輝く緑色のシジミチョウがひらりと目の前を横切っていった。「楽しいでしょう」と誘われたような気がした。

photo:ミドリシジミ:地附山
ミドリシジミ




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