中野市一本木公園では毎年5月末から6月中旬にかけて『信州なかのバラまつり』が行われる。コロナ禍の中で控えられていたこともあるが、今年は5月27日(土)から始まった。
何回か一緒に尋ねたことがある友人が、今年も見事なバラを見に行きたいとやってきた。前日はみんなで楽しい夕食の団欒に時間を忘れておしゃべりの花を咲かせたが、翌日はバラの花に会いに中野まで車を走らせる。
台風2号が南の海上にあり、前線が停滞して雨予報が続いていたのだが、この日の雨は長野北部を避けてくれたようだ。雲はあるが、穏やかな暖かい日になった。
平日なので、公園の駐車場も余裕があってスムーズに入ることができた。一本木公園に入る前から道路沿いのバラが彩り豊かに私たちを迎えてくれる。
「素敵だね〜」「ちょうど満開だ」「匂いがいい」「匂いじゃなくて、香りと言って!」みんなで勝手なことを言いながら園内に入る。本当に満開だ。
中野一本木公園には何度か訪れているが、今回が一番見頃かもしれない。それにしても種類が多い。木の根元には花の名前を示してあるが、あまりに多いので全部見ていくのは諦めた。園内には手入れの人が数人働いている。太い木の根元で、一人の男性が座り込み小鎌を持って何かしている。木の根元を削っているようだ。聞いてみたら、貝殻虫をとっているのだそう。樹皮の内側にも入り込んでいて、消毒液をかけても効かないから、一本一本手で取ってやるそうだ。木の根の周りを草が覆うとモグラが根をかじってしまうというから、根の周りは気をつけて見ていなければいけないようだ。我が家のバラも、友人の家のバラも根元には草が生えている、帰ったら手入れしようと話し合った。
それにしても華やかだ。大輪もよし、小さな花の房咲きもよし、色も様々に咲きそろっている。バレリーナ、安曇野、カクテルなどのあちらこちらにある木は毎年名前を呼んで楽しんでいるが、今年はシックナカノという花に目が惹かれた。薄紫の小花が集まって咲く、バラ園の地名をとった名前だ。育てやすそうな花だからと、友人はこの苗を購入した。バラ祭りの時にはバラの苗木も販売するから、それも楽しみなのだ。我が家にも以前購入したバラが元気に咲いている。
一本木公園のバラ園は、黒岩喜久雄さんが172種のバラを中野市に寄贈したことでスタートしたらしいが、今では850種3000株ものバラがあるという。その後イングリッシュガーデンも作られてますます美しい公園になった。公園の北口には昨年建造された黒岩氏のレリーフがある。
増設されたイングリッシュガーデンはバラに囲まれた美しい庭だ。ケシの花やカモミールの花が満開で、風にそよいでいる。実際にイギリスの庭園を見に行ったことはないけれど、映像などで見るのびやかな風景には憧れる。バラ園のイングリッシュガーデンはそれほど広くはないけれど、雰囲気は感じられる。
昔から山歩きばかりしていたので、人が作った庭園などにはあまりいかなかったのだけれど、川崎市にある『生田緑地ばら苑』に行ったことがある。もう随分昔のことだから、あの頃小さかった薔薇の木も大きくなっているのではないだろうか。一緒に歩いた孫たちが大きくなったように・・・。
まだ小さかった孫たちはそれぞれにお気に入りのぬいぐるみをお供に、園内をよく歩いた。入園時にもらったリーフレットを見たり、園内に設けてある地図の看板を見たりして、次はどこを回ろうかと楽しそうだった。
園内にはホットドックなどの食べ物も販売していて、ホットドックを齧りながら休憩タイムをも楽しめた。
ゆっくり広い園内を歩き、傾斜を登って、最後に向ヶ丘遊園駅へ続く北口近くから『ばら苑』全体を見渡した。地図を指差しながら、歩いてきた道筋を楽しそうに話していた孫の姿が今でも目に浮かぶ。
さて話を長野に戻そう。一本木公園のバラを堪能して、名残惜しく園内を歩く私たちの目には遠く北信五岳の山々が雄大に写っていた。